サイト改修の優先順位付けをROIで決める方法

2024.11.11

なぜサイト改修は「優先順位付け」が難しくなるのか

改修テーマが増える構造を先に理解する

サイト改修が迷走しやすい理由は、課題が「顕在化しているもの」だけでなく、「まだ言語化されていないもの」まで一気に噴き出すからです。たとえば営業は「説明に時間がかかる」、マーケは「流入が伸びない」、経営は「投資の回収が見えない」と別々の不満を持ちます。つながりが整理されないまま要望を足すと、改修リストは肥大化します。

BtoBは効果が遅れて現れる

BtoB、とくに検討期間が長い商材では、サイトを見てすぐ相談に至る割合が高くありません。事例・技術資料・比較情報を読み、稟議=社内で承認を得る手続きが回り、複数回接触してから問い合わせに至ります。結果として「改修→翌月に問い合わせが増えた」といった単純な因果で語りづらく、優先順位付けが感覚に寄りがちです。

計測と導線が未整備だと投資判断ができない

改修の成果を追えない典型は、計測が途切れていることです。アクセス解析=訪問データの分析が整っていない、問い合わせ以外の中間行動が見えない、営業の商談データとつながっていない。これではROIの議論が成立しません。優先順位付けは「作業を並べる」ではなく、「意思決定できる情報を揃える」作業から始まります。ここを省くと、改修後に「効果が分からない」が繰り返されます。

ROIの前に「目的」と「KPI」を揃える

目的は“サイトの目的”として具体化する

ROIを扱いたくても、目的が曖昧だと比較できません。会社の目標をそのまま置くのではなく、“サイトに担わせる役割”に落とすことが要点です。たとえば売上が目的でも、サイトの役割は「初回相談を獲得する」「資料請求を増やす」「指名検索を増やす」などに分解できます。役割が定まると、必要な改修も絞られます。

KPIは「最終」と「途中」をセットで持つ

コンバージョン=サイト上での最終的な成果行動(例:問い合わせ送信)だけをKPIにすると、BtoBでは判断が遅れます。そこでマイクロコンバージョン=最終成果の手前の行動指標(例:料金ページ閲覧、事例の閲覧、資料ダウンロード)を併記します。途中KPIを置くことで、改修の効果を早めに検知し、次の打ち手に反映できます。

「誰のどんな不安を解消するか」を言葉にする

優先順位付けで見落としがちなのが、メッセージの整理です。BtoBのサイトは機能説明よりも「この会社に任せてよい理由」を伝える比重が大きい領域です。強み・実績・体制・品質保証など、相手の不安を解消する要素が、ページを通して一貫して伝わるかを確認します。言葉にできない状態のまま装飾やレイアウトだけ整えても、商談に効く情報になりません。

改修候補の洗い出し:データと現場情報を統合する

データで「詰まり」を特定する

まずは現状把握です。アクセス解析で流入元、閲覧ページ、離脱箇所、問い合わせまでの経路を確認し、どこで“次の行動が止まっているか”を特定します。合わせてSearch Console=検索結果での表示回数やクリックを把握するツールで、狙うべき検索テーマと、既存ページの改善余地も洗います。

ここでは、ファーストビュー=ページを開いた直後に見える範囲のメッセージが弱い、直帰率=1ページだけ見て離脱した割合が高い、といった兆候が判断材料になります。

営業・顧客接点の情報で「不足」を補う

次に、定量データだけでは見えない論点を補います。営業がよく受ける質問、失注=受注に至らず案件が終わることの理由、比較される競合、導入の決め手。これらはコンテンツや導線の優先順位に直結します。サイトは“営業効率を上げる前段”として設計すると、投資説明がしやすくなります。

改修候補を同じ粒度で並べる

最後に、施策を同じフォーマットに落として比較可能にします。ページ追加、導線変更、計測整備など粒度が違うまま並べると、議論が噛み合いません。狙うKPIと根拠、想定工数を揃えて棚卸しします。工数は時間を断定せず、相対(小・中・大)で置くと合意が取りやすくなります。SEO=検索エンジンからの流入を増やすための最適化です。内部リンク=サイト内ページ同士をつなぐリンクです。

改修候補狙うKPI根拠となるデータ(例)想定工数(目安)
サービス訴求の整理(ファーストビュー)マイクロコンバージョン(詳細閲覧)直帰率が高い
事例ページの再設計(課題→解決→効果)問い合わせ率、資料ダウンロード事例閲覧は多いが相談に届かない
資料請求の導線追加(記事・事例から)資料ダウンロード数閲覧が増えても問い合わせが伸びない小〜中
フォームの項目最適化・エラー改善フォーム完了率入力途中離脱が多い
計測の整備(イベント・目標設定)分析精度施策ごとの効果が追えない小〜中
SEOの土台改善(タイトル・内部リンク)検索流入、クリック率表示はあるがクリックが少ない

この棚卸しができると、次にやるべきことが明確になります。各候補を「期待効果」「確度」「工数」「リスク」で並べ、経営判断に耐える優先順位へ落とし込みます。

優先順位付けの評価軸:効果・確度・工数・リスクで並べる

改修候補が出そろったら、次は「比較できる評価軸」に落とします。ここでのポイントは、会議で点数を付けること自体ではなく、経営と実務が同じ判断基準で合意できる状態を作ることです。スコアリング=複数の評価項目を点数化し、総合点で比較する方法です。

4つの軸で整理するとROIに近い議論ができる

優先順位を決める軸は次の4つにまとめるとブレが減ります。

  • 期待効果(インパクト):KPIに与える影響の大きさ
  • 確度:効果が出る根拠の強さ
  • 工数:実装・制作・確認に必要な負担
  • リスク:検索・計測・運用で起き得る悪影響

期待効果は大きく見積もりがちです。そこで確度を別軸にして「根拠が薄い大きな期待」を上位に上げ過ぎないようにします。工数は費用とほぼ連動しますが、社内工数も外注費もまとめて負担として扱うほうが投資判断に向きます。リスクは発生確率と影響度を分けて考えると、関係者の納得が取りやすくなります。

期待効果を「売上換算の材料」まで分解する

ROIの議論を前に進めるには、期待効果を売上の言葉までつなぐ材料が必要です。ここでいう材料は、問い合わせ数だけではありません。問い合わせから商談化、商談から受注に至る割合、平均的な粗利など、社内で既に持っている実績値を置きます。数値が取れていない場合は、先に計測や営業データの整理に投資するほうが、次の改修判断が速くなります。投資判断で迷ったときは「将来の意思決定コストを下げる改修」を上位に置くのが合理的です。

評価項目見る観点判断の目安注意点
期待効果KPIへの寄与、対象ページの露出量流入や閲覧が多い経路ほど影響が出やすい大きさの議論だけだと楽観に寄る
確度課題仮説の裏付け、代替案の有無データと顧客接点の両方で裏付くと高い希望的観測を根拠に混ぜない
工数制作量、レビュー回数、関係部署の調整小・中・大の相対で合意しやすい将来の運用負担も含めて見積もる
リスク検索順位、計測欠損、セキュリティ、法務事前検証と切り戻し手順があると下げられる発生確率と影響度を分けて評価する

確度を上げる材料としては、アクセス解析の数字、営業が持つ失注理由、問い合わせ内容の傾向、ユーザビリティテストの4つを揃えると判断が速くなります。ユーザビリティテスト=利用者に操作してもらい迷いを観察して課題を見つける調査手法です。

点数より「上位グループ」を作る

スコアを厳密に付けても、意思決定が早くなるとは限りません。実務では、上位に来た施策をさらに「短期に効かせる群」「中期で積み上げる群」に分け、時系列の実行計画に落とすほうが運用しやすいです。ロードマップ=施策を時系列に並べた実行計画です。
検討期間が長い商材では、短期施策だけで戦うと頭打ちになります。一方で中期施策だけだと結果が見えず投資継続が難しくなります。2つを混ぜる設計が経営判断として安定します。

見栄え優先にならないためのチェックポイント

デザインの刷新は社内の満足度を上げやすい反面、KPIに結び付かないこともあります。みやあじよではデザインを「問題解決」と捉え、目的に対して表現や手段を選ぶことを重視しています。
この観点で、改修案が「誰の不安を減らし、どの行動を増やすか」を一文で説明できるかを確認します。説明が難しい案は、目的と手段が入れ替わっている可能性が高いです。

施策別の考え方:SEO・コンテンツ・導線設計をどう比較するか

同じ「サイト改修」でも、SEO、コンテンツ、導線設計は効き方が異なります。施策を比較するコツは、入口・納得・行動の3段で役割を分けることです。

SEOは「入口」を増やす施策

検索意図=検索する人が解決したい用件や知りたい内容です。SEOは検索意図に合うページを用意し、検索結果からの訪問を増やします。入口が増えると母数が増えるため中長期で効きますが、効果が出るまでの時間が読みづらい側面があります。優先度を上げる判断材料は、狙うテーマの検索需要と、自社が勝てる根拠(事例、専門性、一次情報)です。サイト構造やURLを大きく変える改修は検索への影響も出やすいので、変更範囲と検証手順をセットで計画します。URL=ページの住所となる文字列です。

コンテンツは「納得」を積み上げる施策

リード=将来の顧客になり得る見込み客情報です。BtoBのサイトは、リードが「相談してよい会社か」を判断する材料が必要です。事例、料金の考え方、比較ポイント、導入までの流れなどが不足していると、入口があっても前に進みません。
コンテンツ改修の評価は、閲覧数だけでなく、資料ダウンロードや事例閲覧などの途中KPIで進捗を見ます。

導線設計は「行動」を増やす施策

CVR=訪問者のうち成果行動に至った割合です。導線設計は、既に来ている訪問者が迷わず行動できる流れを作ることでCVRを押し上げます。フォーム項目の削減、CTAの配置、関連ページへの内部リンクの整理などが対象になります。CTA=次の行動を促す要素です(例:ボタンや導線リンク)。入口の増加に比べて影響範囲が限定される代わりに、確度が高い改善になりやすいのが特徴です。

3施策を同じ土俵に載せる「入口×納得×行動」

優先順位を付ける際は、次の観点で同じ表に載せると議論が早くなります。

  • 入口:狙う流入の増加余地があるか(SEOが中心)
  • 納得:比較検討の不安を減らせるか(コンテンツが中心)
  • 行動:今ある需要を取りこぼしていないか(導線が中心)

入口が弱いのに導線だけ整えても伸び幅は限られます。反対に入口が十分あるのに納得と行動が弱い場合は、早めに改善しないと機会損失が積み上がります。自社の現状がどこに偏っているかを先に判定し、重点を決めます。

費用感の作り方:見積もりが割れるポイントと前提条件

サイト改修の費用は「何をどこまでやるか」で大きく変動します。見積もりが割れる主因は、ページ数よりも、設計の深さと実装の難易度が見えにくい点にあります。投資判断に耐える形にするには、金額の大小よりも「コスト要因を分解して比較できる状態」を先に作ります。

まず分解するべきコスト要因

代表的には次の要素に分かれます。

  • 戦略・要件整理:目的、KPI、優先順位、仕様の確定
  • 情報設計:ページ構成、導線、内部リンク、ナビゲーションの設計
  • UI/UX設計:画面設計と体験設計(UX=利用者が得る体験の全体像)
  • 実装:CMS改修、フォーム、計測、速度改善など(CMS=更新を管理する仕組み)
  • コンテンツ:原稿、事例、図解、撮影など
  • 移行・保守:URL変更時の転送、検証、運用引き継ぎ

特に「情報設計」と「実装」の範囲が曖昧だと、同じ改修テーマでも費用の幅が広がります。TCO=導入後の運用費も含めた総コストの観点で、初期だけでなく運用負担も比較します。

見積もりが割れるポイント

  • テンプレート化の度合い:ページごとに作るのか、共通部品で運用するのか
  • 既存資産の再利用:文章・画像・事例を流用できるか、作り直しか
  • 計測の要件:どこまで行動を可視化するか、同意管理の設計を含むか
  • URL変更の有無:転送設定と検証が必要になるか
  • 関係部署のレビュー:法務・セキュリティ・営業などの確認回数

費用を抑えるために設計を省くと、改修後に追加改修が増えやすく、結果としてTCOが上がります。逆に、全体刷新を急ぐと学習が遅れ、ROIの説明が難しくなります。ここは「優先順位付けの結果に沿って段階投資にする」ほうが経営判断として安定します。

コストの内訳(概算)期待効果の仮説実行体制と留意点
計測整備中心計測設計・イベント設定:小〜中ROI判断の精度が上がり、次の投資が速くなるマーケ主導で運用ルール整備、実装は外部で可
導線改修中心CTA・フォーム・内部リンク:小〜中既存流入の取りこぼしが減り、短期KPIが改善営業の要望を吸い上げつつ、変更範囲を限定する
コンテンツ拡充中心事例・比較・技術資料:中検討中の不安が減り、商談化しやすいリードが増える現場知見が必要、制作だけ外注にしても進みにくい
構造改修+複合情報設計・テンプレ改修:中〜大入口〜行動までの一貫性が上がり、中長期で伸びる検索影響と移行検証が重要、段階リリースが有効

体制の組み方:意思決定者・実行者・レビュー役の役割分担

優先順位が決まっても、役割が曖昧だと途中でブレます。RACI=責任分担を整理する枠組み(実行責任/説明責任/相談先/報告先)で、誰が決め、誰が作り、誰がチェックするかを先に固定します。

最小構成でも押さえる役割

  • 最終意思決定:経営者、事業責任者(目的と投資の優先度を決める)
  • 推進責任:マーケ責任者(KPI設計、施策判断、社内調整)
  • 現場知見:営業責任者(顧客課題、失注理由、必要資料の整理)
  • 運用窓口:Web担当者(更新、計測の維持、改善サイクルの定着)
  • 実行支援:制作・開発パートナー(設計、制作、実装、検証)

体制でリスクを下げる運用ルール

  • 変更管理:何をいつ出すかを一覧化し、切り戻し手順も決める
  • 計測管理:改修前後で指標の定義を変えない、変更時は記録する
  • レビュー基準:文言、導線、セキュリティの観点をチェックリスト化する

みやあじよでは、表現や手段よりも目的に対して最善を選ぶことを重視し、体制面でも「誰の何を解決する改修か」を言葉で揃えると、判断のブレが減ります。

進め方:小さく検証しながら学習するロードマップ

改修は一度で完成させるより、検証しながら積み上げるほうがROIを説明しやすくなります。A/Bテスト=2つの案を同条件で比較し、成果の高い方を採用する検証方法です。

段階投資の基本形

  • フェーズ1:計測の整備と、導線の小改修で短期KPIを改善
  • フェーズ2:勝ち筋のテーマに絞ってコンテンツを拡充し、SEOの入口を育てる
  • フェーズ3:成果が見えた領域から情報設計とテンプレートを整え、運用効率も上げる

検索と計測のトラブルを避ける要点

URLを変える場合は、301リダイレクト=旧URLを新URLへ恒久的に転送し検索評価を引き継ぎやすくする設定を前提に、リリース前後で主要ページの検証を行います。計測は改修前に基準値を保存し、改修後は同じ定義で比較します。これにより「伸びた・伸びない」を説明可能な状態に保てます。

まとめ

サイト改修の優先順位付けは、施策を並べることではなく、ROIで意思決定できる情報を揃えることから始まります。目的とKPIを揃え、改修候補を同じ粒度で棚卸しし、期待効果・確度・工数・リスクで比較すると、SEO・コンテンツ・導線の選び方が整理されます。費用はコスト要因を分解してTCOで捉え、体制は役割と運用ルールを先に固定し、段階投資で検証しながら進めると、経営判断のブレが減ります。みやあじよでは、Web戦略策定、SEO、コンテンツ設計、アクセス解析、サイト改善まで一貫して支援し、目的から逆算して「やること・やらないこと」を明確にした改修計画を作ります。

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