法律事務所のサイトで「個人のお客さま」「法人のお客さま」という二つのボタンを置いても、その先に同じ分野一覧と同じ問い合わせ先が続くと、相談者は自分の用件がどちらへ届くか分かりません。会社の契約書を一度見てほしい人が顧問契約の説明だけを見つけたり、経営者個人の相続相談が企業法務の受付に入ったりします。二分した入口を作る前に、実際に受ける相談と窓口の対応を整理する必要があります。
この記事は、自所サイトの内容、受付、更新を見直す法律事務所の経営者・担当者に向けた編集手順です。相談者の肩書だけで進路を決めず、「誰が、どんな立場で、何を相談したいか」から案内ページと連絡先を対応させます。取扱分野や受任条件、法律上の判断は事務所の弁護士が確認し、Web制作側は確認済みの内容を分かりやすい導線にします。
みやあじよの法律事務所向けホームページ制作でも、個人の法律相談と企業の法務相談を入口から分ける考え方を示しています。本記事ではさらに、法人相談を単発の依頼と継続的な顧問の検討に分け、二つの入口で迷う相談をどう受け渡すかまで、原稿に使える対応図に落とします。
「個人か法人か」だけで振り分けない
最初の分岐に「個人」「法人」と書くのは簡単です。しかし、個人事業主が事業の契約を相談する場合、名前は個人でも用件は事業に関わります。会社の代表者が自分の相続について聞く場合は、法人の代表という肩書があっても、相談したいのは個人の事柄です。従業員からの労働相談と、会社側からの人事・労務相談も、同じ語だけでは依頼者の立場が反対になり得ます。
サイト上の初期案内は、法律上の当事者や代理関係を自動で判定するものではありません。「お立場と相談内容を確認して担当から案内します」という受け皿を残し、事務所が扱う分野と相談可能な立場を弁護士に確かめてから各ページを作ります。受け付けられない可能性のある相談に「必ず対応」と書かず、確認後に連絡する範囲を示します。
相談者に自分で法的な分類名を選ばせるより、「ご自身・ご家族のことで相談したい」「事業の契約や取引について相談したい」「会社の相談先を継続して検討したい」など、読者が自分の状況を言える言葉が役立ちます。実際の取扱いと違う例を混ぜないよう、公開前に弁護士が例示を選びます。どのボタンにも当てはまらないときの一般受付も、同じ画面から見える位置に置きます。
企業の単発相談と顧問の検討を別のページにする
法人向けの入口を顧問契約ページへ直結すると、契約書の確認を一度だけ頼みたい会社には敷居が高くなります。逆に、継続的な相談体制を探す担当者を単発の予約フォームだけへ送ると、顧問の対象業務や相談方法を比較する材料が足りません。東京渋谷法律事務所は自所の顧問契約ページで、顧問契約を結ばないスポット依頼も可能と説明しています。これは一事務所の取扱例であり、全事務所に共通する受任条件ではありませんが、法人相談と顧問契約を同義にしない設計の参考になります。
企業の用件ページには、取扱分野、単発で相談できるか、最初に確認すること、担当窓口への道筋を載せます。顧問ページには、継続相談の対象、相談できる人、対象外となる業務、契約前の確認方法を、事務所の実際の提供内容に沿って書きます。料金や対応速度のように判断へ直結する項目は、明示できる条件と個別確認が必要な条件を分けます。制作会社が他所の料金表や「24時間回答」などを転用して埋めてはいけません。
単発相談のページを見た人が、相談内容によって継続支援を検討したくなることもあります。その場合は「顧問契約の内容を見る」と関連ページへ進めます。ただし、最初の問い合わせを顧問希望に書き換えたり、顧問契約が相談受付の前提であるように見せたりしません。反対に、顧問ページからも「特定の案件について相談したい場合」の行き先を用意します。双方を結ぶリンクは、契約の誘導よりも相談内容に合う情報への補助として置きます。
相談者・用件・窓口の対応図を先に作る

以下は、架空の法律事務所のサイトを設計するための編集図です。実在する事務所の取扱分野、利益相反の確認、受任条件、守秘義務の扱いを示すものではありません。右端の窓口名は、各事務所の受付体制を取材した後に置き換えます。
表は左右にスクロールして確認できます。
| 相談の場面 | 読者が最初に見る案内 | 次に確認するページ | 受付で確認する役割 |
|---|---|---|---|
| 自分や家族の事柄を相談したい | 個人のご相談 | 該当する取扱分野と相談の流れ | 個人相談の受付担当 |
| 事業の契約・取引を一件相談したい | 事業・企業のご相談 | 分野別の案内と単発相談の可否 | 企業相談の受付担当 |
| 継続的な法務相談先を検討したい | 顧問契約を検討中の方 | 対象業務、相談方法、契約前確認 | 顧問相談の受付担当 |
| 立場や分野を選びにくい | 相談先を迷っている方 | 取扱範囲と受付後の案内 | 振り分け可能な共通受付 |
表を完成させるには、まず事務所の既存の相談記録を個人情報を除いた分類だけで確認し、よくある用件と現在の受け渡し先を挙げます。次に、実際に受ける範囲、最初の確認で分ける事項、担当不在時の対応を弁護士・受付担当に聞きます。「企業相談」という大きな箱の中に、会社側の依頼しか扱わない分野と、個人側の依頼を扱う分野が混在していないかも確認します。制作側が相談記録の中身を見て法的分類を判断する必要はありません。
対応図では、行の数よりも行き先が確かであることを重視します。例えば、家族の問題を扱わない事務所に「個人のご相談」全般を置くと、期待と受付結果がずれます。事務所の取扱範囲が限られるなら、実際に受ける分野名と入口の文言をそろえます。後から新しい分野を追加する場合も、メニューだけ増やすのではなく、詳細ページ、受付窓口、確認担当まで一行を通して更新します。
迷う人の入口を「その他」で終わらせない
二つのボタンを選べない人のために「その他」を置くだけでは、相談してよいのか分かりません。一般受付を設けるなら「どの案内を見ればよいか迷う方はこちら」と目的を書き、受付後に担当者が取扱範囲を確認する旨を短く示します。すべての相談を受任する約束でも、法的見通しを答える窓口でもありません。事務所が一般受付を持たない場合は、無理に共通窓口を作らず、各案内の対象と問い合わせ条件をより明確にします。
例えば、役員が会社の契約について聞きたいときは企業の単発相談へ、役員個人の問題なら個人向けの取扱分野へ進める設計が考えられます。ただし、事情によって確認が必要な場合を、ボタンを押した時点で機械的に確定しません。個人事業主についても「個人」という表示名だけで家族法務の入口へ送るのではなく、事業に関する相談を選べる文言を用意します。画面の分岐は最初の案内であり、正式な受付判断ではないと理解できる表現にします。
問い合わせ画面へ進む前に、受付が何を確認して次にどう連絡するかを示します。ここで長い事情や資料の全文を必須にする必要があるかは、事務所が個人情報の取扱いと受付手順を確認して決めます。個人情報保護委員会のFAQは、ホームページの入力画面で本人から連絡先を直接取得する場合、原則として利用目的の明示が必要とし、取得の状況から目的が明らかな場合の例外も説明しています。記事では適法性を判定せず、各入口から同じフォームに進む場合でも、表示する利用目的と実際の取り扱いを弁護士・運用担当が確認する編集事項として扱います。
入口を分けるときは、スマートフォン上で共通受付が画面の最下部へ埋もれないかも確認します。主要な三つの行き先と「迷う方」を短い説明つきで表示し、どこからでも戻れる構成にします。問い合わせ前の案内が長いほど、肝心の窓口が見つけにくくなります。各詳細ページの末尾に同じ汎用ボタンを貼るだけでなく、そのページで読者が次に聞きたいことに合う窓口名を表示します。
各ページで約束する範囲をそろえる
トップページ、分野別ページ、顧問契約ページ、問い合わせの文言が食い違うと、どの案内を信じればよいか分かりません。トップに「企業のあらゆる法務に対応」と書き、詳細で限られた分野しか示していなければ、入口が広すぎます。顧問ページで「毎日いつでも相談できる」と書き、契約条件には営業時間内の対応とあれば、期待もずれます。制作時はページごとの見出しを並べ、取扱分野、相談対象、初回連絡、費用の説明が同じ条件を指すか照合します。
広告としての表現も事務所側の確認が必要です。大阪弁護士会の広告に関する案内は、虚偽や誤認を招く表示、過度な期待を抱かせる表示への注意を示しています。制作側は「必ず勝てる」「即日受任」「最安」など、根拠や条件を確認しない訴求を提案しません。実際に載せる分野名、実績、料金、対応時間、弁護士の肩書は、担当弁護士が確認した原稿と現行の案内を基にします。
写真や「相談事例」を使うときも、個人向けと企業向けで実例を流用しないようにします。架空の場面を図解に使うなら架空であることを示し、実際の依頼者や成果に見える書き方を避けます。事務所が公開できる事例の範囲や匿名化は弁護士の判断事項です。この記事の対応図は、実際の案件紹介ではなくサイトの案内を点検するための設計例です。
受付の運用まで含めて、三つの道筋を試す

公開前の確認は、デザイン画面を見るだけでは足りません。第一に、相続など個人の相談をしたい人が、対象分野の説明を読み、正しい窓口へ進めるか。第二に、企業担当者が契約書について一件だけ相談したいとき、顧問契約を前提にせず取扱いの可否を確認できるか。第三に、継続的な相談先を探す会社が、顧問の範囲と初回の相談方法を読み、担当へ連絡できるかを追います。架空の用件で画面を試し、実案件の情報は入力しません。
さらに、個人事業主の事業相談と、経営者個人の相談を「迷う人」の入口からたどります。受付担当が、どのページから来たかだけでなく相談者が選んだ用件を見て次の案内を決められるかを確かめます。担当が休みのときや、取扱外と分かったときの返信は、事務所の現行手順に沿って確認します。受付完了画面や自動返信で、予約確定・受任・秘密保持の扱いを制作側が独自に約束しないようにも見直します。
この点検表は公開後の更新にも使えます。取扱分野、担当窓口、顧問サービスの範囲が変わったら、対応図の一行に関連するトップの入口、詳細ページ、問い合わせ画面、返信文を順に直します。更新担当を一人だけにせず、業務内容を決める弁護士と実際に受ける受付担当の確認を経るようにします。見出しだけ差し替えて古い受付先が残る状態を防ぐためです。
改善後の確認では、個人向けページと企業向けページの閲覧数だけで良し悪しを決めません。入口から対象ページに進めたか、問い合わせの途中で迷う人がどの説明に戻ったか、受付担当に「違う窓口へ届いた」という相談が残るかを、個人を特定しない集計と現場の記録で確かめます。相談の内容や相手方の名前をアクセス解析へ送らない設計を運用担当が確認し、公開した導線と実際の受け渡しのずれを定期的に直します。数値が増えたことを受任や成果の増加と同一視せず、相談者が適切な案内へ進めたかを見ます。
参考資料
- 個人情報保護委員会 FAQ「ホームページ上の入力画面で連絡先を記入させる場合」(利用目的の明示と例外の説明。確認日:2026年9月23日)
- 東京渋谷法律事務所「顧問契約」(当該事務所における顧問契約とスポット依頼の案内例。確認日:2026年9月23日)
- 大阪弁護士会「弁護士に相談・依頼をするみなさまへ」(広告表現の確認事項。確認日:2026年9月23日)
- みやあじよ「法律事務所向けホームページ制作」(個人と企業の入口を含む制作支援範囲。確認日:2026年9月23日)


