頼みたいことから事業が見つかる案内へ、移転準備中のオフィス

NOTES

複数事業のホームページを、依頼目的から選べる構成にする

複数事業のホームページを依頼目的から選べる構成へ。相談の言葉を基に、目的・対応事業・詳細ページ・窓口の対応表を作り、複数部門にまたがる依頼と入口名の確かめ方を解説します。

チップス

ホームページに三つの事業部が並んでいる。しかし、初めて訪れた人は「自社の事務所を移したい」という相談を、どの事業部へ送ればよいか分からない。各部門の紹介文は正しくても、会社の組織を知らなければ依頼先を選べない構成になっていることがあります。

複数事業の入口を整理するときは、顧客が実現したいことと、対応する事業の関係を先に書き出します。事業名をすべて変更する必要はありません。目的から入る案内と、名称を知っている人の案内を用意し、必要な詳細と受付先へつなぎます。

この記事は、複数のサービスを扱う事業責任者・Web担当者向けの構成設計です。空間計画、通信環境整備、什器手配を扱う架空の会社を例に、目的の分類と掲載場所を決める手順を説明します。実在する会社の対応範囲や、みやあじよが提供する事業を示す設定ではありません。

事業一覧を並べ替える前に、相談の言葉を集める

最初の材料は、会社案内の見出しだけではありません。営業への初回相談、問い合わせフォーム、商談前の質問などから、顧客が何を頼もうとしていたかを集めます。個人名や顧客情報を公開原稿へ持ち込まず、相談の場面と言い方を編集用の資料へ整理します。

架空の会社なら、「来春に拠点を移したい」「会議室の通信環境を見直したい」「机を入れ替えたい」といった相談が材料になります。一方、「空間ソリューション事業」「ICT事業」という社内の呼び方は、提供側の分類です。最初から相談を事業部ごとの箱へ入れると、複数部門に関係する目的を見落とす可能性があります。

GOV.UKのサービスマニュアルは、利用者のニーズを調べる方法として既存の記録や利用者への調査を挙げ、本人の言葉として自然な表現で整理する考え方を示しています。政府サービス向けの指針ですが、社内の推測だけで入口名を決めないための参考になります。GOV.UKの利用者ニーズの調査

記録が十分にない場合は、営業担当がよく聞く相談を候補として書き出します。ただし、実際の顧客の発言と、担当者が考えた仮説を同じ根拠として扱わないようにします。資料に「問い合わせ記録から」「営業担当の想定」と出どころを残せば、後で確かめる必要がある候補を選べます。

目的の名前は、同じ粒度で比較できるようにする

集めた相談を、そのまま長いメニュー名にする必要はありません。共通する目的をまとめ、入口の名前を短くします。ただし、短さを優先して「快適にする」「課題を解決する」と広げすぎると、ほかの入口との違いが分からなくなります。

架空例で「拠点を移す」「通信環境を見直す」「什器を入れ替える」と並べれば、何を相談する入口かを説明できます。ここで一つだけ「働く環境を整える」とすると、通信も什器も含むように見え、どれを選ぶか迷うかもしれません。広い言葉を使うなら、下にどんな依頼を含むかを添え、隣の入口との関係を明示します。

別の粒度が混ざっていないかも見ます。「拠点移転」「椅子」「保守担当への連絡」という並びは、目的、商品、手続きが同じ段にあります。すべてを一つの分類へ押し込むより、依頼目的の一覧、商品から探す入口、利用中の人の連絡先に役割を分ける方が整理しやすい場合があります。

入口名の候補は、顧客がその言葉から何を期待するかで比べます。「オフィス移転」と書けば、荷物の運搬も含むと思われる可能性があります。実際には空間計画と通信環境の整備だけを扱うなら、その範囲をカード内に補います。名称だけで、提供していない仕事まで引き受ける印象を作らないようにします。

顧客の目的・対応事業・詳細・窓口を対応表にする

次の表は、架空の会社が制作前に作る整理例です。左から、顧客の目的、関連する事業、詳しく説明するページ、相談を受ける窓口を並べています。事業と目的の数を一致させる表ではなく、目的から必要な説明へ進めるかを確かめるための表です。

顧客の目的 関係する事業 詳しく確認するページ 相談の入口
拠点を移す準備をしたい 空間計画・通信環境整備・什器手配 移転時に依頼できる範囲の案内 移転についての相談受付
会議室の通信環境を見直したい 通信環境整備 対象環境と確認事項の詳細 通信環境の相談受付
机や収納を入れ替えたい 什器手配 対応商品と依頼条件の詳細 什器の相談受付
どこまで依頼できるか未定 内容に応じて確認 対応範囲の全体案内 担当を選ばずに相談できる入口

実際に作る際は、各窓口がその相談を受けられるかを担当者に確認します。表を完成させるためだけに総合窓口を追加することは避けます。一人が複数の役割を担っていても構いませんが、どの用件として受け、誰へ確認するかは社内で共有してから案内します。

表の中に、対応事業はあるのに詳細ページがない行があれば、説明を追加する候補です。詳細はあるのに受付先が分からない行は、相談への案内を直す候補になります。一つの目的に多数のページが並ぶ行は、読む順番や途中で選ぶ条件を補う必要がないかを検討します。

反対に、既存ページがどの目的にも結び付かない場合、すぐ削除するのではなく、誰が何のために読むページかを確認します。取引先向けの専門資料や採用情報など、今回の依頼目的とは別の役割かもしれません。新規顧客の入口へ置かないことと、サイトに不要であることを分けて判断します。

一つの目的が複数事業にまたがるときは、依頼範囲を説明する

架空例の拠点移転は、三つの事業に関係します。だからといって、三つの事業部をそれぞれ読んでから問い合わせるよう求めると、顧客が社内の連携を組み立てることになります。移転の目的から入ったページで、関係する仕事と確認先をまとめて案内します。

このページで伝えるのは、移転に関して何を相談でき、どの詳細を確かめればよいかです。空間計画、通信環境、什器について、各サービスの詳しい説明へリンクを置きます。移転の案内に全サービスの原稿を複製すると、内容を変更するたびに複数ページの照合が必要になります。

また、同じ目的に関係するからといって、すべてを一括で契約する商品だとは限りません。目的別のページを作ることと、セットプランを新設することは別です。まとめて相談できる範囲や、別途確認する内容を事業側へ確かめ、サイトの構成だけで販売条件を変えないようにします。

通信環境だけを見直したい人には、移転ページを経由しなくても通信の詳細へ進める入口を残します。同じサービスが複数の目的に関係する場合、詳細の置き場所を一つにして、必要な入口から案内できます。顧客が選んだ目的によって、説明の中身まで矛盾しない構成にします。

移転の目的と通信・什器の目的から、必要な事業の詳細へ進む関係図
架空の会社の構成例。一つの目的が複数の事業に関係し、同じ詳細ページを別の目的からも案内します。

目的の入口と事業名の入口を、同じ詳細へつなぐ

既存の取引先は、正式な事業名やサービス名を知っている場合があります。目的別に整理した結果、その名称がサイトから消えると、資料を見ながら探している人が迷います。目的から探す案内を加える一方、サービス一覧や検索から正式名称でも到達できるようにします。

この二つの入口は、同じ大きさでトップページへすべて並べる必要はありません。主要な目的を示す欄と、名称の一覧を開くリンクなど、表示の役割を分けられます。事業部の数だけ大きなバナーを増やす前に、初めての人が選ぶ情報と、名称を知る人が確かめる情報を分けて考えます。

GOV.UKのナビゲーションの案内でも、メニューはサイトマップではなく、サービス内の全項目を列挙する必要はないと説明されています。企業サイトでも、すべての詳細を常に見せることだけが案内方法ではありません。必要な項目を、意味の分かるまとまりから探せるかを確認します。GOV.UKのナビゲーション設計

詳細ページに着いたときは、入口で読んだ言葉との関係を示します。「通信環境を見直す」から「ICT事業」へ移る場合も、見出しの近くにどの依頼を扱うかがあれば、別の場所へ迷い込んだ印象を抑えられます。事業名だけに戻して説明を途切れさせないようにします。

分類を選べない人にも、相談できる経路を残す

目的がはっきりしない段階の相談もあります。「移転を考えているが、通信や家具まで頼むかは未定」という人に、先に三事業から一つを選ばせると、せっかく作った目的別の入口がフォームで途切れます。問い合わせの選択肢も、公開ページの案内と合わせて確認します。

未定の相談を実際に受け付けるなら、その選択肢と説明を用意します。「どのサービスか分からない」「複数の内容を相談したい」など、選べない理由に合った表現を検討できます。ただし、その後に誰が内容を確認するかを決めてから公開します。受付先のない選択肢を増やすことはできません。

問い合わせ前に分かるとよい情報は、目的に沿って絞ります。架空例なら、移転の相談に対して、現在分かっている時期や相談したい範囲を尋ねる構成が考えられます。詳細な仕様が決まっていない段階を受けるなら、すべてを必須にすることで入口を塞いでいないかを見ます。

この段階で必要なのは、受付フォーム全体の作り直しとは限りません。ページから選んだ目的がフォームにも残るか、担当未定で送れるか、確認後の案内が説明されているかを確かめます。社内組織名を知らないと相談できない箇所を、一つずつ見つけます。

無地のカードで依頼目的の分類を検討する机の編集イメージ

公開前は、事業部名を教えずに入口を試す

分類案ができたら、利用者に近い人へ相談場面を伝え、どこから探すかを確認します。「ICT事業を選んでください」と正解を教えるのではなく、「会議室の通信環境を見直したい場合、どこを開きますか」と場面を示します。選んだ入口だけでなく、そう考えた理由も記録します。

迷った場合は、入口名が曖昧なのか、複数の入口が同じ意味に見えるのか、欲しい目的がないのかを分けます。「もっと大きなボタンにする」だけでは、分類の問題が残ることがあります。文言、補足説明、目的の分け方のうち、どこを直すかを判断します。

例えば「拠点を移す」と「働く環境を整える」で迷うという反応が出たなら、二つの範囲の重なりを確認します。これは想定する確認場面であり、実際のテスト結果ではありません。実施した際には、質問文、対象となる案、選択、発言、修正点を残し、作った側の推測と分けます。

スマートフォンでも同じ場面を試し、補足説明を読めるか、詳細へ進んだ後も相談目的を見失わないかを見ます。入口を押せたことだけで完了とせず、対応範囲と問い合わせ先まで確認します。分類の正しさは、メニュー単体より、その先までつながるかで判断します。

改修依頼は、目的と案内先の対応を渡す

制作会社へは、組織図とサービス資料に加え、目的・事業・詳細ページ・受付先の対応表を渡します。現状のページで足りるところ、説明を補うところ、新しい案内が必要なところを区別すると、見た目の変更だけでは解決しない箇所を共有できます。

事業側が確認するのは、実際に受けられる依頼と対応範囲です。制作側は、その確認済みの内容を入口名、表示順、リンク、詳細の見出しへ反映します。組織変更があっても顧客の目的が変わらない場合は、入口を一律に作り直すのではなく、対応事業と窓口の欄を中心に照合できます。

まず最近の相談を一つ選び、その人が社内組織を知らなくても、必要な説明と相談先へ進めるかをたどってみてください。複数事業を選びやすくする作業は、事業の数を減らすことではなく、顧客の目的と提供できる仕事の関係を見える形にすることから始まります。

目的から選べるサービス案内を整える

目的と事業の関係や、複数部門にまたがる相談の案内を整理したい場合は、みやあじよの事業・サービス案内の整理をご覧ください。サービス整理表、一覧・詳細の原稿と画面、相談先へつなぐリンクや受付案内などの支援内容を紹介しています。

参考・出典

  • GOV.UK Service Manual「Learning about users and their needs」:既存記録と利用者の言葉を基にニーズを整理する考え方を参照。
  • GOV.UK Design System「Navigate a service」:ナビゲーションと全項目の一覧を区別する考え方を参照。

出典確認日:2026年9月20日。表、会社設定、相談場面は設計例です。顧客調査の実施、分類案の検証、成果の計測を完了したものではありません。