コンサルティング会社のサイトで「課題の整理からご相談ください」と案内していても、フォームが専門分野の選択と詳しい要件の記入を必須にしていると、相談者は立ち止まります。「組織の問題なのか、業務の問題なのか分からない」という企業に、入口で答えを求めてしまうためです。
見直す軸は、課題名を選ばせる前に、起きている場面・今ある制約・相談で期待することを伝えられるようにすることです。三つを長い必須記述欄に分けるのではなく、最初の連絡に必要な情報と、分かる範囲で補足する情報を分けます。この記事では、自社サイトを改修する担当者が、フォームの説明、入力欄、通知内容を制作会社と決めるための設計例を示します。
「課題の整理から相談できる」と入力条件をそろえる
まず、現行サイトのサービス説明とフォームを並べてください。入口では初期段階の相談を歓迎しているのに、遷移先でサービス名、予算額、実施時期を確定させないと送れないなら、二つの画面が想定する相談者の状態は一致していません。
公開例では、NCDCのDXコンサルティング紹介に、要件や依頼内容が明確でない段階でも問い合わせでき、その後に課題や期待をヒアリングする流れが示されています。これは同社の受付方針の例です。自社でも同じ対応を約束するのではなく、フォーム入力時と面談時で、どこまでの情報を求めるか分ける参考になります。出典:NCDC
自社の受付担当に確認するのは、「課題が曖昧な相談を受けるか」と「その場合に初回連絡へ進める最低限の情報は何か」です。受け付けるなら、入力欄の前に、整理前でも相談できる範囲と、まだ決めなくてよい項目を短く示します。対応しない相談がある場合は、その範囲も同じ場所から確認できるようにします。
フォームの見出しも確認します。「見積もりに必要な要件を入力」では、現状を話したい人には目的が違って見えます。実際の窓口が初期相談を受けるなら、「現在の状況をお知らせください」など、受付で求める行動に合わせます。料金や無料相談の範囲は、実際に決まっている内容だけを別に案内してください。
原因の診断を求めず、起きている場面を聞く
最初の自由記述欄は、「課題を詳しく」だけでは書き出しに迷います。「どの場面で、どのようなことが起きていますか」と問い、観察できている出来事を書けるようにします。原因や解決策まで記入する必要がないことも、欄の近くで伝えます。
たとえば、説明用の架空の入力例なら、「毎週の部門間会議で確認事項が持ち越され、次の担当者が決まりません」と書けます。この段階で「組織改革が必要」と決める必要はありません。フォームは相談者の状況を受け取る入口なので、専門家が確認する前の分類を正解として固定しない設計にします。
入力例は、自社に都合のよいサービス名へ誘導する文章に偏らせないことも大切です。特定の原因や施策を例示し続けると、利用者がそれに合わせて書き換える可能性があります。場面、起きていること、困っている点が分かる短文にし、実在する顧客の出来事として見せないようにします。
既存のフォームに相談分野の選択欄がある場合は、分類そのものを必ず削除するわけではありません。「まだ分からない」「複数に関係する」からも同じ相談欄へ進めるかを確認します。受付側の振り分けに使う分類と、相談者が説明する状況は、別の項目として扱います。
三つの質問を、受付で必要な深さにする
質問票を作る際は、項目名だけでなく、入力を求める深さまで指定します。下表は検討用の設計例です。必須か任意かは、自社で初回連絡に使う内容を確認して決めてください。「あると便利」という理由で、すべてを必須にしないことがポイントです。
| 質問の軸 | 画面に置く問いの例 | 書いてもらう範囲 | 制作時に決める扱い |
|---|---|---|---|
| 起きている場面 | どの場面で、何に困っていますか | 分かっている出来事を一つ。原因の断定は不要 | 主な相談欄にし、必要な長さを受付担当と確認 |
| 変えにくい条件 | 今の時点で動かせない条件はありますか | 時期、体制、既存の仕組みなど分かる範囲 | 任意の補足とし、未確認と条件なしを区別 |
| 相談への期待 | 最初の相談で何を整理したいですか | 状況整理、選択肢の確認など現在の希望 | 成果の確約や依頼業務の確定として扱わない |
| 予算・実施時期 | 決まっている範囲を教えてください | 確定済みの条件か、未定という現在の状態 | 未定を選んでも不要な金額・日付を要求しない |
| 補足したいこと | 上の欄で伝えきれないことはありますか | 必要な補足だけ | 同じ内容の再入力や資料添付を強制しない |
「制約」という言葉が堅い場合は、画面上では「今の時点で動かせない条件」と言い換えます。社内で使っている業務用語をそのまま項目名にせず、相談者が答えられる問いにする作業も、フォーム原稿の一部です。
一つの相談内容欄に三つの書き方のヒントを添える方式も選べます。三欄に分ける方式は通知時に整理しやすい一方、同じ話を繰り返させることがあります。短い相談が多い窓口なら一欄から試し、どの質問で記入が止まるかを社内の入力確認で見て、必要な分だけ分けます。

未定を選んだ後も、無理なく送れるようにする
トリトケのお問い合わせページでは、課題、予算、スケジュールが決まっていない段階も相談できることを、フォーム前の案内で説明しています。参照したのはこの公開案内であり、実際の入力欄や送信処理を確認したものではありません。自社サイトでも、未定でよいという説明と、実際の入力条件を一組で点検します。出典:トリトケ
たとえば予算の選択肢に「未定」があっても、次の欄で数値が必須なら矛盾が残ります。希望時期も、まだ決まっていない人に仮の日付を入れさせると、通知を受けた担当者が希望日と誤認しかねません。未定を選んだ場合は、金額や日付の追加入力を求めないなど、分岐後の状態まで指定します。
「分からない」と「条件なし」も分けて扱います。前者はまだ確認できていない状態、後者は相談者が条件を挙げないと判断した状態です。通知メールでどちらも空欄になったり、未定がゼロ円に置き換わったりしないよう、表示上の言葉と保存する値を対応させます。
選択肢を途中で変更したときの挙動も、制作会社へ依頼する事項です。相談分野を選び直しただけで、記入済みの状況説明が消えないか。非表示になった追加項目が、以前の回答のまま通知されないか。保持する情報と送信しない情報を分け、検収時に操作して確かめます。
書き方のヒントは、入力を始めても読める場所へ
長い説明をすべて入力欄の中に薄く表示すると、書き始めた途端に消えてしまいます。W3Cのフォーム解説は、プレースホルダーが入力中に消えることや、ラベルの代わりにならないことを説明しています。項目名と必要な案内は入力欄の外に置き、書きながら確かめられるようにします。出典:W3C
「起きている場面」の欄なら、短い項目名、その下に「原因が分からなくても、起きていることを一つお書きください」という説明、続いて入力欄という順にします。入力例を足す場合も、説明を押し下げるほど増やさず、スマートフォンで入力欄と近くに見える長さにします。
文字数の条件を設けるなら、その理由と実装を確認します。長文を求めることが情報の質につながるとは限りません。下限に届かせるための文章を追加させるより、短い状況説明でも初回連絡に使えるかを受付側に確認する方が、項目の見直しにつながります。
制作会社には、見た目の配置に加え、入力欄とラベル、補足説明の関連付けも確認してもらいます。ただし、参考資料どおりに文言を置いたことだけで、フォーム全体の使いやすさが検証済みになるわけではありません。実際の画面と操作で判断します。

既存フォームの修正指示を、画面ごとに書き分ける
改修を依頼するときは、「相談しやすくしたい」という要望を、変更する箇所に分けます。サービスページのボタン、フォーム冒頭の説明、各入力欄、確認画面、完了画面、受付通知という順に並べると、文言だけで直る部分と処理の変更が必要な部分を切り分けられます。
たとえば、相談分野が必須の現行フォームなら、変更指示は「未定を追加」だけで終えません。「まだ分からない」を選んだ場合は追加の専門項目を出さず、共通の状況説明欄へ進めること、受付通知の担当を決めておくこと、確認画面にも選択した言葉を表示することまで一緒に指定します。
期待することの選択肢も、「売上を上げたい」「人材を増やしたい」といった最終成果だけにしない設計が考えられます。「今の状況を整理したい」「進め方の候補を知りたい」など、最初の相談で求めることを選べるようにすると、依頼業務が決まっていない段階を表せます。実際の提供範囲に合う選択肢かは、サービス担当に確認します。
一方で、選択肢を増やしすぎると一覧を読む負担が増えます。相談者が区別できない似た言葉が並んでいないかを見て、迷う場合には自由記述で補足できるようにします。複数選択を認めるか、一つに絞るかも、受付での使い方に合わせて決め、画面に説明します。
見積もりを依頼する資料には、質問文の変更、必須条件の変更、通知内容の変更を別々に記載します。文言の差し替えだけなら短い作業でも、外部の顧客管理システムへ値を送っている場合は、連携先の項目も確認が必要です。画面で未定を選べるのに連携先で受け付けない、といったずれを防ぐためです。
検討中の項目には、確定者と確認期限を付けておきます。制作会社が受付方針を推測して必須項目を決めるのではなく、回答待ちの箇所を明示したうえで、確定済みの説明や画面配置から作業を進められるようにします。
受付通知でも、相談者の言葉と未定の状態を残す
画面が分かりやすくなっても、届く通知が「業務改善・予算なし」だけでは、入力された事情を読み取れません。項目名と回答を組にし、起きている場面、動かせない条件、期待することを、相談者の文章とともに確認できる通知を用意します。
通知の件名に分類を入れる場合も、未選択や複数分野の相談が届く宛先を決めます。「分野が未定だから担当者がいない」という状態を作らず、まず確認する窓口を社内で指定してください。制作会社は、その方針に沿って通知先や管理画面の表示を設定します。
受付完了画面には、送信を受け付けたことと、次の連絡方法を示します。相談内容を送っただけで、支援の受託や提案内容が確定したように見せないことも大切です。返信時期の目安や日程調整の方法は、自社で実行できる手順を確認してから掲載します。
見直し後は、架空の相談で三つの経路を試します。分野も予算も未定の相談、複数分野にまたがる相談、途中で選択を変える相談です。入力が最後まで進むかだけでなく、画面、通知、保存先で情報の意味が同じかを確認します。特に「未定」が無回答やゼロに変わっていないかを照合してください。
制作会社へ渡す資料には、現行フォームの画面、変更したい問い、必須・任意の方針、分岐条件、通知先をまとめます。受付方法と判断者は自社で決め、画面と処理への反映を制作側と確認する。この役割分担があると、課題の整理前でも使える相談窓口を具体的に依頼できます。
参考資料
公開情報を2026年9月16日に確認。公開案内と入力支援の考え方を参照した設計例です。各社のサービス条件を自社へ適用するものではありません。