クリニックのWebサイトに診察室や新しい設備の写真はあっても、初めて来る人が通る入口は載っていないことがあります。住所を調べて建物へ着いても、「どの扉から入るか」「段差はあるか」「受付はどこか」が分からなければ、受付へ進むまでに迷ってしまいます。写真を施設の魅力を見せる素材として並べるだけでなく、入口から待合まで一つの経路として読める案内にします。
この記事の読者は、診療所の院長、受付責任者、Web担当者です。実際の来院経路を撮影する前に何を確認し、どの写真と説明をサイトへ置き、制作会社へ何を渡すかを整理します。診療内容や医療上の適否を判断する記事ではありません。掲載例は架空の設計例であり、実在する医院の設備や対応を表しません。
みやあじよのクリニック・診療所向けホームページ制作では、診療情報、初診案内、予約、アクセスなどを患者さんが順に確かめられるように整える支援を扱っています。既存のクリニックホームページ制作の要件は初診から公開後更新までの全体設計を説明しています。ここではその中の「建物へ着いてから待合へ進むまで」を写真で案内する方法に絞り、どこから撮り、写真にどんな説明を添えるかを決めます。
初めて来る患者さんの順路に沿って写真を並べる
院内写真のページは、明るい待合、診察室、検査機器といった施設紹介になりがちです。しかし初診の人に必要なのは、まず道路や駐車場から見える外観、実際に使う入口、入口の先の受付、受付後に待つ場所のつながりです。順番が逆だと、きれいな待合の写真を見ても、そこへどう行くのかは分かりません。写真の並びを、来院する人が立つ位置の順にします。
厚生労働省の医療情報ネット「ナビイ」は、医療機関をバリアフリー対応などの条件から探せると案内しています。同ネットのアイコン説明には、施設・敷地のバリアフリー対応状況に関する写真をホームページへ掲載しているか、という項目もあります。これは「写真を一枚載せれば利用可能と保証される」という意味ではありません。写真があれば、対応状況を調べる人が現地の経路を確かめる助けになります。ただし、写真の掲載と実際に利用できることは分けて確認します。
写真の対象は、医院ごとに実地で決めます。テナントビルなら建物の外観だけでは医院の入口が見えず、階数、エレベーター、通路の曲がり角が必要かもしれません。路面の診療所でも、正面階段と別に段差の少ない入口があれば、どちらへ進むか明記します。夜間や休日に入口が変わる場合は、通常時の写真だけで案内せず、その入口を使える時間帯を添えます。
兵庫医科大学病院の外来案内は、初診受付から診療科受付、待合へ進む順番を文章で説明しています。大きな病院の流れを小規模診療所へそのまま移す必要はありませんが、患者が次の場所を確かめながら進むという案内の考え方は参考になります。自院では、写真と短い文章を組み合わせ、実際の受付の順に案内します。
入口・段差・受付・待合をどう撮るか、撮影票で決める

撮影前に、受付担当とWeb担当が同じ経路を歩きます。道路側、駐車場側、最寄り駅側など到着点が複数あるなら、主な来院方法ごとに入口までの分岐を確認します。撮影する人へ「外観四枚、待合三枚」のように枚数だけを渡しても、肝心の曲がり角が抜けることがあります。立つ位置、次に見せる目印、写真の下へ書く一文を、撮影票にまとめます。
表は左右にスクロールして確認できます。
| 順番 | 撮る位置と対象 | 写真で確かめたいこと | 添える文と確認者 |
|---|---|---|---|
| 入口前 | 道路・敷地側から実際の入口を撮る | 看板と扉の位置、別入口との違い | 「通常の入口は建物の○側」など、受付が現地確認 |
| 段差・経路 | 入口の足元と通路を、通る方向から撮る | 段差、スロープ、扉、通路のつながり | 利用できる経路と介助の連絡先を施設担当が確認 |
| 受付 | 入ってから見える窓口を撮る | 初診で声をかける場所と案内表示 | 受付方法と時間を受付責任者が確認 |
| 待合 | 受付後に進む場所を撮る | 座って待つ位置、呼出方法への案内 | 待合の使い方を院内担当が確認 |
この表は撮影と掲載の設計例です。実際の医院に「○側の入口」やスロープがあるという意味ではありません。段差の高さ、幅、勾配などを画像から推測して書かず、寸法を載せるなら施設の記録や現地測定で確かめます。車椅子での通行可否も写真の印象だけで断定せず、医院が実際に案内できる経路と連絡方法を確認します。
写真案内図は、四つの写真に矢印だけを足して終わりにしません。各写真に「どこから見た写真か」「次はどこへ向かうか」を短く添えます。撮影者が院内から外向きに撮ると、来院者が実際に見る方向と逆になり、目印が判別しにくいことがあります。可能なら来院者の目線で撮り、必要なら逆方向の写真を補助として置きます。人の顔、診療情報、掲示物の個人名が写らない時刻と角度も決めます。
撮影票には、写真の代わりに文章だけで案内すべき場所も残します。狭い通路を広角レンズで撮ると実際より幅があるように見え、開いている扉の写真だけでは通常の開閉状態が分かりません。写真を撮った条件を記録し、特殊な角度や一時的な配置なら説明を補います。案内のために掲示や家具を動かした写真を、普段の院内の姿として載せるのも避けます。利用者が現地で見る目印と、写真に写る目印が一致することを優先します。
段差や利用条件は、写真だけでなく文章でも伝える
入口の写真に段差が見えなければ、画面上では平らに見えるかもしれません。しかし扉の敷居や途中の小さな段差は、広角写真では読み取れないことがあります。写真の説明は、実地で確かめた範囲に限定します。介助が必要な場合、別経路を使う場合、事前連絡が必要な場合は、写真と同じ場所にその条件と連絡先を置きます。利用者に当日その場で推測させないためです。
「バリアフリー対応」という一語でも、入口の段差、エレベーター、トイレ、診察室までの経路など、確認したい内容は人によって違います。自院のサイトでは一括のアイコンだけで済ませず、何が利用できるかを項目ごとに記します。対応できない経路があるなら、代替の入口や事前相談先を案内します。診療可否や介助の可否をWeb制作側が判断せず、医院の施設・受付担当が確認した事実を、原稿を書く基準にします。
車で来る人向けの写真も、駐車場の全景だけでは不足することがあります。駐車場所から入口までの歩行経路、雨天時に通る通路、駐車場と医院が別の建物である場合の関係を確認します。駐車可能台数や料金を載せるなら、管理者が変えたときの更新先も決めます。近隣の無関係な駐車場を自院の設備のように見せず、提携の有無と適用条件を分けます。
末尾に挙げた厚生労働省の医療広告ガイドラインは、敷地内、建物の外観や内装の写真について扱っています。実際の掲載前には、同省が公開する最新の指針も確認します。ただし、別の医院の写真を自院の施設として見せたり、実際に使えない設備を常時利用可能と受け取らせたりしない確認が必要です。制作途中の仮写真や生成画像は、完成後の実際の施設を撮った写真と取り違えないよう管理します。このページの図は医院の案内を整理するための例です。
来院案内は、予約後の患者さんにも見つけられる場所に置く
来院経路は「院内紹介」の深いページだけに置くと、予約を終えた人が見つけにくくなります。アクセスページには到着点から入口まで、初診案内には入口から受付・待合までを置き、予約完了画面や確認メールから同じ来院案内へリンクします。別々の写真を複製して持つと、入口変更時に片方だけ古くなります。写真と説明文を一か所で管理し、各ページから同じ案内へ進めるようにします。
診療科や初診・再診で受付場所が違う医院では、「受付」の写真を一つだけ置くと誤誘導になります。分岐が必要な条件をまず文字で示し、該当する窓口の写真へ進めます。発熱症状などで別の入口を案内する運用があるなら、その対象や連絡方法は院内で承認された文章に合わせ、通常の入口写真のすぐ近くに分岐を示します。症状からどの入口へ行くべきかをサイト制作者が独断で決めることはできません。
写真に番号を重ねる場合は、本文の順番と一致させます。「写真②の扉」と書きながら、スマートフォンで並びが変わって②が別の写真になる設計は避けます。代替テキストには「明るい受付」だけでなく「入口から入って正面にある受付窓口」のように役割を書くと、画像が見えないときも案内がつながります。ただし、写真の中の複雑な案内図を代替テキストだけへ押し込まず、経路の要点を本文にも記します。
サイト内でアクセスページと院内案内を別々に設けるなら、両方の境目を明確にします。地図や公共交通の説明は建物まで、写真の連続は建物に着いてから受付まで、初診の手続きは受付後という順です。来院者が予約確認メールから開くリンクは、単なるトップページではなく入口の写真が見える箇所へつなぎます。予約サービス側にリンク欄がない場合は、控えに記載できる範囲で、案内名やURLを医院サイトとそろえます。実際の控えから来院案内へたどり着けるかを確かめます。
新しい写真を撮る際は、撮影日時と撮影場所、掲載許可、差し替え責任者を残します。看板、受付機、案内表示の位置が変われば、写真はすぐ古くなります。ページには必要に応じて「写真は○年○月時点」と表示し、変更時に誰が撮り直すかを決めます。人物が写る場合は同意と利用範囲を確認し、患者の来院状況が分かる写真を安易に公開しない運用にします。
公開前に写真を見ながら歩き、迷う場所がないか確かめる

制作会社へは写真一式と、来院経路について確認した情報を渡します。建物・入口の名称、階数、分岐の条件、段差や設備の確認者、受付場所、例外時の連絡方法を一枚にします。写真ごとに撮影位置と見える目印を付け、アクセスページ、初診案内、予約後のメールのうち、どこから案内するかを決めます。事実が未確認の欄は「確認待ち」とし、制作側が見栄えのために「段差なし」「誰でも利用可」と補いません。
公開前の確認では、医院を初めて訪れる人のつもりで、スマートフォンの画面を見ながら駐車場または道路から実際に歩きます。写真と現地の看板が一致するか、同じ角度から扉が見つかるか、階段や通路の分岐で次の説明へ進めるかを確かめます。院内担当者は慣れた近道を使いがちなので、写真の順番を守って歩く確認が必要です。現地で迷った場所を記録し、そこだけ写真や文を補います。
画面は幅1440、768、390ピクセル程度で見ます。スマートフォンで写真が小さくなると看板の文字が読めないなら、重要な情報は写真外の見出し・本文へ出します。画像を拡大できない人もいるため、入口の位置や別経路の条件は、画像だけでなく本文でも伝えます。キーボードでも写真案内と連絡先へたどれるか、電話リンクを押した先が正しいかを確認します。地図アプリのピン位置も、写真で案内した入口と照合します。
公開後は、入口変更、工事、受付位置の移動、駐車場の契約変更を更新のきっかけにします。電話で繰り返し尋ねられる「どちらの扉ですか」という質問は、迷いやすい写真や説明の位置を見直す手掛かりです。問い合わせ件数がどのくらい減ったかは測定するまで書かず、実際に何を直したか記録します。設備写真だけのページから、来院者が現地で次に進む場所を確かめられる写真案内へ変えることが、この記事の目的です。
参考資料
- 厚生労働省「医療情報ネット(ナビイ)の使い方」(バリアフリー対応等による検索の案内を確認)
- 医療情報ネット「アイコンの説明(病院、診療所、歯科診療所、助産所)」(施設・敷地のバリアフリー対応状況に関するホームページ写真の項目を確認)
- 厚生労働省「医療広告ガイドライン」(令和6年9月13日版)(施設の写真、院内案内図、バリアフリー構造と誤認防止の記載を確認)
- 兵庫医科大学病院「外来のご案内」(初診受付から待合へ進む案内の例を確認)


