共同設計で関わった建物をサイトに掲載したところ、相談者から「この建物をすべて設計したのですね」と言われる。建築設計事務所の作品ページでは、写真の印象が強いほど、担当した工程や協働先の説明が読まれないことがあります。ページの末尾に名前を並べるだけでは、作品を見た人に役割の違いが伝わらない場合もあります。
見直したいのは、作品ごとに用意する「担当工程・協働先・撮影許諾の事例票」と、その内容を画面へ出す位置です。自社が担った仕事、協働した相手、写真を使える条件を分けて整理し、作品一覧から詳細ページまで説明をそろえます。関係者名を多く載せることより、何を担当した実績なのかを読み取れることが大切です。
この記事では、事務所の経営者や広報・Web担当者が、実績ページの入力項目と表示を制作会社へ依頼するための材料をまとめます。実際の担当範囲と掲載条件は事務所が関係者に確認し、制作側は確定した情報を省略せず伝える構成を担当します。
作品名の近くで、自社の担当を伝える
建物の名称、竣工年、用途は、その作品を知るための情報です。一方、担当工程や協働先は、その事務所へ何を相談できるかを考える材料です。建物の情報だけを詳しくしても、事務所がどの部分に関わったかは分かりません。作品データの中に、自社の役割を説明する欄を独立して設けます。
8d一級建築士事務所の「GD Daikanyama」では、意匠設計、共同設計、構造設計、設備設計、施工、撮影が役割ごとに記されています。掲載されている名前だけでなく、名前の前に役割の見出しがある点を、自社ページの項目設計の参考にできます。8d一級建築士事務所の掲載例
同じ「共同設計」という表記でも、それだけで個々の担当工程まで分かるとは限りません。事務所内で確認できた範囲に基づき、どの段階や部分を担当したのかを短く補います。公開できない詳細がある場合は、制作担当が想像で埋めず、関係者と合意できる表記を事務所で確定します。
作品名の直下には短い担当表示を置き、詳しい協働体制は作品データ欄で伝える方法があります。最初の写真を見る段階で役割を知れ、詳しく比較したい人は続きを読める構成です。表記は正式名称を確かめ、見た目を短くするために「設計協力」を「設計」へ変えるなど、意味が変わる省略をしないようにします。
公開する説明と、社内で残す確認記録を分ける
事例票には、読者へ見せる文章と、その文章を誰が何で確認したかを分けて記録します。契約書や確認メールを、そのまま作品ページへ載せる必要はありません。公開欄は読者に必要な説明、管理欄は担当者が掲載判断を引き継ぐための記録です。
次の表は、入力項目を設計するための例です。架空の案件に役割を割り当てたものではなく、実案件について事務所が確認する項目を示しています。すべての作品に同じ担当工程を入れたり、空欄を「単独設計」で補ったりしない運用にします。
| 整理する項目 | 作品ページに出す内容 | 社内で残す確認記録 | 制作時の確認 |
|---|---|---|---|
| 自社の担当工程 | 担当した段階・部分と役割 | 原資料、設計担当の確認、確定日 | 一覧と詳細で意味が変わらない |
| 協働先 | 役割名と承認された名称 | 相手先への表記確認、連絡担当 | 名称だけの羅列にしない |
| 作品の状態 | 竣工、計画案などの区別 | 掲載時点、変更の確認先 | 完成写真と計画画像を混同しない |
| 写真・図面 | 撮影者や作成者など必要な表記 | 素材ID、掲載先、加工条件、確認記録 | 素材ごとの条件が対応する |
| 公開範囲 | 公開できる所在地・作品情報 | 非公開にする項目と確認者 | 本文以外の欄にも情報が残らない |
担当工程の管理欄では、何を根拠に確定したかを残します。資料名があるだけで制作側が業務分担を解釈せず、設計担当が公開文を確認する工程を設けます。協働先名の表記が未確定なら、確認待ちであることを管理欄に残し、勝手に名称を落として単独作品のように見せないようにします。
以前所属していた事務所での担当作品を紹介する場合は、現在の事務所として受けた案件と区別できる見出しや注記が必要です。掲載の可否、所属先名、個人の担当範囲は事務所が確認します。制作会社が肩書きや経歴から担当内容を推測して実績へ組み込むことは避けます。
一覧カードでも、担当の限定を落とさない
作品詳細に正しい説明があっても、トップページや作品一覧に「当社設計」と大きく出ていれば、入口で異なる印象を与えます。確認対象は詳細ページだけにせず、一覧カード、トップのおすすめ作品、関連作品、業務紹介の抜粋まで広げます。
一覧では、作品名と写真に加え、「共同設計」などの関わり方を短く表示します。担当の説明をすべて載せる必要はありませんが、短縮しても単独で全体を手掛けた意味にならない文言を選びます。詳しい工程を作品データへ置く場合は、カードからその説明へ進めるようにします。
絞り込み項目にも注意が必要です。建物の用途を分類する欄と、自社の担当業務を分類する欄を分ければ、「店舗の作品」と「店舗全体の設計を担当した作品」を混同しにくくなります。分類名は実際の案件に基づいて決め、掲載件数を増やすために関連しそうな業務を広く付けないようにします。
画像の中だけに担当名を入れる方法では、スマートフォンの切り抜きや写真差し替えで表記が消えることがあります。役割の説明はページの文字としても残します。画像の説明文や検索向けの要約にも、自社がすべてを設計したような表現がないかを確認します。
作品の冒頭写真を自動で抜き出す機能がある場合は、その写真に必要な表記も一緒に扱えるかを確認します。詳細ページに撮影者名があるから一覧では不要と制作側だけで決めず、事務所が確認した条件に合わせます。表記が入らない枠なら、枠を広げるか別の素材を選ぶなど、表示方法から見直します。

撮影者名と、写真を使える条件は別々に確認する
撮影者の名前を表示することと、その写真を今回のサイトで使えることは、別の確認項目です。クレジットを入れた事実だけで掲載条件が整ったと扱わず、事務所が確認した媒体や加工範囲、必要な表記を、制作に使う画像データと対応させます。個別の契約や権利の判断は、確認できる担当者へ引き継ぎます。
須藤剛建築設計事務所の「ほぼ日の學校」では、共同設計、照明設計の表記とともに、撮影者が記載され、一部の写真には番号で撮影者の対応が示されています。写真が複数ある作品では、作品全体の協働体制と、写真ごとの撮影者を分けて管理する参考になります。須藤剛建築設計事務所の掲載例
サイトで写真の順番を入れ替えるなら、「3枚目」のような位置だけを管理の根拠にしないほうが扱いやすくなります。素材IDや元ファイル名に撮影者と使用条件を結び付け、画面上の順番が変わっても対応を保ちます。図面や完成予想図が混ざる場合も、画像の種類と作成者をそれぞれ記録します。
隈研吾建築都市設計事務所の資料掲載依頼フォームでは、掲載内容や形態、対象プロジェクト、写真枚数、撮影希望などを別々に確認しています。この項目の分け方からも、資料があることと、どこへ何を掲載するかの確認を分ける必要性が読み取れます。これは公開フォームの構成例であり、すべての事務所へ同じ手続きを求めるものではありません。資料掲載依頼フォームの例
自社サイトへの掲載確認を、SNSや広告、外部メディアへの再利用まで含むものとして自動的に扱わないようにします。制作会社に渡す事例票には、今回使う場所を具体的に記載します。掲載範囲を増やすときは、その範囲について確認する担当を決めておくと、以前の記録を流用したまま作業が進むことを防げます。
写真を切り抜いたり加工したりする場合の依頼項目は、写真編集・画像加工の依頼方法で整理できます。本記事では、作品の担当範囲と、使用する写真のクレジット・条件が同じ事例票から追える状態を優先します。
作品追加と写真差し替えで、表記を引き継ぐ
作品ページを複製して次の作品を作る運用では、前の担当工程や撮影者名が残ることがあります。新規作成時には確認が必要な欄を空にし、必要項目が確定するまで公開用の表示へ反映しない仕組みを検討します。空欄を一律の名称で補うより、更新担当が未確認を見つけられることが重要です。
担当工程は作品単位、撮影者や加工条件は素材単位で持たせると、差し替え時に確認する範囲を絞れます。ただし、投稿画面に欄を作るだけでは運用は決まりません。誰が内容を確定し、誰が入力し、どの画面で最終確認するかを、事例票と一緒に渡します。
協働先から表記変更の連絡があった場合は、作品詳細の変更だけで終わらせず、一覧や関連作品の抜粋も確認します。名称を共通管理する仕組みを使う場合も、過去作品で当時の名称を残す必要があるかを確認し、すべての作品を一括で置き換える前に事務所が方針を決めます。
公開を止める必要が生じた素材は、ページ内だけでなく、サムネイルや別ページの抜粋で使っていないかを調べます。制作会社へは画像ファイルと使用先の一覧を依頼すると、対象を特定しやすくなります。管理画面で一枚を外したことと、すべての掲載箇所から外れたことを同じ扱いにしないようにします。

一つの共同作品で、見え方と更新を検収する
改修を依頼するときは、共同設計の作品を一つ選び、事例票と既存URL、写真の元データ、確認済みの表記を用意します。資料が未確認の項目は担当者と確認方法を決めます。制作会社には、一覧カード、作品詳細、関連作品の三つを並べた確認版を依頼すると、表記の違いを見つけやすくなります。
確認版では、写真を見る段階で自社の担当を読み取れるか、協働先の役割が名称と結び付いているか、撮影者名が該当写真から分かるかを見ます。スマートフォンでは長い名称が途中で切れたり、表の右側に隠れたりしないかも確認します。横に送る表を使うなら、操作できる案内と、項目を追える見出しを用意します。
更新操作も一度試します。写真の順番を変える、新しい素材へ差し替える、長い協働先名を入力する、担当工程が未確定の作品を下書きにする、といった状態で表示を確かめます。非公開の住所が画像の説明欄に残っていないかも点検します。通常の完成画面だけでは見つからない引継ぎ漏れを確認するためです。
確認結果は、作品名だけでなく、使用した素材と画面の版を付けて残します。写真を差し替えた後も以前の確認記録が付いたままなら、現在の画面を誰が確認したのか分からなくなります。更新した項目と再確認が必要な箇所を作業記録に残し、担当者が交代しても同じ判断をたどれるようにします。
作品を気に入った人が相談へ進む入口には、その作品で担当した業務と、現在受け付けている業務を混同しない説明を添えます。過去の担当経験から現在の対応範囲を制作側が推測せず、事務所が確定した業務紹介へつなぎます。共同設計作品も、役割を明確にすることで相談の接点を具体的に伝えられます。
最初から全作品の見せ方を変える必要はありません。一つの共同作品で担当・協働先・素材の情報が引き継げる型を確かめ、ほかの作品へ展開します。作品の魅力と実際に担った仕事を同じページで理解できることが、今回の改修で目指す状態です。
共同作品の担当表示と更新画面を整えたい方へ
みやあじよでは、建築設計事務所が確認した作品情報をもとに、担当業務とクレジットの欄、公開範囲の確認表、作品を追加する画面を制作します。現在の作品ページと、表記に迷う案件をお聞かせください。
参照資料
- 8d一級建築士事務所「GD Daikanyama」:役割別のクレジット表記を参照。
- 須藤剛建築設計事務所「ほぼ日の學校」:共同設計と撮影者、写真番号に対応する表記を参照。
- 隈研吾建築都市設計事務所「Publication Request」:掲載内容や形態、素材の確認項目を参照。
2026年9月16日に公開ページの本文を確認。各作品の契約・許諾を独立検証したものではありません。実際の掲載条件は事務所と関係者による確認が必要です。