人材会社のサイトでは、実際に扱う紹介・派遣のサービスに合わせて、企業と求職者の入口を分けます。トップページに「人材サービスのご相談」とだけ書き、企業も求職者も同じボタンへ進ませると、訪問者は次の画面で迷います。企業は直接採用する人を探したいのか、派遣を相談したいのか。求職者は紹介先の求人へ応募したいのか、派遣の仕事を探したいのか。入口で伝えるべきことが異なるのに、案内文とフォームが一つになっているためです。
厚生労働省の説明では、職業紹介は求人者と求職者の雇用関係の成立をあっせんするものです。労働者派遣では、派遣元と労働者に雇用関係があり、派遣先が指揮命令をします。サイトでは、長い制度説明にとどめず、誰が何を相談でき、次にどのページへ進むかを具体的に案内します。この記事では、人材紹介・派遣を実際に扱う会社が、自社のページ、メニュー、フォームを見直す方法を説明します。許可や契約の適用判断は、事業部門が管理する正式な資料で確認します。
「企業か求職者か」だけでは分け切れない
企業向けと求職者向けの二つの入口を作るのは出発点です。ただし、それぞれの中に紹介と派遣の目的があります。企業に「人材を探す」ボタンを一つだけ示すと、採用の相談と派遣の受入れ相談が同じ説明へ流れます。求職者に「仕事を探す」ボタンを一つだけ示すと、求人企業で働く紹介の流れと、派遣元に雇用されて働く流れが分かりません。
現在のサイトを点検するときは、次の四つの経路で、トップから完了画面までの案内を確認します。企業が紹介を相談する経路、企業が派遣を相談する経路、求職者が紹介の求人を探す経路、求職者が派遣の仕事を探す経路です。各経路で見えるサービス名、雇用関係の説明、応募・相談ボタンの文言、受信先を記録します。実際に提供していない経路は作りません。紹介予定派遣など別のサービスがあるなら、紹介と派遣の中間に曖昧に置かず、事業担当者が提供範囲と説明を確認してから専用の案内を検討します。
紹介・派遣の経路を対応図にする

現行のサービス資料、求人原稿、営業の説明資料を基に、企業・求職者それぞれの紹介と派遣について、説明と次の行動を確認します。下表はページを設計するための確認表であり、各社の契約条件や費用を示すものではありません。
表は左右にスクロールして確認できます。
| 訪問者とサービス | 最初に確かめたいこと | ページで説明すること | 次の入口 |
|---|---|---|---|
| 企業 × 紹介 | 自社採用の職種・地域を相談できるか | 取扱領域、紹介の流れ、企業が用意する求人条件 | 採用したい企業の相談 |
| 企業 × 派遣 | 必要な業務・期間・人数を相談できるか | 取扱領域、派遣の受入れまでの流れ、確認する業務条件 | 派遣を依頼する企業の相談 |
| 求職者 × 紹介 | 希望する求人を探し、紹介を受けられるか | 求人の対象、応募・相談の違い、紹介までの支援範囲 | 求人詳細から応募、または一般相談 |
| 求職者 × 派遣 | 派遣の仕事を探し、登録を相談できるか | 派遣元、就業までの案内、仕事検索と登録の関係 | 仕事検索から応募、または登録相談 |
この表で、サービス名とボタンの組合せが矛盾していないかを確認します。紹介の求人詳細から「派遣登録」だけへ進む、派遣の仕事一覧から「企業の採用相談」へ進むなど、ページの移動先がずれていれば修正対象です。「応募」と「登録」と「相談」も同じ意味ではありません。求人への応募では求人番号や職種を引き継ぎ、仕事が未定の相談では希望職種や地域から始めるなど、受信後の処理と一致するラベルにします。
対応図の四つのカードには、実際のURLを対応させて記録します。カードごとに、最初に見せるページ、詳しい説明、求人や事例の一覧、入力画面、送信後の案内、受信担当を一覧にします。たとえば企業向けの派遣ページから開いたフォームで「紹介を希望する」が初期値になっていれば、入口を分けた効果が失われます。各リンクをたどり、入力の初期値、戻ったときの状態、完了メールの内容まで確認します。URLが一つしかない場合は、必ずしも四ページを新設する必要はありませんが、画面内の見出しとボタンで経路が判別できる状態にします。
もう一つ確認したいのは、検索から直接求人詳細へ来る人です。トップの四枠を見ていなくても、その求人が紹介・派遣のどちらの案内に属するか、応募で何が始まるかを詳細ページ単体で判断できる必要があります。求人カードと詳細ページのラベルを同じ値にし、募集が終了している場合は応募先が残らないよう、求人の更新元と入口の対応を点検します。これは求人終了処理の全手順ではなく、サービス分類がページ間で失われないかの確認です。
厚生労働省は、職業紹介と単なる募集情報等の提供を区分して説明しています。サイトの原稿で「紹介する」「求人を掲載する」といった言葉を使う際は、自社が実際に行う行為と申込・受付の方法を事業担当者に照合してください。公開ページの言い換えだけで事業区分を決めることはできません。
企業は採用・派遣の依頼から選ぶ
企業向けの入口には、「直接採用する人材を探す」と「派遣を相談する」のように、読者の目的が分かる短い説明を置きます。両方を扱っていても、手数料や派遣料金、契約の流れを一枚に混ぜて「人材提供」と呼ぶと、どこまでが自社採用で、どこからが派遣なのか判断しにくくなります。営業資料の正式なサービス名と、サイトの平易な説明が同じ内容を指しているか確認します。
紹介のページでは、対応する職種・地域、求人条件の相談、候補者紹介までに確認する事項を示します。採用成功や紹介人数を根拠なく約束せず、費用や返戻金制度などは現行の契約資料と担当者の承認を受けて記します。派遣のページでは、依頼する業務、期間、人数、就業場所、受入れ体制など、企業側が最初に用意すると相談しやすい情報を案内します。料金を一律に出せない場合は、何を確認してから説明するかを示します。
二つの相談フォームを完全に別にするか、一つのフォームで分岐させるかは、受信後の担当とシステムによって決めます。共通の会社名・担当者・連絡先は一度だけ聞き、紹介では採用予定職種と必須条件、派遣では業務内容と希望期間を追加する設計が考えられます。「まだ区分を決めていない」企業には、困っている採用・人員配置の状況を伝えられる経路を残します。ただし、担当者の確認前にサービスや費用が確定したような完了表示にはしません。
求職者は働き方と目的から選ぶ

求職者向けの入口には、「紹介の求人を探す」「派遣の仕事を探す」を置き、該当する求人だけに進めるかを確認します。求人カードに雇用形態や掲載元が見えていても、詳細から進むフォームでその情報が消えると、本人は何に応募したか分からなくなります。検索結果、求人詳細、入力画面、確認画面、完了画面で、同じ求人番号とサービスの区分が引き継がれているかを試します。
仕事が決まっていない人には、求人への応募と別に一般相談や登録の入口を置きます。初回に必要な希望職種、地域、働き方、連絡方法から始め、詳細な職歴や書類の提出が必要な段階は実際の運用に合わせて案内します。紹介と派遣で面談、登録、選考、就業後の連絡先が異なるなら、同じ「登録後の流れ」にまとめず、サービスごとに説明します。登録だけで採用や就業が決まるような表現は避けます。
「派遣で働く」と書く場合は、誰と雇用関係があるかを確認できる案内が必要です。厚生労働省の解説は、派遣元が雇い主であり、派遣先が指揮命令する関係を説明しています。サイトの図では、企業向けの依頼と求職者向けの応募を単に線で結ぶだけでなく、雇用と就業の説明が混ざらないようにします。具体的な職種、期間、待遇、支援範囲は自社の求人情報と契約資料に照らし、別の会社の制度をコピーしません。
画面の文言と通知をそろえる
サイト全体では、上位メニューの「企業の方」「お仕事を探す方」から、それぞれ紹介・派遣のページへ進めます。ページの先頭には、そのサービスで相談できる対象と、提供していない範囲を短く示します。求人検索にはサービス区分を絞る方法を用意し、検索結果のゼロ件時も、条件を変えるか一般相談へ進む道を示します。自社の社員採用ページがある場合は、求職者向けの紹介・派遣求人と別の入口に置きます。
ボタンの言葉は遷移先の行動に合わせます。「詳しく見る」は説明ページへ、「求人へ応募」は特定の求人を引き継ぐ画面へ、「相談する」は担当者へ目的を伝える画面へ。企業と求職者のフォームを同じURLで受ける場合も、入力前と完了後にどの経路を選んだかを表示します。通知メールの件名や管理画面にも区分を引き継ぎ、法人担当、紹介担当、派遣担当の誰が一次返信するかを決めます。
複数のサービスを扱う会社では、「人材紹介/人材派遣」の区分と「企業/求職者」の区分をフォーム内部でも別項目にします。一つの選択肢に「派遣希望の企業」「紹介希望の求職者」などをすべて詰めると、新しい事業を追加したときに選択肢と通知の修正が複雑になります。表示上は四つの分かりやすい入口でも、受信データでは訪問者の立場、サービス、目的を分けて持つと、担当への振り分けを確認しやすくなります。既存システムで項目を増やせないなら、確認しやすい件名と専用フォームを使うなど、運用可能な構成を選びます。
個人情報を集める項目は、初回の相談に必要な範囲から決めます。自由記述欄には履歴書や詳細な個人情報を書かないよう案内し、資料が必要なら安全な受け取り方法と閲覧権限を確認します。送信前の確認画面では、応募先の求人と連絡先を読める形で示し、戻って修正しても選択したサービスが変わらないかを試します。問い合わせの種類だけを変えた結果、求職者の情報が企業窓口へ送られる設計は避けます。
掲載情報と更新先を確定する
原稿を作る前に、事業ごとの許可・届出情報、取扱職種、対応地域、費用と契約条件、求職者への支援、求人の更新元を一覧にします。これはサイト制作担当だけで確定するものではありません。紹介・派遣それぞれの責任者が現行資料を確認し、公開できる内容と確認先を決めます。実際に提供していない研修、支援、就業保証、企業の声を加えないようにします。
更新時にずれやすいのは、サービス一覧と個別ページ、求人検索の区分、フォームの選択肢、完了メールです。たとえば紹介の取扱職種を変更しても、求人カードのタグと法人向け説明が古いままなら、訪問者の理解はそろいません。原稿の正本、更新担当、反映する画面、確認日を一つの台帳で管理します。求人の募集終了そのものは別の更新手順で扱い、この記事では紹介・派遣のサービス入口との対応を点検します。
台帳には、サービスごとに「言い切れること」「個別確認が必要なこと」「載せないこと」を書くと原稿の承認が進みます。紹介で扱う職種や地域を実績と混同しない、派遣の受入れ条件を全職種へ一般化しない、相談中の企業名や求職者の属性を許諾なく事例化しない、といった線引きです。公開資料と営業資料に表現の差があるときは、サイト担当だけで解釈せず、事業責任者に正本を選んでもらいます。ページ上の説明、フォームの文言、担当者の返信文を、確認した内容にそろえてから公開します。
公開前の確認では、企業と求職者の各経路をスマートフォンで最後までたどります。紹介の求人から応募すると派遣登録へ飛ばないか、派遣の相談から法人営業へ正しく届くか、サービスが未定の人が行き止まりにならないかを確認します。画面を読む人だけでなく、キーボードでリンクと入力欄を移動する場合も試します。公開後は誤った窓口へ届いた件数と、区分の聞き直しが起きた箇所を記録し、次の修正に使います。効果の数値は現状を測ってから判断します。
参考資料
- 厚生労働省「募集情報等提供と職業紹介の区分について」(職業紹介の説明と募集情報等提供との区分を確認)
- 厚生労働省「さまざまな雇用形態」(労働者派遣の雇用関係と指揮命令を確認)
- 厚生労働省「労働者派遣事業・職業紹介事業・募集情報等提供事業等」(各事業の公的な案内先を確認)


