UXリサーチのBtoB実施方法[失敗しない進め方]

2025.12.17

中小BtoB企業のWebサイトは、展示の場ではなく「営業・採用・信頼形成」を支える業務ツールになりやすい一方、社内の思い込みで改修が進むと、伝えるべき価値が伝わらない状態が長期化しがちです。さらにBtoBでは、サイトが比較検討の社内共有資料として使われることも多く、説明不足や誤解があると検討の土俵に乗りにくくなります。
みやあじよでは、デザインを装飾ではなく問題解決として捉え、目的と成果から逆算して設計することを重視しています。

まず「なぜBtoBでUXリサーチが効くのか」と「実施前に決めるべきこと」「手法の選び方」を、経営判断に使える形に整理します。

BtoBのUXリサーチで得られる価値と、やるべきタイミング

BtoBの購買は、担当者だけでなく決裁者・利用部門など複数の関係者が関わり、検討期間も長くなりやすい特徴があります。そのためサイトは、単発の問い合わせ獲得だけでなく、比較検討に必要な情報提供と不安解消まで担う設計が必要になります。

BtoBで特に効きやすい3つの価値

ボトルネックとは、全体の成果を止めている主要な障害点のことです。
導線とは、ユーザーが目的の行動に至るまでのページ遷移やボタン配置の流れのことです。

  • 意思決定のブレを減らす
    社内の「言いたいこと」と、顧客が「知りたいこと」のズレを可視化し、優先順位を揃えます。
  • 改修の投資判断がしやすくなる
    どこがボトルネックかを特定できるため、改修範囲が絞れ、見積もりと期待効果の説明材料になります。
  • 営業現場の暗黙知をWebに移せる
    インタビューや観察で得た判断軸を、ページ構成・導線・コンテンツに反映できます。

成果につながる「判断材料」を増やすという意味

コンバージョンとは、問い合わせや資料請求など事業上望ましい行動のことです。
UXリサーチの価値は、コンバージョンの数だけを追うのではなく、途中で何が止まっているかを説明できる材料を増やす点にあります。たとえばBtoBでは、次のような「検討の前進」を作ることが重要になります。

  • 料金・導入プロセスを読んでもらい、不安を減らす
  • 事例や実績で、自社に近い条件での再現性を伝える
  • 社内稟議で説明しやすい比較軸を提示する

実施タイミングの目安

要件定義とは、制作で実現する内容と範囲を決める工程のことです。

  • リニューアル前:要件定義の前段で行うと、作るべき情報と順序が明確になります
  • 運用改善中:問い合わせはあるが質が安定しない場合、比較検討の不安点が見つかりやすいです
  • 新規事業・新サービス:ターゲット像が固まり切らない段階で、仮説の検証に役立ちます

なお、UXリサーチは大規模に始める必要はなく、目的に対して最小の調査で仮説を確かめ、次の打ち手に接続する設計が現実的です。

実施前に決めること 目的・仮説・対象・範囲・成果物

ここが曖昧だと、調査結果が増えても意思決定につながりにくくなります。経営者・事業責任者が押さえるべき論点は次の5つです。

1 目的

KPIとは、目標達成度を定量的に追うための指標のことです。
目的は「問い合わせを増やす」だけでなく、商談化率・採用応募・資料請求など最終成果までのどこを改善したいかまで置きます。

2 仮説

仮説とは、現状の課題と原因についての暫定的な説明のことです。
例としては「専門用語が多く初見で理解されにくい」「導入事例が弱く不安が残る」など、検証できる形にしておくと調査が収束します。

3 対象者

対象者は、理想の顧客だけでなく、失注した層・競合比較中の層なども含めると判断材料が厚くなります。BtoBは募集が難しいため、既存顧客・メルマガ読者・展示会名刺など、接点のある母集団を優先して設計します。

4 範囲

範囲は「サイト全体」か「特定の導線」かを先に決めます。
例:トップ→サービス→料金→問い合わせ、または採用ページだけ、など。

5 成果物

成果物は、実務で使える形に固定します。

  • 課題リスト(重要度と根拠つき)
  • 改善の優先順位(費用感と期待影響の整理)
  • 計測設計の叩き台(何をどこで測るか)

兼任体制で破綻しにくい「事前の棚卸し」

リサーチ前に、社内にすでにある情報を集めるだけでも、調査の焦点が合いやすくなります。具体例は次の通りです。

  • 営業資料、提案書、見積もりでよく出る質問
  • 失注理由のメモ、競合比較で負けやすい点
  • サポート・問い合わせ対応の履歴、よくある不安
  • 展示会やウェビナーでの反応、よく刺さる説明

みやあじよが大切にしているのは、依頼者が「やりたいけど分からないこと」を言語化し、伝えるべき価値を整理して提案に落とすことです。

手法の全体像 定性と定量、BtoB向けの選び方

定性調査とは、少人数の観察やインタビューから理由や背景を深掘りする調査のことです。
定量調査とは、アンケートやアクセスデータなど数で傾向を把握する調査のことです。
BtoBでは「人数が集めにくい」制約があるため、まず定性で仮説を絞り、必要な範囲だけ定量で裏取りする組み立てが進めやすいです。
また、専門性が高いほど前提知識の幅が出るため、理解の段差を掴む目的で定性調査が効きやすいです。

目的別の手法選定(BtoB向け)

目的手法負荷の目安得られるアウトプット
まず現状を把握するアクセス解析低〜中離脱箇所、流入経路、閲覧傾向
伝わり方を深掘りするユーザーインタビュー判断軸、不安点、比較観点
使いづらさを特定するユーザビリティテスト中〜高迷いの発生点、改善案の根拠
全体傾向を確認するアンケート重要視点の分布、優先度の裏付け
早期に改善案を出す専門家レビュー重大な欠陥候補、改善の当たり

アクセス解析とは、サイトの閲覧データを分析して行動の傾向を把握することです。
ユーザーインタビューとは、対象者に話を聞き、意思決定の理由や不安を把握する調査のことです。
ユーザビリティテストとは、実際の操作を観察し、迷いや誤解が起きる箇所を特定する評価のことです。
専門家レビューとは、経験者が一定の観点で画面や導線を点検し、課題候補を洗い出す評価のことです。

この時点で重要なのは、手法の選択そのものより「成果物がサイト改善に接続するか」です。次のPartでは、準備から実査、分析、意思決定までを、兼任体制でも回る手順に落とし込みます。

実施手順 準備から実査、分析、示唆、意思決定まで

BtoBのUXリサーチは「調べること」よりも「次の意思決定につなげること」が目的です。実務で破綻しにくい流れは、最初に成果物を固定し、そこで必要な最小の調査だけを実行します。

1 現状把握 既存データと社内知見を集める

まずは社内にある材料を集め、仮説の精度を上げます。アクセス解析、問い合わせログ、営業の提案資料、失注理由メモ、よくある質問などが対象です。ここで「誰が・何に迷い・何が不安で止まるか」を言葉にします。

2 リサーチ設計 目的・仮説・質問・成果物を1枚にまとめる

リサーチ設計書とは、調査の狙いと方法、質問項目、成果物を1枚で共有する資料のことです。兼任体制では、設計書がないと途中で論点がずれて工数が増えやすくなります。最低限そろえる項目は次の通りです。

  • 調査目的と、意思決定したい論点(例:サービス説明をどう組み替えるか)
  • 対象者の条件(業種、役職、導入経験の有無など)
  • 実施手法と回数(例:インタビュー6名、簡易テスト3名)
  • 成果物(課題リスト、優先順位、改善方針、計測の叩き台)

3 対象者募集 BtoBは「母集団の見立て」が8割

スクリーニングとは、対象者条件に合う人を事前質問で選ぶことです。BtoBは母集団が小さいため、既存顧客・過去リード・展示会接点・パートナー企業など、接点がある層から設計します。インセンティブとは、協力への謝礼のことです。金額よりも「所要時間を守る」「目的と守秘を明確にする」ほうが参加率に効きます。

4 実査 インタビューと観察は「録る」「残す」「同じ型で回す」

実査とは、実際に対象者に話を聞いたり操作を観察したりすることです。インタビューは録音・録画を前提にし、発言の根拠が後で追える状態にします。ユーザビリティテストでは、想定導線に沿ったタスク(やってもらう操作)を用意し、迷いが出た場所を時系列で記録します。担当者が変わっても品質が落ちないように、質問順と深掘りの観点をテンプレ化します。

5 分析 「発言」を「判断材料」に変換する

インサイトとは、行動の背景にある意思決定の理由を要約した示唆のことです。分析では、発言をそのまま並べず「なぜそう感じたか」「何が比較軸か」を抽象化します。BtoBでは特に、導入の不安(稟議、運用負荷、既存システムとの整合)と、評価の軸(価格、実績、サポート、セキュリティ)が繰り返し出ます。ここをサイト構成に落とせる粒度まで整理します。

6 意思決定会議 改善の優先順位を決めて次の工程に渡す

リサーチの終点はレポートではなく、意思決定です。経営者・事業責任者が参加する短い会議で、次を確定させます。

  • 課題の優先順位(影響の大きさ×実現難度)
  • 直近で直す範囲(例:サービスページと導線)
  • 追加で必要な情報(例:価格ページの要件、事例の追加取材)
    この段階で、制作や運用改善のタスクに落とし込み、担当と期限を置くと「聞いて終わり」を防げます。

体制設計 兼任でも回る役割分担と外部支援の使い分け

BtoBのリサーチは、現場を知る人の協力がないと浅くなります。一方で、全員を集め続けると進みません。最小の役割を決め、関与の濃淡を設計します。UIとは、画面やボタンなどユーザーが触れる接点のことです。PMとは、進行と調整を担う担当者のことです。CSとは、既存顧客の利用や継続を支援する部門のことです。みやあじよでは、目的達成を前提にコンセプト設計と集客設計、UI/UX設計を同列に考える方針を重視しています。

体制と役割分担

役割主なタスク必要スキル外部支援が有効な場面
責任者(経営/事業)目的確定、優先順位決定事業判断合意形成が難しい時の整理
推進役(兼任PM)日程、素材収集、関係者調整進行管理進行が滞る、工数が足りない
リサーチ担当設計、実査、分析、示唆化調査設計/質問力初めてで品質担保が不安
現場協力(営業/CS)募集、事前情報共有顧客理解募集が難しい、質問が偏る
制作/運用担当改善案の具体化、実装設計/制作改善に落ちない、要件が曖昧

外部支援を入れる判断基準

外部支援は「作業の代行」ではなく「意思決定の質を上げる補助」として使うと効果的です。例えば次の状況では、外部が入ることで手戻りを減らしやすくなります。

  • 社内の意見が割れており、第三者の整理が必要
  • 対象者募集の導線が弱く、設計から見直したい
  • リサーチ結果を要件定義やコンテンツに落とす経験が不足
  • 制作と運用まで一気通貫でつなげたい

費用と期間 見積もりの考え方と投資判断の作り方

UXリサーチの費用は、成果物の粒度と、調査の回数・難易度で決まります。固定の「相場」を探すより、見積もりの構造を理解したほうが判断が速くなります。

見積もりを分解する

一般的に費用は次の工数の合計で組み立てられます。ワークショップとは、関係者が同じ場で整理と意思決定を行う進行型の会議のことです。

  • 設計:目的整理、質問設計、募集設計
  • 実査:インタビュー/テストの実施、記録
  • 分析:要約、論点整理、優先順位化
  • 合意形成:報告会、ワークショップ(意思決定支援)
    ここに、対象者募集の難しさ(業界の専門性、決裁者の確保)や、成果物の範囲(全体設計まで踏み込むか)が上乗せ要因になります。

期間の見立て

期間は「募集」と「関係者の意思決定」の2点で伸びやすいです。短期間で回すなら、募集先を既存接点に絞り、会議回数を最小にします。逆に、新規ターゲットで検証したい、複数部門を巻き込む、改修範囲が広い場合は長くなります。目安は、準備〜実査〜整理までを一続きで扱い、間を空けないことです。

見積もり依頼で確認するポイント

比較表とは、条件を並べて差分を見える化する表のことです。見積もりの妥当性は金額だけでは判断しにくいため、次の観点で比較表を作り、社内説明に使える形にします。

  • 対象者条件と人数(誰の声を根拠にするか)
  • 募集方法と責任範囲(誰が声をかけ、日程調整するか)
  • 記録と共有(録画の有無、文字起こしの範囲、データ保管)
  • 成果物の形式(優先順位、改善方針、要件への落とし込み方)
  • 改修への接続(制作や運用改善の会議が含まれるか)

投資判断の作り方

TCO=導入後の運用費も含めた総コスト、という考え方です。SEOとは、検索エンジンで見つけてもらうための施策のことです。リサーチは制作費とは別に見えますが、手戻り削減と優先順位の明確化でTCOを下げる投資になり得ます。判断材料としては、次をセットで整理すると稟議が通りやすくなります。

  • いまの課題(失注要因、問い合わせの質、説明不足の箇所)
  • リサーチで得る成果物(優先順位、要件、計測設計)
  • その後の打ち手(制作、保守運用、SEO、改善サイクル)
  • 実施しない場合のリスク(誤った改修、機会損失、合意形成の長期化)

失敗とトラブルを避ける 守秘、募集、バイアス、情報管理

NDA(秘密保持契約)とは、業務上知り得た情報を第三者に漏らさない約束を文書化したものです。
個人情報とは、氏名や連絡先など個人を特定できる情報のことです。
BtoBのUXリサーチは「社内事情」「取引条件」「業務フロー」が話題に出やすいため、守秘と管理を先に整えるほど進行が安定します。

守秘とデータ管理で押さえる要点

匿名化とは、個人や企業が特定できないよう情報を加工することです。

  • 目的と利用範囲を明記し、録画・録音の扱いと保管期限を決める
  • 共有物は要約を基本にし、原本データは閲覧権限を限定する
  • 社内の共有資料は匿名化し、社名・人物が推測できる表現を避ける

募集の詰まりを防ぐ段取り

スクリーニングとは、事前条件に合う対象者を選ぶための確認のことです。
募集文面に「所要時間」「話す範囲」「守秘」を入れ、日程調整は推進役が一元管理します。対象者が集まりにくい場合は、既存顧客と過去リードから着手し、比較検討中の層は次段で扱う設計が現実的です。

結論が歪む原因への対策

バイアスとは、無意識の偏りで判断が一方向に寄る現象のことです。
誘導質問とは、特定の答えに寄せる聞き方のことです。
誘導質問を避け、事実(何を見て、どこで止まったか)と解釈(なぜ止まったか)を分けて記録します。発言の根拠を残し、反対の声も同じ重さで扱うことで、社内合意に耐える材料になります。

リサーチ結果をサイト改善へ 要件定義、コンテンツ、導線、計測設計

改善に落とすときの翻訳ルール

  • 課題を「情報不足」「不安」「比較しにくい」「手間」の4類型に分ける
  • 各課題に「根拠の発言」「対象者の条件」「影響する導線」をひも付ける
  • 改善案はUIだけでなく、ページ順序・見出し・事例・料金表現など情報設計まで含める

イベント計測とは、ボタン押下やフォーム開始など行動を計測する設定のことです。
改善は実装で終わらせず、計測設計までセットにすると、次の改善の材料が蓄積します。

課題から改善とKPIに落とす対応表

課題カテゴリ改善施策例主要KPI計測方法
情報不足導入手順、運用イメージ、よくある質問を追加重要ページの閲覧完了スクロール、滞在、クリック
不安実績の提示、サポート範囲、契約前後の流れを明確化問い合わせ率フォーム送信、電話タップ
比較しにくい料金の前提条件、選定基準、他方式との差を整理資料請求率資料ダウンロード、遷移計測
手間ナビゲーション整理、導線短縮、フォーム項目の最適化フォーム完了率開始→送信の離脱

KPI設計と効果測定 問い合わせから商談までの指標設計

ファネルとは、認知から問い合わせ、商談までを段階で捉える考え方です。
BtoBは最終成果まで時間がかかるため、途中の前進を示すKPIを置くと意思決定が早くなります。

指標は「量」と「質」を分ける

  • 量:問い合わせ数、資料請求数、電話タップ数
  • 質:有効問い合わせ率、商談化率、成約につながる属性比率
    CRM(顧客管理)とは、リードから商談までの情報を一元管理する仕組みのことです。
    サイト側の行動データとCRM側の結果をつなぐと、改善の優先順位が事業目線で定まります。

改善サイクルの運用イメージ

月次で「仮説→小改修→計測→判断」を回し、四半期で情報設計とコンテンツを更新する形が中小企業では運用しやすいです。保守運用とアクセス解析を継続し、リサーチで得た判断軸を積み上げると、改修が場当たりになりにくくなります。

制作・保守・運用改善の相談に向けたチェックリスト

制作や運用改善の相談を、短い時間でも前に進めるための準備項目です。

  • 事業目的と優先順位(売上、問い合わせ、採用のどれを上げたいか)
  • 主要ターゲットの条件(業種、役職、導入状況)
  • 現状の課題仮説(どこで止まっていると考えるか)
  • 既存データ(アクセス解析、問い合わせ内容、営業での質問)
  • 制約(更新体制、予算枠、公開時期、社内承認の流れ)

まとめ

BtoBのUXリサーチは、対象者確保と情報管理の難しさがある一方、意思決定の質を上げて改修の手戻りを減らす効果が期待できます。目的と成果物を先に固定し、定性で仮説を絞り、改善と計測まで一気に接続する設計が重要です。Webサイト制作・リニューアル、保守運用、SEO、アクセス解析、運用改善は分けて考えず、同じ目的のための手段として統合すると、経営判断が速くなります。

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