採用マーケティング KPIの設計ガイド

2025.01.13

採用マーケティングのKPIが「応募→採用」で重要になる理由

採用を強化している中規模の企業ほど、「応募は来るのに採用が決まらない」「決まるが採用コストが上がる」という状態が起きやすくなります。原因の多くは、採用活動を“応募獲得”で止めてしまい、採用決定までの工程を数字でつなげていないことです。

KPI=目標達成度を測る指標です。採用マーケティングの文脈では、広告やSNS、求人媒体、自社採用サイトなど複数チャネルが混在しやすく、部分最適のまま進むと投資判断がぶれます。たとえば「サイト流入は増えた」「応募数は増えた」だけでは、現場の面接工数や紹介手数料、離脱・辞退の増加まで含めた経営判断につながりません。

そこで「応募→採用」の一連をファネル(ファネル=候補者が興味喚起から採用に至るまでの段階を、漏斗のように分解して捉える考え方)として扱い、工程別にKPIを置きます。こうすると、どこが詰まっているかが明確になり、サイト制作・導線設計・コンテンツ企画・選考運用のどこに手を入れるべきかを、会話ではなくデータで合意できます。

みやあじよではデザインを装飾ではなく「問題解決の設計」と捉え、まず目的を具体化し、打ち手の優先順位を決める前提で進めます。採用領域でも同じで、見た目の刷新より先に「何が止まっているか」を特定する設計が投資効率を左右します。

応募→採用ファネルの分解と、工程別KPIの定義

応募を増やす施策だけを積むと、母集団は増えても採用に結びつかないことがあります。工程を分解すると、改善策の方向が変わるためです。基本形は次の流れです。

認知・興味(採用情報に触れる)→理解(職種・条件・魅力を理解する)→行動(応募する)→選考(書類・面接を通過する)→意思決定(内定承諾)→入社

ここで重要なのは、サイト側のKPIと選考側のKPIを切り離さないことです。コンバージョン(コンバージョン=サイト上での目的行動、採用なら応募完了)だけ見ても、書類通過率が低ければ現場負荷が増え、採用単価が悪化します。採用単価=採用1名あたりにかかった総コスト(媒体費、広告費、紹介手数料、制作・運用費、人件費の一部など)です。

データの置き場は、アクセス解析(アクセス解析=サイトの閲覧・行動データを分析し改善点を見つける取り組み)とATS(ATS=応募者管理システム)に分かれます。GA4(GA4=Googleが提供するアクセス解析ツールの一つ)で「誰がどのページを見て応募したか」を追い、ATSで「その応募者が採用に至ったか」を追います。両者をつなぐ設計がKPI設計の土台です。

指標定義算出方法主なデータ元
採用ページ到達数採用関連ページを閲覧した回数ページ表示回数/ユーザー数アクセス解析
募集職種ページ閲覧率採用トップ閲覧者のうち職種詳細まで進んだ割合職種ページ閲覧者 ÷ 採用トップ閲覧者アクセス解析
応募導線クリック率応募ボタン等のクリック割合応募導線クリック ÷ 職種ページ閲覧者アクセス解析
フォーム開始率応募フォーム入力を開始した割合フォーム開始 ÷ 応募導線クリックフォーム/アクセス解析
応募完了率フォーム開始者のうち送信完了した割合応募完了 ÷ フォーム開始フォーム/アクセス解析
有効応募率要件に合う応募の割合(社内定義)有効応募 ÷ 応募数ATS/選考記録
書類通過率書類選考を通過した割合書類通過 ÷ 書類選考対象ATS
面接通過率一次/最終など各面接の通過割合通過者 ÷ 受験者ATS
内定承諾率内定者のうち承諾した割合承諾 ÷ 内定ATS
採用までの期間応募〜入社決定までの日数入社決定日 − 応募日ATS

KPIは多ければ良いわけではなく、経営が動かせる“レバー”に絞ります。たとえば採用サイト改善の初期は「応募完了率」と「有効応募率」の組み合わせが効きやすく、後者が低い場合は、訴求や要件の書き方、導線の前段(職種理解・期待値調整)に課題がある可能性が高くなります。

みやあじよが重視しているのは「やりたいが言語化できていないことを整理し、伝わるストーリーにする」ことです。採用でも、魅力が社内に埋もれているとKPI改善の打ち手が出ません。まず“何を伝えるべきか”を言葉にし、その上で導線とコンテンツを設計します。

KPI設計の手順(現状把握→目標→施策→計測)

KPIは、指標の一覧を作って終わりではありません。意思決定に使えるKPIにするには、現状把握→目標→施策→計測の順で、因果がつながる形に落とします。

  1. 現状把握:直近3〜6か月の応募数、採用数、辞退理由、採用チャネル別の採用単価を整理します。ここで数字が揃わない場合は、まず定義(応募数に重複があるか、媒体経由の扱いはどうするか)を統一します。
  2. 目標設定:採用人数・期限・職種ごとに、採用に必要な応募数を逆算し、工程別に“許容される通過率”を置きます。逆算の前提が粗いとKPIが機能しないため、職種難易度や選考スピードも同時に見ます。
  3. 施策設計:ボトルネックがサイト側なら導線・コンテンツ・フォームを、選考側なら面接設計・連絡速度・期待値調整を優先します。
  4. 計測設計:アクセス解析とATSをつなぐために、流入元の識別(UTM等)や応募フォームの計測イベントを整え、定例で見るダッシュボード(ダッシュボード=複数KPIを一覧で可視化する画面)にまとめます。

次のパートでは、どのKPIを優先すると採用が伸びやすいかを、ボトルネック別に整理し、費用と体制の組み立て方まで具体化します。

効果の見立てと優先順位(どの数字を動かすと採用が伸びるか)

採用KPIで迷いが出やすいのは、「どの指標を上げれば採用が増えるのか」が見えづらいからです。ここは数式に落とすと判断が速くなります。概念的には、採用数は次の分解で考えられます。

採用数 ≒ 応募数 × 有効応募率 ×(各工程の通過率)× 内定承諾率

ボトルネック=全体成果を最も制約している工程・要因です。まずは工程を「量・質・速度」の3軸で見て、詰まり方の種類を確定させます。

  • 量:そもそも応募母数が足りない(流入・職種ページ到達・応募完了が不足)
  • 質:要件に合う応募が少ない(有効応募率が低い)
  • 速度:選考が長い(選考リードタイム=応募から内定承諾までにかかる時間が長い)

優先順位を決めるときの現実的なルールは3つです。

  1. 影響の大きい上流から見る
    上流の改善は母数が大きいぶん波及が大きくなります。ただし、有効応募率が低い状態で応募数だけ増やすと、現場の面接工数が増えて採用単価が悪化しやすいので、量と質はセットで判断します。
  2. 施策の可逆性(戻せるか)で並べる
    可逆性=やってみて合わなければ戻せる度合いです。文言・CTA(CTA=次の行動を促すボタンやリンクの呼びかけ)・フォームの必須項目調整は戻しやすく、検証サイクルを回しやすい一方、サイト全面改修や写真撮影を伴う刷新は後戻りしづらいので、根拠(データと仮説)を厚めにしてから着手します。
  3. 「伝える順番」を整えてミスマッチを減らす
    採用サイトの役割は応募を増やすだけでなく、期待値調整(期待値調整=入社後の役割や条件の理解を揃えてミスマッチを減らすこと)で辞退や早期離職の芽を減らすことにもあります。「全体を俯瞰し、ページを通して伝えたいメッセージやストーリーが初見で伝わる構成」を採用文脈に置き換えると、職種理解→不安解消→応募の順で情報を並べることが、KPI改善の近道になります。

次の表は、ボトルネック別に「数字の出方→原因仮説→打ち手→見る指標」を整理したものです。サイト改善と選考改善が混ざっていますが、採用は一連でつながっているため、同じ表で管理するのが実務では扱いやすいです。

兆候(数字の出方)原因仮説施策例(サイト/導線/選考)見る指標
職種ページ閲覧率が低い採用TOPから職種に進めない、分類が分かりづらいナビ・導線整理、職種一覧の見せ方改善職種ページ閲覧率
応募導線クリック率が低いCTAが弱い、応募前の不安が残る選考フロー・FAQを近くに配置、CTA文言/位置調整応募導線クリック率
応募完了率が低いフォームが長い、入力負荷、スマホ不具合必須項目削減、入力補助、完了までの見通し提示フォーム開始率・応募完了率
有効応募率が低い訴求が広すぎる、条件の誤解仕事内容・期待役割・条件の明確化、職種別ページ強化有効応募率
書類/面接通過率が低い母集団の質、評価基準のぶれ要件定義の更新、スクリーニング質問、評価票整備通過率・辞退理由
内定承諾率が低い魅力が比較で負ける、連絡遅延オファー前後の情報設計、連絡スピード改善内定承諾率・選考期間

費用と投資判断(内製・外注・ツール・制作のコスト構造)

採用サイト改善の費用は「制作費」だけ見てしまうと判断を誤りやすい領域です。TCO=初期費用だけでなく運用費も含めた総コストとして捉え、採用単価との関係に落とします。

採用単価(概念式)=(媒体費+広告費+紹介手数料+制作/運用費+社内工数の一部)÷ 採用数

見積もりを比較するときは、費目を4つに分けるとズレが減ります。SEO=検索エンジン経由の流入を増やすためにサイトやコンテンツを最適化する取り組みです。

  • 基盤:CMS(CMS=ページを更新する仕組み)やテンプレート整備、保守
  • 集客:SEO・広告・SNSなど流入を作る施策
  • 変換:導線・フォーム・計測整備など応募完了までの最適化
  • 継続:コンテンツ追加、アクセス解析、改善提案の運用枠

ポイントは、採用サイトは“資産化”しやすいことです。職種ページ、社員インタビュー、選考フロー、FAQなどは一度整えると更新しながら使い回せます。一方で求人媒体や紹介は、採用が止まると費用対効果も止まりやすい性質があります。どちらが良い悪いではなく、採用計画(採用計画=いつまでに何名をどの職種で採るかの計画)と役割分担を揃えて投資配分します。

投資判断の軸は次の3つに整理すると、経営会議で説明しやすくなります。

  • 限界費用:採用1名を追加で獲得するために増える費用
  • 時間価値:採用の遅れが事業機会に与える影響(欠員による売上機会損失など)
  • リスク低減:ミスマッチ由来の辞退・早期離職を減らせるか

実務上の進め方としては、まず小さな改修で計測と導線を整え、数字が動く箇所(レバー=動かすと結果に大きく影響する調整ポイント)を特定してから、コンテンツ拡充やページ追加に投資する順番が安全です。

体制と進め方(役割分担、運用フロー、定例で見る指標)

採用KPIは、人事だけで完結させるほど成果が不安定になりやすいです。理由は、候補者が知りたい情報の多くが「現場の仕事の実態」にあるからです。そこで体制は、少人数でも回る形に絞ります。

  • 経営(または事業責任者):採用の優先度・予算・採用要件の最終決定
  • 人事責任者:KPI設計、選考運用、改善の意思決定を進める
  • 現場責任者:要件定義、面接評価、コンテンツ素材(仕事の実態)の提供
  • 採用担当/広報:記事・SNS・撮影調整など発信の実務
  • 外部パートナー(制作/解析):導線設計、ページ制作、計測設計、改善提案

運用フローは、PDCA=計画・実行・検証・改善を繰り返すサイクルで設計します。会議体は増やさず、見る指標を固定し、意思決定の粒度を揃えるのがコツです。

  • 週次(30分):応募数・有効応募率・選考リードタイムの確認、詰まりの共有
  • 月次(60分):職種ページ別の応募率、流入元別の質、コンテンツ追加/改修の決定
  • 四半期:職種要件と訴求の棚卸し、採用サイトの構成見直し

制作・改善を外注する場合でも、社内が担うべき役割は「言葉の材料」を出すことです。みやあじよが強みとしている“やりたいが言語化できていないことの整理”を支えるためにも、現場の事実(どんな成果を出す人が活躍しているか、なぜ続けられるか)を短時間で引き出し、ページのストーリーに落とす設計が重要になります。

リスクとトラブル予防(計測不整合、個人情報、現場負荷)

採用KPIは「測れない」「数字が合わない」「現場が疲弊する」の3つで止まりがちです。先回りして設計しておくと、改善の意思決定が安定します。

計測不整合を防ぐ

  • 「応募」「有効応募」「採用」の定義を固定し、集計ルールを文書化する
  • ATSとアクセス解析の切り口(職種/拠点/媒体)を揃え、外部ATS遷移は計測テストを行う

個人情報と運用事故を防ぐ

  • 応募フォームの入力項目は採用判断に必要なものへ絞り、閲覧権限を最小化する
  • 解析ツールや計測タグは社内規程・プライバシーポリシーと整合させ、管理部門の確認を挟む

現場負荷と選考品質の低下を防ぐ

  • 応募数だけで評価せず、有効応募率・通過率・辞退理由をセットで見る
  • 期待値調整の情報(仕事内容の現実、評価ポイント)を職種ページ側で補強する

採用サイト改善で成果につなげる実務チェックリスト

「どこから手を付けるか」を迷わないために、実務で漏れやすい点をチェックリスト化し、“目的の具体化→コンセプト→集客とUI/UX”の順番に沿って並べています。

目的・KPI

  • 職種別の採用人数と期限、必須要件が言語化されている
  • 応募→採用の工程KPIを、同じ定義で週次・月次に見られる

コンテンツと導線

  • 職種ページに「期待役割」「評価ポイント」「選考フロー」「FAQ」が揃っている
  • CTAの位置・文言が職種ページごとに最適化され、スマホで応募完了まで詰まらない
  • フォーム必須項目が最小化され、途中離脱が把握できる

ボトルネック別の打ち手一覧

前パートで提示した一覧は、下記の表に差し替えて利用できます。

兆候(数字の出方)原因仮説施策例(サイト/導線/選考)見る指標
職種ページ閲覧率が低い採用TOPから職種に進めない、分類が分かりづらいナビ・導線整理、職種一覧の見せ方改善職種ページ閲覧率
応募導線クリック率が低い応募前の不安が残る、CTAが弱い選考フロー・FAQの配置、CTA文言/位置調整応募導線クリック率
応募完了率が低いフォームが長い、入力負荷、スマホ不具合必須項目削減、入力補助、完了までの見通し提示フォーム開始率・応募完了率
有効応募率が低い訴求が広すぎる、条件の誤解仕事内容・期待役割・条件の明確化、職種別ページ強化有効応募率
通過率が低い母集団の質、評価基準のぶれ要件定義の更新、評価票整備、スクリーニング質問通過率・辞退理由
内定承諾率が低い比較で負ける、連絡遅延オファー前後の情報設計、連絡スピード改善内定承諾率・選考期間

施策別コストと運用負荷の比較

施策カテゴリ初期コスト感運用負荷向く状況
計測整備(イベント/導線の可視化)小〜中数字が合わず意思決定が遅い
フォーム改善(項目・UI)応募完了率が低い
職種ページ再設計(要件・訴求)有効応募率が低い/ミスマッチが多い
コンテンツ拡充(社員紹介等)中〜大中〜大比較検討で負ける/承諾率が伸びない

まとめ

採用マーケティングのKPIは、応募数だけでなく採用決定までを工程でつなげることで、投資判断と改善の優先順位が明確になります。導線・コンテンツ・選考運用を同じ地図の上で改善し、数字で合意できる状態を作ることがポイントです。

相談時に整理しておくと進めやすい情報は、職種別の採用人数・期限・必須要件、チャネル別コストと採用数、ATSのステータス定義、採用サイトの現状構成と応募導線です。

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