工場の棚には完成品があるのに、ネットショップへ何個載せてよいか分からない。法人営業が説明している納期と、一般のお客様に見える発送案内が違う。メーカーが直販を始めると、これまで担当者同士で調整していた条件を、購入前に読める情報へ変える必要が出てきます。
摂津市のメーカーが直販サイトを作る際は、受託製造、卸売、一般向け販売について、価格・在庫・購入後の対応を確認する資料と担当をそろえましょう。入口のボタンを分けるだけでなく、同じ商品の情報が変わったとき、どの販売経路へ反映するかまで決めることが大切です。この記事では、架空の木製ペン立てを例に、公開前から受注後までの情報の扱いを整理します。
摂津市の製造業が、売る相手を広げるときに必要な説明
摂津市の「第3期摂津市産業振興アクションプラン」に収録された研究・分析資料は、企業間取引から消費者への直接販売へ進む動きを取り上げています。2025年3月の計画に含まれる分析で、すべてのメーカーが直販へ転換したという意味ではありません。従来の仕事に販売の役割が加わる背景として読むことができます。
地域の公開例では、摂津市南別府町のフォレストフィールドが、公式サイトでパンの製造・卸と、工房で販売する「ごきげんマルシェ」を分けて紹介しています。法人・店舗のお客様向けの案内、ネットショップへのリンクもあります。製造元が複数の販売方法を案内する例ですが、同社の在庫管理や販売条件を本稿の例に当てはめるものではありません。
メーカーの担当者にとって当たり前のことも、初めて買う人には分かりません。一個から買えるのか、写真にある物が全部届くのか、注文後に作るのか、届いた物について誰へ相談するのか。技術紹介へ購入ボタンを追加するだけでは、こうした疑問が残ります。
まず、今まで取引先へ口頭で説明していた内容を書き出します。その中から、商品そのものの説明、特定の取引に適用する条件、社内で判断する手順を区別します。社内の原価や取引先ごとの契約を公開する必要はありませんが、購入者が使える販売条件は、担当者への聞き直しなしに読める形へ整えます。
受託製造・卸売・一般購入で、参照する条件をそろえる
ここでは、木製品の受託加工を行い、自社仕様のペン立ても卸売と一般向け通販で販売する架空のメーカーを考えます。商品や数量、運用は説明用であり、実在企業の体制ではありません。受託加工では依頼された仕様を確認し、卸売と一般購入では販売仕様が決まった商品を扱う設定です。
三つの入口は、会社名の有無だけで決めません。個人事業者が別仕様の製造を依頼することも、法人が社内で使う既製品を通常の購入条件で買うこともあるためです。「別仕様を作りたい」「店舗で販売するために仕入れたい」「掲載商品を購入したい」という用件を入口に添えます。

図は架空メーカーの窓口と確認情報の対応例です。個人・法人という属性だけで、適用する取引条件を決めるものではありません。
用件が分かった後は、担当者がどの条件を参照するかを合わせます。受託営業は依頼された仕様と製造予定、卸の担当は取引先との条件と引当済みの数量、直販担当は掲載仕様と一般販売用の数量を確認します。同じ担当者が兼任していても、回答に使う情報が違うことを明確にします。
たとえば、販売中のペン立てを見た人が「高さを変えて作りたい」と希望した場合は、直販の備考欄に書けば仕様変更できるようにはしません。別仕様の相談へ案内し、変更内容を確認して回答します。標準商品の価格、手元の在庫、発送予定を、そのまま別注の条件へ引き継がないためです。
価格を比べる前に、品番・入数・付属品を合わせる
既存の卸先と一般のお客様が同じ商品名を見ても、比較している内容が同じとは限りません。卸では一箱単位、直販では一個単位で販売する設定なら、商品代金だけを並べても比べられません。どの仕様を、何個の単位で、何を含めて販売しているかを確認します。
架空例では、標準品番を「P-10」とし、卸売は六個入りの箱、直販は一個と使用案内を届ける設定にします。これは推奨する販売単位ではありません。どちらも本体が同じなら、そのことを正確に示し、包装や同梱物が違えば内容欄に記載します。見せ方を変えるためだけに、同じ本体を別品質の商品と表現しないようにします。
| 確認する情報 | 卸売で管理する内容 | 一般向け直販で管理する内容 |
|---|---|---|
| 商品の特定 | 品番・仕上げ・一箱の入数 | 品番・仕上げ・一注文の個数 |
| 価格の対象 | 取引条件に沿う販売単位 | 掲載仕様の商品代金と送料等 |
| 数量の参照元 | 取引先向けに確保した数量 | 現時点で直販へ回せる数量 |
| 購入後の確認 | 卸の注文・納品情報 | 直販の注文番号・販売時の条件 |
| 条件を変えるとき | 適用する取引と案内の時点 | 商品ページ・購入画面の反映時点 |
価格を改定する場合は、新価格だけをWeb担当へ渡すのではなく、対象品番、販売単位、適用開始、すでに受けた注文の扱いを責任者へ確認します。卸の見積書と直販の商品ページで、改定の適用時点が異なるなら、それぞれの条件として管理します。直販の表示を変えたことだけで、すべての既存取引も変更済みとは扱いません。
一般向けのページでは、購入者が負担する金額を確認できるよう、商品代金、送料、追加費用の有無を説明します。消費者庁の通信販売広告Q&Aでも、販売価格や送料、購入者が別に負担する費用の表示が案内されています。公開画面と購入の確認画面で、選んだ仕様、数量、金額が一致するかを確かめてください。
工場の完成品数と、直販で販売できる数を分ける
完成品が棚にあることは、そのまま直販できることを意味しません。すでに卸先へ納める予定の物、検品を終えていない物、見本として使う物が含まれている場合があります。ネットショップの在庫へ反映する前に、どの数量が販売に使えるかを担当者が判断する必要があります。
架空のP-10が工場に60個あり、そのうち36個を卸の注文へ確保し、8個は検品待ちだったとします。この例で直販に回せる候補は16個です。60個をそのままネットショップの販売数にすると、確保済みの卸注文や検品待ちまで販売対象へ含めてしまいます。16個も、直販の別の予約などがないことを確認したうえで登録する数量です。
社内の記録には、総数だけでなく、取引先向けに確保した数、確認待ちの数、直販へ使う数、最終確認時点を持たせます。大がかりなシステムを先に導入することが必須ではありません。いま使っている受注表と在庫記録で、同じ一個を別々の注文へ割り当てない方法を決めることから始めます。
直販で二個売れたら、残る販売数は14個です。卸先から追加の相談が届いても、直販の表示を16個のまま残して同じ在庫を約束しないようにします。追加注文へ何個回すかを確認し、必要な変更を反映してから回答する手順を決めます。サイト担当が一日に何度も確認できない場合は、無理なく維持できる販売枠や更新方法を受注担当と相談します。
検品待ちの8個は、時間が過ぎれば自動的に販売数へ戻る設定にしません。確認が終わった結果と、どの販売経路へ回すかの判断を経て反映します。直販の返品が届いた場合も、受け取った数をすぐ販売可能数へ加えず、状態の確認と社内の判断を挟みます。倉庫の数量とサイトの表示が違う理由を、記録から説明できることが大切です。
また、直販の欠品と受託製造の受付停止は別です。販売用の標準品がなくても、別仕様を作る相談を受けられる場合があります。反対に、工場が製造中でも、直販へ追加できる時期は未定ということがあります。製造予定をそのまま購入者への到着予定として載せず、注文を受ける範囲と引渡しの見通しを確認します。
一般のお客様には、届く物と購入後の行動を説明する
受託加工の相手は図面や仕様を読めても、初めて買うお客様は、商品名と写真から使う場面を考えます。ペン立てなら、外側の大きさだけでなく、物を入れる部分、置く場所、届く本体と同梱物を確認できる説明が必要です。工場の加工精度や設備名は、その商品の特徴を理解する補足として使います。
使用写真にペンやノートを添える場合、販売する内容物と撮影用の小物を区別します。素材や仕上げ、手入れの方法も、実際の商品仕様と確認済みの案内に合わせます。「丈夫」「長く使える」と書くだけで、未確認の耐久性や無償交換を約束したように見せないことが大切です。
購入後の相談では、何を買ったかだけでなく、どの経路で買ったかを確認します。直販の注文なら直販の記録を参照し、取扱店で買った商品なら、その購入経路に合う相談方法を案内します。製造元であることを理由にすべて同じ保証が適用されるとも、直販以外は一切相談できないとも、確認せずに書かないようにします。
保証・返品・不具合の案内を、窓口だけで済ませない
「困ったときはこちら」という連絡先は必要ですが、それだけで販売条件の説明が完了するわけではありません。購入者の都合による返品、商品に問題がある場合の対応、メーカーが設ける保証を区別し、対象商品、条件、連絡方法を販売責任者へ確認します。Web担当が保証期間や費用負担を推測して埋めないようにします。
消費者庁の通信販売広告Q&Aは、返品特約について、返品の可否、条件、送料負担などを明示する必要があると説明しています。「その都度相談」とするだけでは、購入前に返品できるか分からないためです。商品に問題がある場合の責任とは区別されている点も確認し、一般向けの販売案内を法人契約の文章で代用しないようにします。
社内では、相談を受けたときに使う商品情報と、販売時の条件を探せるようにします。P-10の説明書を更新した場合も、以前の販売品に適用できる変更なのかを確認します。商品名が同じでも仕様が変わっているなら、注文した時期や対象仕様を手掛かりに適切な案内へ進める必要があります。

写真は架空の編集イメージです。実在の商品・社員・販売実績を示すものではありません。
直販の注文番号を持っていない人にも、購入先や商品を確認するための相談方法を残します。ただし、最初から住所や支払い情報を大量に入力させる必要はありません。用件と商品を把握し、注文の確認に必要な情報は、担当者が決められた方法で受け取る流れにします。
既存の取引と調整した内容を、更新の単位へ落とす
直販を始める前に、既存の卸先や受託案件との関係で、社内確認が必要な事項を整理します。直販する対象品番、販売する仕様、包装、案内する購入後の窓口、写真や説明の使用範囲などです。受託先の依頼で作った物を、自社の工場で製造したという理由だけで直販に載せないようにします。
取引先との確認が必要な内容は営業担当へ戻し、公開してよい説明が決まってから原稿にします。直販価格を他店に合わせさせる、販売地域を一律に制限するなどの方法を、Web運用の都合だけで決めるものではありません。サイトへ載せる内容と、契約や取引で判断すべきことを区別して進めます。
変更の記録は「P-10の情報を更新」の一行で済ませず、価格、販売枠、仕様、購入後の案内のどれが変わるかを残します。商品そのものの仕様が変わるなら関連する販路を確認し、直販の送料だけなら、同じ説明が載る商品ページや購入画面を探します。担当者が兼任する小さな会社でも、更新する範囲を選びやすくなります。
商品情報を検索へ伝える設定にも、同じ考え方を使います。Googleは商品構造化データについて、直接購入できない商品ページと、購入できるページで用途を分けています。対象ページの条件を確かめ、直販で販売できる数や価格と、受託の見積情報を混同しないよう実装担当へ伝えます。この解説コラムを商品として登録する指示ではありません。
最後に、P-10の一般購入、六個入り箱の仕入れ、別寸法の製造相談を、それぞれ入口から回答までたどります。途中で販売数や価格の参照元が変わらないか、購入後に使う案内へ届くかを確認してください。公開後も、在庫の訂正や窓口の引継ぎが繰り返される箇所を見直すことで、直販と既存取引を支える情報へ整えていけます。
参考・出典
- 摂津市「第3期摂津市産業振興アクションプラン」:2025年3月。収録研究資料の本文44ページ(PDF47ページ)にある企業間取引から消費者への直接販売の分析を参照。
- フォレストフィールド公式サイト:摂津市の所在地、製造・卸、工房販売、ネットショップへの案内を確認。在庫や契約条件の事例としては使用していません。
- 消費者庁「通信販売広告Q&A」:価格・送料・追加費用、引渡時期、返品特約の表示に関する説明を参照。
- Google 検索セントラル「商品の構造化データの概要」:直接購入の可否に応じた商品ページの用途を参照。
確認日:2026年9月7日。木製ペン立て、品番、数量、表と図は説明用の架空例です。個々の販売条件、契約、保証の適用範囲は、自社の実態に合わせて確認してください。