採用広報のためのオウンドメディア戦略の進め方

2025.01.20

採用広報でオウンドメディアが必要になる背景

採用広報=「自社で働く価値」を社外に伝え、応募や選考の納得度を高める活動です。オウンドメディア=自社が所有・運用し、継続的に情報を蓄積できるメディア(例:採用ブログ、社員ストーリー、働き方コンテンツ)を指します。

中規模の中小企業では、採用活動が「人事だけの仕事」になりやすい一方で、採用競争は大企業・スタートアップ・地域企業まで同じ候補者層を取り合います。その結果、求人媒体の掲載費や紹介手数料が増えやすく、「出稿を止めると応募が止まる」状態に陥りがちです。

採用サイト単体では埋めきれない“検討の材料”

採用サイトは「結論(募集要件・魅力・応募)」を短い動線で提示する場として強い反面、ページ数や滞在時間には限界があり、候補者の不安や比較検討の論点をすべて載せるのは難しいのが実情です。そこで、オウンドメディア側に「根拠(具体・事例・ストーリー)」を置き、採用サイト側に「判断と行動」を置くと、役割が整理されます。

候補者がよく迷うのは、待遇の良し悪しよりも「入社後のリアルが想像できるか」です。たとえば、配属の決まり方、評価の運用、育成の手触り、日々の仕事の進め方、チームの雰囲気。これらは求人票の枠では書きづらい一方、記事形式なら具体例として提示できます。

デザインは装飾ではなく“採用の詰まり”を解く設計

ここでいうデザインは、見栄えの調整ではありません。何が問題で、誰のどの不安が応募を止めているのかを定義し、解決へ導く設計です。初見でメッセージやストーリーが伝わる構成を確認し続ける、という姿勢が採用広報では有効です。

補足:採用マーケティング=候補者を「認知→興味→応募」へ進めるために、情報設計と届け方を最適化する考え方です。オウンドメディアはその中核になりやすい施策です。短期の応募獲得は媒体や広告が得意、継続的な候補者の納得形成はオウンドメディアが得意、という住み分けで考えると判断しやすくなります。

戦略設計:ターゲット・提供価値・メッセージ

戦略の最初にやるべきは「採用の目的を具体化」することです。目的が曖昧だと、記事テーマもサイト導線も散らかり、更新が止まりやすくなります。たとえば「応募を増やす」ではなく、「どの職種の、どの経験レベルを、どの時期までに」まで落とすと、必要な情報の粒度が決まります。

次に、ターゲットを“候補者の意思決定単位”で分けます。ターゲット=その制作物(ここでは採用広報)において、情報を届けたい相手像です。職種が同じでも、転職理由(成長/安定/家庭)や検討軸(裁量/報酬/場所)で響く材料が変わります。ここを混ぜると、記事が平均点になり、応募の質が上がりません。

「提供価値」を一文に圧縮して、全コンテンツの背骨にする

提供価値=「候補者が入社後に得られる具体的な良い変化」です。ここが言語化できないと、UI/UX設計(UI=画面の見た目や操作要素、UX=利用体験の設計)の前提が崩れます。言葉にできない表現は、社内にも社外にも伝わりにくい、という原則を置いてください。

メッセージ設計は、次の3点セットでブレを防げます。

  • コンセプトキーワード:価値を表す短い単語(例:成長、専門性、顧客密着)
  • キャッチコピー:価値を文章で伝える見出し
  • 証拠(エビデンス):記事・数字・制度・事例など、言い切りを支える根拠
    エビデンス=主張の裏付けとなる材料のことです。

戦略フェーズで決めるアウトプット

この段階で合意しておくと、制作が速くなります。

  • 募集優先順位:まず採りたい職種・経験帯の順番
  • 候補者の不安リスト:応募を止める論点の棚卸し
  • メッセージマップ:主張と根拠の対応表
  • コンテンツの柱:何をどれだけ語るかの配分
  • レビュー基準:どこまで公開してよいか、誰が最終判断するか

経営・人事が合意しやすい「メッセージマップ」

メッセージマップ=伝えるべき主張と根拠を整理した設計図です。作るときは、「候補者の不安」起点で並べるのがコツです(例:成長できる?→任せ方の方針+育成事例、評価は納得できる?→評価基準+フィードバックの運用)。
「やりたいけどわからないことの言語化」を先にやると、企画会議が短くなり、制作も進みます。

コンテンツ企画:テーマ設計と編集方針

コンテンツ企画では、まず候補者の“検索・比較の瞬間”を起点に設計します。おすすめは「よくある質問」を、応募前・選考中・入社前の3段階に分けて棚卸しし、重要度順に並べる方法です。人事が答えられること、現場が語れること、経営が語るべきことを分けると、取材設計も楽になります。

企画の柱は「仕事・人・文化・条件」

迷ったら、コンテンツを4つの柱に分けます。

  • 仕事:何を、どの水準で、どう進めるか(職種別・プロジェクト別)
  • 人:誰と働くか(社員インタビュー、マネージャーの考え)
  • 文化:何を大事にするか(意思決定、評価、コミュニケーション)
  • 条件:働き方・制度(リモート、育成、福利厚生の“運用”)

編集方針=発信の基準(言い回し、トーン、公開判断、NG項目)です。採用広報では、良く見せることより「入社後に確認されるポイントを先に出す」ほうが、ミスマッチ(入社前後で期待と実態がズレること)を減らし結果的に採用単価(採用1人あたりにかかった費用)を下げやすくなります。背伸びした表現は短期的に応募を増やしても、選考の歩留まり(選考の各段階で次に進む割合)や定着で回収できないことがあるためです。

また、記事は単体で完結させず、採用サイトの応募導線につなげる前提で設計します。カジュアル面談=選考前の相互理解面談です。オンボーディング=入社後の受け入れ・育成プロセスです。CTA=記事を読んだ人に次に取ってほしい行動を促す導線(例:募集要項を見る、面談を申し込む)です。CTAが曖昧だと「読まれたが応募につながらない」状態になります。

取材を“資産化”して更新を回す

更新が止まる主因は、毎回ゼロから企画することです。1回の取材から「記事」「要点まとめ」「採用サイトの追記」「SNS投稿」まで再利用できる形にすると、運用負荷が下がります。コンテンツカレンダー=公開予定を一覧化した運用表を作り、月1回の見直しで優先順位を調整する運用が現実的です。公開後は、読まれた記事を起点に次の企画を決めると、テーマが深掘りされます。

目的読者(候補者像)コンテンツ例CTA
認知会社を初めて知った層事業紹介・社会的意義採用トップを見る
不安解消条件は合うが迷っている層評価制度・働き方・育成募集要項を見る
期待づくり仕事内容を深く知りたい層職種別の1日/プロジェクトカジュアル面談
意思決定内定前後の層キャリア事例・オンボーディング応募/エントリー

採用導線設計:採用サイト・求人票・応募までのつなぎ方

採用広報のオウンドメディアは「読まれる」だけでは成果になりません。成果=応募や相談など、サイトに設定した目的の達成です。
ここで重要なのが導線設計で、導線=候補者が迷わず次の行動へ進める流れを指します。記事を増やしても応募が増えないケースの多くは、「記事→次の一歩」が弱いか、採用サイト側の情報が不足している状態です。

採用サイトとオウンドメディアの役割分担

採用サイトは、募集職種・要件・選考フロー・待遇などの意思決定に必要な情報を、短い距離で提示する場です。一方でオウンドメディアは、意思決定を後押しする根拠(具体・背景・ストーリー)を積み上げる場です。
この2つのメッセージがズレると、候補者は不信感を持ちます。初見で「この会社は何を大事にしているか」が伝わる構成をこまめに確認し、言葉で整理できない状態のまま見た目を整えない、という順序が安全です。

求人票・スカウト文面との整合

求人票やスカウト文面は、候補者が最初に接触する情報になりやすい入口です。入口で提示した魅力(例:裁量、育成、働き方)が、記事や採用サイトで裏付けされる構造にします。入口は強い言葉、本文は根拠、という関係が崩れると、クリックはされても応募前に離脱します。

代表的な導線パターン

CTA=記事を読んだ人に次に取ってほしい行動を促す導線です。

  • 認知記事 → 採用トップ(会社の全体像)
  • 職種記事 → 募集要項(条件の確認)
  • 文化記事 → 社員ストーリー一覧(納得材料の追加)
  • 仕事内容の深掘り記事 → カジュアル面談(相互理解の場)
  • 不安解消記事 → よくある質問(論点を一気に解消)

ポイントは「記事の結論」と「遷移先の冒頭」がつながることです。たとえば記事で“育成が手厚い”と書いたなら、遷移先で育成の運用(誰が・いつ・何を)まで確認できる必要があります。逆に言えば、採用サイトの不足情報をオウンドメディアで埋めるのではなく、採用サイト側の核となる情報は先に整備します。

計測できる導線にする

UTMパラメータ=流入元や記事を識別するためにURLへ付与する情報です。記事末尾のボタンやリンクに付与すると、どの記事が募集要項閲覧や応募開始に寄与したかを把握しやすくなります。
また、マイクロコンバージョン=最終成果(応募)に至る前の小さな到達点(例:募集要項閲覧、フォーム到達)です。応募数だけを追うと改善が遅れるため、マイクロコンバージョンも設計しておくと打ち手が増えます。
加えて、イベント計測=クリックやフォーム到達などの行動を記録する計測です。記事末尾のCTAクリック、募集要項のスクロール到達、フォーム開始などを取れると、導線のどこが詰まっているかが見えます。

運用体制:内製と外注の役割分担、編集プロセス

運用で詰まりやすいのは「誰が決めるか」「誰が書くか」「誰が最終責任を持つか」が曖昧な状態です。更新が止まると資産が積み上がらず、投資回収が長期化します。そこで、役割を先に固定し、迷いどころをルール化します。

体制を選ぶ基準

属人化=特定の担当者に依存して運用が回らなくなる状態です。工数=作業に必要な時間や人の量です。手戻り=やり直しが発生することです。
内製はスピードと現場の解像度が強みですが、属人化や品質ばらつきが起きやすい傾向があります。外注は一定品質で継続しやすい一方、社内の情報提供が細ると中身が薄くなります。ハイブリッドは両方の良いとこ取りを狙えますが、分担を間違えると工数が二重化し、手戻りも増えます。

体制強み注意点向く状況
内製現場のリアルを反映しやすい属人化・品質ばらつき編集が得意な人材がいる
外注一定品質で継続しやすい情報提供が不足すると弱い社内工数を抑えたい
ハイブリッド素材は社内、制作は外で効率化分担が曖昧だと手戻り現場協力は得られる

編集プロセスの最小セット

編集プロセス=企画から公開・改善までの一連の流れです。おすすめは最初から完璧を狙わず、月次で回る“最小セット”を作ることです。

  • 企画会議:採用課題と優先職種からテーマを決める
  • 取材設計:質問票・撮影カット・事前共有を準備する
  • 制作:執筆・編集・デザインを進める
  • レビュー:事実確認、表現、権利、公開可否を確認する
  • 公開:採用サイトや求人票からも辿れるように配置する
  • 振り返り:閲覧だけでなく導線到達を見て改善する

みやあじよの制作方針では、目的→コンセプト→集客方法とUI/UX設計を同列に設計し、手段に固執せず「問題解決」を優先します。採用広報でも同様に、更新頻度や表現方法より、候補者の不安を解くために何が必要かを基準にします。
また、デザイナーの役割には「やりたいけどわからないことの言語化」や、ストーリーに合わせた提案が含まれます。コンテンツの型(見出し構成、質問テンプレート、レビュー観点)を先に作ると、体制が変わっても運用が継続しやすくなります。

費用と投資判断:予算配分と総コストの考え方

投資判断では、初期費用だけでなく運用も含めた総コストで考えます。TCO=導入後の運用費も含めた総コストです。オウンドメディアは運用で価値が積み上がるため、初期だけ厚くして運用が薄いと失速します。

費用が発生する主な要素

  • 戦略設計:ターゲット、メッセージ、導線、KPIの設計
  • 基盤整備:採用サイト改修、CMS設定、テンプレート作成
    CMS=記事を管理・公開する仕組みです。
  • コンテンツ制作:取材、執筆、編集、撮影、図解
  • 配信・改善:解析設定、レポート、改善提案、内部導線の改修

配分イメージとしては、立ち上げ期は「基盤整備」と「制作」に比重が寄り、運用期は「制作」と「改善」に比重が移ります。採用単価改善を狙うなら、改善(導線と訴求の見直し)を予算に組み込み、作りっぱなしを避けます。

投資対効果を説明する枠組み

投資対効果=投資に対して得られた成果の大きさです。採用広報では、短期の応募数だけに頼ると判断がブレるため、次の3層で説明すると合意が取りやすくなります。

  • 先行指標:募集要項閲覧、フォーム到達、面談申込
  • 中間指標:選考通過率、辞退率の変化
  • 結果指標:応募数、採用数、採用単価

母集団=採用活動で接触できる候補者の人数や層のことです。求人媒体や紹介に依存しすぎると費用は変動しやすく、停止すると母集団が急減します。オウンドメディアは即効性に限界がある一方、積み上がった記事が“いつでも説明できる状態”を作り、採用導線の安定化に寄与します。経営判断では、短期施策と積み上げ施策を分け、両方を同じ表で管理できる形にすると投資の優先順位が付けやすくなります。

リスクとトラブル対策:炎上・法務・ミスマッチを防ぐ

採用広報のリスクは、大きく「法務・権利」「情報の正確性」「期待値のズレ」に分けられます。最初にルールを整備すると、更新が止まらず、社内レビューも早くなります。

ルール化しておくべき4領域

  • 守秘義務:社外秘の情報(未発表の施策、取引先名、顧客情報など)を出さない範囲を明文化する
  • 個人情報:氏名・顔写真・経歴など、本人が特定される情報の取り扱い基準を決める
  • 権利:写真・イラスト・文章の著作権や肖像権の確認手順を固定する
  • 表現:誇張・断定が強い言い回しを避け、事実と解釈を分けて書く

ミスマッチを防ぐ書き方

ミスマッチ=入社前後で期待と実態がズレることです。これを減らすには、綺麗な結論だけでなく「前提条件」もセットで書きます。たとえば「裁量が大きい」なら、任せるまでの条件(経験、期間、支援の仕組み)を併記します。採用サイトとオウンドメディアのメッセージが揃っていることが、候補者の納得に直結します。

炎上リスクを下げる運用

炎上=発信が誤解や反感を招き、批判が拡散する状態です。対策は「判断のスピード」を上げることに尽きます。公開前にチェック観点(NG表現、比較表現、誤認の余地)を用意し、公開後は一次対応の責任者と上位判断先(経営/広報/法務など)を決めておくと、現場が迷いません。

成果とKPI設計:計測の仕組みと改善サイクル

KPI=目標達成に向けて追う重要指標です。採用広報では「応募数」だけを追うと改善が遅れるため、上流から下流まで指標を分解し、どこが詰まっているかを見える化します。

アクセス解析=サイト上の行動(閲覧・クリック・離脱)を計測して改善につなげる取り組みです。ATS=応募者の進捗を管理する採用管理システムです。FAQ=よくある質問をまとめたページです。記事は資産なので、公開後の改善で成果が伸びる余地が大きいのが特徴です。

フェーズ指標例取得方法改善の打ち手
認知自然検索流入、記事閲覧アクセス解析テーマ追加、タイトル改善
理解滞在・回遊、関連記事クリックイベント計測内部導線、構成見直し
検討募集要項閲覧、フォーム到達クリック/到達計測CTA文言、遷移先改善
応募応募開始、完了率フォーム計測/ATSフォーム短縮、FAQ追加
採用面談設定率、通過率、採用単価採用管理データ記事拡充、訴求調整

相談前チェックリスト:要件整理と優先順位の付け方

採用広報の相談を「制作依頼」で終わらせず、応募増と採用単価改善につなげるには、要件を先に揃えるのが近道です。以下の項目が揃っているほど、提案の精度が上がります。

  • 優先職種と採用人数、採用したい時期
  • 競合(比較されやすい企業)と候補者の検討軸
  • 自社の強み候補(制度ではなく運用・実態)
  • 採用サイトの現状(ページ構成、募集要項の情報量)
  • オウンドメディアの目的(認知/不安解消/意思決定のどこを厚くするか)
  • 協力者(現場・経営)の確保状況と、月あたりの取材可能本数
  • レビュー体制(最終責任者、法務・広報の関与)
  • 既存素材(写真、社内資料、評価制度資料、研修資料)
  • 計測環境(アクセス解析、イベント計測、流入判別の設計)
  • 改善の頻度(毎月/隔月など)と意思決定の場

優先順位は「採用の緊急度が高い職種」×「候補者の不安が強い論点」×「社内で語れる材料の多さ」で決めると、最短で成果につながります。

まとめ

採用広報のオウンドメディア戦略は、記事を増やすこと自体が目的ではありません。ターゲットと提供価値を言語化し、コンテンツを候補者の不安解消に合わせて設計し、採用サイトの導線と計測を整えることで、応募の質と量を安定させます。
そのうえで、運用体制・費用配分・リスク管理・KPIを一体で設計すると、求人媒体や紹介への依存度を下げながら、採用単価の改善に取り組めます。みやあじよでは、採用サイト制作、採用導線設計、コンテンツ企画、アクセス解析・改善まで一貫して「問題解決」を軸に支援できます。

週に1回、ちょっと役立つ
WEB系メルマガをお届けします。

当社では企業のWEB・EC担当者の方に向けてウェブ制作やデザイン、SEOやマーケティングに関する最新情報を週1回配信しています。
ぜひインターネットビジネスの業務改善や課題解消にお役立てください!

〈配信内容〉
・ウェブサイトのアクセス数をアップするための対策情報
・ウェブ業界の最新情報
・ウェブサイト制作に活用できる補助金情報
・ウェブを活用した採用活動に役立つ情報

カテゴリー

アーカイブ

サービス