海外取引、訪日客対応、外国人採用をきっかけに英語版を検討しても、「サイト全体を訳すべきか」「何ページから始めるか」「公開後は誰が更新するか」が決まらないと、翻訳会社や制作会社へ相談する材料がそろいません。
多言語ホームページは、全ページの翻訳から始めるものではありません。対象者と期待する行動を一文にし、最初に必要な3〜5ページへ絞り、原文責任者・翻訳確認者・公開担当を決めます。そのうえで、言語別URL、利用者が自分で選べる切替リンク、各ページの言語設定、ローカライズ版の対応関係を実装・確認します。
この記事では、社内で決めることと制作会社へ確認することを分け、翻訳前から公開後までの判断順をまとめます。
先に結論:翻訳より対象者・優先ページ・更新担当を決める

多言語化の最初の作業は、翻訳原稿を集めることではありません。翻訳対象を決める土台として、次の3点を社内で確定させます。
- 対象者と期待する行動を一文にする 「海外の購買担当者が対応製品を確認し、見積もりを相談する」のように、誰に何をしてほしいのかを表します。「英語を話す人全般」のままでは、必要なページも翻訳表現も決めにくくなります。
- 最初に必要な3〜5ページへ絞る 対象者が会社やサービスを知り、判断し、問い合わせや応募へ進むまでに欠かせないページを選びます。公開後に維持できる範囲から始めると、原文とのずれを追いやすくなります。
- 原文責任者・翻訳確認者・公開担当を決める 日本語原稿を確定する人、訳文の意味や用語を確認する人、Webサイトへ反映する人を分けます。どの変更をいつまでに別言語版へ反映するかも決めておきます。
この3点が決まってから、言語別URL、切替リンク、ページ言語、hreflangを設計します。技術設定から始めると、ページは作れても「誰向けの何を、誰が更新するのか」が未定のまま残ります。
多言語サイトと多地域サイトを混同しない
多言語サイトは、同じ内容を複数の言語で提供するサイトです。一方、多地域サイトは、異なる国や地域の利用者を対象に、内容や条件を分けるサイトを指します。Googleも両者を分けて説明しており、多言語かつ多地域という組み合わせもあります。出典 Google for Developers
英語版を1つ追加し、日本語版とほぼ同じ会社情報やサービス情報を伝えるなら、中心課題は「言語を増やすこと」です。同じ英語でも国ごとに製品条件、通貨、配送範囲などを変える場合は、「地域ごとに内容を分けること」まで検討します。
準備表には、対象言語だけでなく対象国・地域の有無も記入してください。最初からすべての地域版をそろえるのではなく、「共通情報を別言語で届けるのか」「特定地域向けに条件も変えるのか」を選ぶと、必要な原稿と確認者が見えます。
最初に翻訳する3〜5ページを選ぶ
ページ数は、日本語サイトの構成をそのまま数えるのではなく、対象者が判断して行動するまでの流れから決めます。候補になるのは、次の役割を持つページです。
- 何の会社かを伝えるトップページまたは入口ページ
- 対象者が検討する製品・サービス・採用情報のページ
- 所在地、事業内容、対応範囲などを確認できる会社情報ページ
- 料金、取引条件、利用方法、よくある質問など判断を補うページ
- 問い合わせ、予約、応募など行動につながるページ
この中から、「ないと判断できないか」「ないと行動前に不安が残るか」「公開後も更新できるか」の3条件で3〜5ページを選びます。アクセス数が多くても、対象者の目的と関係が薄いページは初回範囲から外せます。
海外取引が目的なら、製品情報、対応範囲、会社情報、問い合わせが先に必要になるかもしれません。外国人採用なら、募集内容、働く環境、応募条件、応募方法の優先度が上がります。固定の正解ではなく、冒頭で決めた「誰に何をしてほしいか」から選びます。
翻訳前には、各ページの日本語原稿が最新かも確認しておきましょう。古い原文を翻訳すると、公開時点から別言語版にも古い情報が残ります。サイト全体の目的や手元の資料を整理する場合は、ホームページ制作前に目的と材料を整理する方法も判断材料になります。
製品ページだけ英語化しても、問い合わせフォーム、入力エラー、送信完了画面が日本語のみなら、利用者は途中で止まる可能性があります。翻訳範囲には、行動に必要な画面や共通部品も含めて確認します。
原文・翻訳・公開の担当と更新期限を決める

日本語版だけが更新され、別言語版の価格、条件、受付状況、募集内容などが古いまま残らないよう、原文から公開までの責任を分けます。
原文責任者は、日本語版の内容を確定し、変更点を説明できる人です。修正依頼が複数部署から届いても、翻訳へ渡す原稿を一本化し、変更前後の差分、対象ページ、反映希望日を示します。
翻訳確認者は、訳文が原文の意味と一致しているか、社名、製品名、専門用語などが社内ルールに合っているかを確認します。外部へ翻訳を依頼しても、最終承認者は社内で決めておきましょう。
公開担当は、WordPressなどの管理画面で各言語ページを更新し、リンク、フォーム、表示、公開状態を確認します。制作会社へ更新を依頼する場合は、依頼窓口と承認手順を社内フローへ組み込みます。ホームページ更新の社内フローを整える方法を併せて整理すると、本記事では多言語版の同期に集中できます。
更新期限は、すべて同じ日数にするのではなく、公開前に各言語版をそろえる情報と、後から追随できる情報に分けます。価格、提供条件、受付停止、募集期限など、判断に直接影響する情報は、言語間のずれを許容するかまで決めてください。
更新記録には、原文の変更日、対象ページ、翻訳確認の状態、各言語版の公開日を残します。担当者が替わっても、どの言語がどこまで反映済みかを追えます。
言語別URL・切替リンク・ページ言語・hreflangの役割
URLはページの置き場所、切替リンクは利用者の移動手段、ページ言語はブラウザや支援技術へ伝える情報、hreflangはローカライズ版の対応関係をGoogleへ示す情報です。
言語別URLは各言語ページを識別する
Googleは、各言語版に異なるURLを使うことを推奨しています。ブラウザ設定やCookieだけで同じURLの表示言語を変える方法では、検索エンジンがすべてのパターンを見つけられない場合があります。出典 Google for Developers
URLの形は、サブディレクトリ、サブドメイン、別ドメインなどから、現在のサイト構成と運用方法に合わせて選びます。社内では対象ページの対応表を作り、制作会社には追加・削除・移転をどの単位で管理するか確認します。
切替リンクは利用者が自分で選ぶために置く
日本語ページと英語ページがあるなら、利用者がクリックして切り替えられるリンクを用意します。推測した言語へ強制転送するだけでは、別の言語版を見たい人が選び直せません。Googleも自動リダイレクトを避け、別言語版へのハイパーリンクを検討するよう案内しています。出典 Google for Developers
切替先は、可能な限り現在見ているページに対応する別言語ページにします。対応ページがない場合の移動先は、公開範囲と合わせて決めます。
ページ言語は支援技術が内容を扱うために示す
HTMLのlang属性などで、そのページの主な言語をプログラムから判定できるようにします。W3CのWCAG 2.2では、ページのデフォルト言語を判定可能にすることをレベルAの達成基準として説明しています。スクリーンリーダーが適切な発音規則を使うなど、支援技術やブラウザが内容を扱うための情報です。出典 W3C
Googleは表示内容からページ言語を判断し、lang属性やURLは言語判定に使わないと説明しています。lang属性は検索順位のための印ではなく、利用環境へページ言語を伝える設定として確認します。出典 Google for Developers
hreflangはローカライズ版の対応関係を示す
hreflangは、日本語ページと英語ページなどが同じ内容の言語・地域別バージョンであることをGoogleへ知らせる指定です。言語切替ボタンや自動翻訳の代わりではありません。
Googleは、HTML、HTTPヘッダー、サイトマップのいずれかでローカライズ版を示せると説明しています。指定には自分自身のURLを含め、対応ページ同士が相互に参照する構成が基本です。出典 Google for Developers
実際に内容が対応するページ同士を組にします。日本語版にしかないページを無理に別ページへ対応付けず、未公開ページの扱いを制作会社へ共有します。
自動翻訳と自動転送だけに任せない
自動翻訳は、初稿作成や翻訳量の把握に使える場合があります。しかし、会社名、製品名、契約条件、料金、受付状況、応募条件など、利用者の判断に影響する情報は、公開前に意味と表記を確認する担当を置きます。
人手で一から翻訳するか、自動翻訳を下書きに使うかは、ページの重要度と更新頻度で分けられます。どちらでも、最終的に誰が公開可否を判断するかを曖昧にしません。
ブラウザの言語やアクセス元から希望を推測して強制転送すると、利用者が別の言語を選びにくくなります。検索エンジンが各言語版を見つけにくくなる場合もあるため、言語別URLと明示的な切替リンクを用意し、利用者が選び直せる状態を残します。出典 Google for Developers
自動化の有無ではなく、「重要情報を確認する」「言語を選び直せる」「原文変更を各言語版へ伝える」の3条件で判断します。
制作会社へ渡す多言語サイト準備表
相談前に決める内容を一枚にすると、翻訳の見積もりとWeb実装の確認を同じ前提で進められます。未定の項目は空欄にせず、「社内確認中」「制作会社へ相談」と状態を記入します。
| 決める項目 | 社内で記入する内容 | 制作会社へ確認する内容 | 公開後の確認方法 |
|---|---|---|---|
| 対象言語・対象者・行動 | 最初に追加する言語、対象者、期待する行動を一文で記入 | 対象国・地域による構成変更が必要か | 対象言語から目的のページと行動先へ進めるか |
| 優先ページ | 最初に公開する3〜5ページと選定理由 | 共通部品、フォーム、完了画面を範囲に含むか | 公開予定ページが各言語でそろっているか |
| 更新担当 | 原文責任者、翻訳確認者、公開担当の氏名または部署 | 更新依頼の窓口、承認手順、権限 | 更新記録に担当と公開日が残っているか |
| URL・対応関係 | 日本語ページと各言語ページの対応一覧 | URL構造、`hreflang`の実装方法、未対応ページの扱い | 各URLが表示され、対応先が正しいか |
| 切替・ページ言語 | 切替を置く場所、表示名、各ページの主言語 | 同一内容の切替先、`lang`属性、自動転送の有無 | PC・スマートフォン・支援技術で選択と判定を確認 |
| 更新期限・主要情報 | 同時更新する情報、追随を許容する情報、期限 | 翻訳待ちの公開制御と差分管理の方法 | 価格、条件、期限、フォーム、公開日を定期確認 |
この表で未定欄を特定し、最初は対象言語を1つ、優先ページを3〜5件に絞ります。担当者まで記入できれば、制作会社はURL、切替、公開後の更新方法まで検討できます。
公開前後の確認とまとめ
公開前はページの有無だけでなく、対象者が各言語で判断し、行動を完了できるかを確認します。公開後は原文との差分が発生する前提で、更新記録と主要情報を見直します。
- 最初に公開する対象言語が1つに定まっている
- 対象者と期待する行動を一文で説明できる
- 優先ページが3〜5ページに絞られている
- 原文責任者・翻訳確認者・公開担当が決まっている
- 各言語に固有のURLがあり、対応ページを一覧にできる
- 利用者が自分で選べる言語切替リンクが動作する
- 各ページの主な言語が
lang属性などで正しく示されている - 会社情報、料金、条件、期限などの主要情報が原文と一致する
- 問い合わせ・予約・応募フォームを各言語の入口から送信できる
- 原文変更日、翻訳確認、各言語版の公開日を記録できる
対象者、優先ページ、担当者が未定なら、翻訳を始めても範囲と確認基準が揺れます。この3点がそろえば、URLやhreflangなどの実装事項を制作会社へ具体的に相談できます。
最初の行動は、多言語サイト準備表へ対象言語、対象者、優先ページ、原文責任者、翻訳確認者、公開担当、更新期限を記入することです。1言語・3〜5ページで公開と更新の流れを作ってから、次のページや地域へ広げます。
多地域、多言語のサイトの管理
発行主体:Google 検索セントラル(Google)/最終更新日:2025年12月18日(UTC)/出典 Google for Developers
ページのローカライズ版について Google に知らせる
発行主体:Google 検索セントラル(Google)/最終更新日:2026年4月27日(UTC)/出典 Google for Developers
Understanding Success Criterion 3.1.1: Language of Page
発行主体:W3C Web Accessibility Initiative(WAI)/更新日:2026年3月9日/出典 W3C