GA4計測設計とデータ品質で意思決定を強くする

2024.10.07

なぜ「GA4のデータ品質」が経営課題になるのか

GA4とは、Webサイトの行動データを計測して分析するためのGoogleの解析ツールです。
データ品質とは、欠損・重複・誤分類が少なく、同じ条件なら同じ解釈ができる状態です。

経営者・事業責任者が困るのは「施策の良し悪し」そのものより、良し悪しを判断できない状態が続くことです。たとえば、問い合わせ数が月によって急に増減する、広告とSEOを比べたいのに条件が揃わない。SEOとは、検索エンジンからの流入を増やすための最適化です。こうなると、改善のスピードが落ち、意思決定の根拠が弱くなります。

BtoBは母数が少ない分、重複や欠損の影響が大きくなります。まずは再現性のある数字に整えることが、最短の改善ルートになります。

数字がズレると起きる3つの損失

1つ目は、投資配分の誤りです。成果が過大に見えるチャネルに予算を寄せ、実際に伸びるチャネルを見落とすリスクが高まります。
2つ目は、現場の学習が止まることです。仮説検証(仮説検証=仮説を立て、データで確かめ、次の打ち手に反映する一連の流れです。)が回らないと、打ち手が属人的になります。
3つ目は、社内の信頼コストです。「数字が信用できない」状態は、マーケだけでなく営業や経営の協力を得にくくし、改善の推進力を削ぎます。

みやあじよが制作で重視しているのは、表現よりも目的達成に直結する“問題解決”です。計測も同じで、見栄えの良いレポートより先に「何を成果とし、何を根拠に意思決定するか」を決める必要があります。

計測設計の全体像:目的→指標→イベント→検証の順で考える

計測設計とは、目的に照らして「何を」「どのルールで」計測し、意思決定に使える形に整える設計です。
KPIとは、目的達成度を測るための重要指標です。

順番を誤ると、設定は終わっていても判断に使えません。目的→指標→イベント→検証の順に、成果物を先に言葉で固めます。成果物が揃うと認識ズレが減ります。

1) 目的:Webサイトで「何を増やすか」を具体化する

BtoBでは「問い合わせ」でも質が違います。たとえば、採用問い合わせと営業問い合わせ、既存顧客のサポート連絡が混ざると、数字は増えても事業成果に直結しません。まずは成果の定義を切り分け、増やしたい成果を明確にします。

2) 指標:経営が見る指標と現場が動かす指標を分ける

トップ指標は少なく、現場指標は行動に落ちる形にします。例として、経営は「月次の有効問い合わせ数」、現場は「重要ページ到達率」や「フォーム到達率」を見る、という切り分けです。ダッシュボード(ダッシュボード=指標を定点観測できるように可視化した画面です。)も、この役割分担があると継続しやすくなります。

3) イベント:成果に関係する行動だけを計測する

イベントとは、クリックや送信などユーザー行動を記録する単位です。
コンバージョンとは、問い合わせ送信や資料請求など成果につながる行動です。

「計測できること」ではなく「判断に必要なこと」から逆算します。イベントが増えすぎると運用が破綻し、少なすぎると改善が止まります。最初は、成果(送信)と主要導線(フォーム到達・電話クリックなど)に絞り、運用に耐える形で増やします。

4) 検証:正しいかどうかを確認する手順を設計に含める

テストは“最後の作業”ではなく、設計の一部です。誰が、どの画面で、どの条件で確認し、いつ合格にするかを決めておくと、改修のたびに数字が揺れにくくなります。

計測設計で作る成果物(一覧)

成果物決まること関与部門
目的・成果定義何を成果とするか営業問い合わせのみを成果にする経営,マーケ
KPI設計追う指標の優先順位月次:有効問い合わせ数/週次:フォーム到達率経営,マーケ
イベント設計書何を計測するか送信完了、フォーム到達、電話クリックマーケ,制作/開発
命名規則名前の付け方event名を動詞_対象で統一マーケ,制作/開発
実装仕様タグの実装方法発火条件、重複防止、例外条件制作/開発
テスト手順検証のやり方テストケース、合否基準、記録方法マーケ,制作/開発
レポート設計どう見るか週次/⽉次の定例用ビュー経営,マーケ

データ品質を落とす典型パターンと、先に決めるルール(命名・重複・除外)

タグとは、計測や広告連携のためにサイトに実装するコードです。
命名規則とは、イベントや項目名の付け方を統一するルールです。

データ品質を落とす原因は「現場の変更でズレる」ことに集中します。特に多いのは次の3つです。

パターン1:成果の定義が揺れて、数字の意味が変わる

同じ「問い合わせ」でも、フォーム改修で項目が増えたり、完了ページの仕様が変わったりすると、過去と比較できなくなります。対策は、成果の定義を文章で固定し、変更時は影響範囲(いつから比較できないか)を明記することです。

パターン2:重複計測で成果が水増しされる

ボタンの二重クリック、戻る操作、タグの二重発火などで、送信が複数回カウントされることがあります。対策は、発火条件を「一度だけ」に寄せる、例外条件を持つ、テストケースに“連打・戻る”を入れる、の3点です。

パターン3:不要なアクセスが混ざり判断がブレる

社内アクセスや制作検証のアクセスが混ざると、ページ改善の評価が歪みます。内部トラフィック(内部トラフィック=自社社員など運用側のアクセスです。)を除外し、検証用の環境は本番と分ける運用ルールを決めます。加えて、流入判定が崩れやすいUTMパラメータ(UTMパラメータ=流入元をURLで識別するための付加情報です。)は、付け方のルールと管理表を用意すると事故が減ります。

デザインが「言語化できるストーリー」から強くなるのと同様に、計測も“言葉にして合意する”ほどブレにくくなります。数字はコミュニケーションの共通言語なので、早い段階で定義とルールを文章化して共有するのが近道です。

実装の要点:タグ設計とテスト手順で“数字がズレる”を減らす

GTMとは、サイトに入れる計測タグを一元管理し、配信条件をまとめて制御するツールです。
「とりあえず動く」実装は早い一方、改修が続くとズレが積み上がります。実装の要点は、タグを増やすことではなく、再現性のあるルールで計測を維持することです。

タグ設計は「増やさない」ために行う

タグ設計とは、どのタグを、どの条件で、どの情報を付けて送るかを決める設計です。
要点は3つです。

  1. 計測の入口を統一する
    直書き(直書き=ページのソースコードに計測コードを直接埋め込む方法です。)とGTMが混在すると、重複や責任所在の不明確さが起きやすくなります。原則を決め、入口を揃えます。
  2. イベントは「成果に近い順」に絞る
    クリック全部を計測すると運用が破綻します。成果(送信)と主要導線(フォーム到達、電話クリック、資料の閲覧など)から始め、改善に必要な粒度で増やします。
  3. 付与する情報を固定する
    パラメータ(パラメータ=イベントに付ける追加情報です。)を場当たりで増やすと、レポートが読めなくなります。最低限、ページ種別、施策区分、コンテンツ名など、判断に必要な情報だけを設計書で固定します。

“数字がズレる”を防ぐ実装の基本

ズレは「二重に送っている」「送れていない」「分類が違う」の3系統に分けると切り分けが早くなります。

二重送信の代表例は、クリックと送信完了の両方を成果にしてしまうケースです。成果は一箇所に寄せ、補助イベントは別名にします。送信完了ページがないフォームは、送信結果を条件にするなど、発火条件を厳密にします。

欠損は、ページ改修でボタンの識別情報が変わり、クリック条件が外れることで起きがちです。制作側の改修があっても壊れにくい条件を選び、変更点が出るたびにテストが回るようにします。

分類違いは、流入の付け方やページの正規化(正規化=表記ゆれを統一して同じものとして扱えるように整えることです。)不足が原因になります。URL(URL=Webページの場所を示すアドレスです。)の末尾スラッシュやパラメータの扱い、UTMパラメータ(UTMパラメータ=流入元をURLに付けて識別するための情報です。)の運用ルールを固定します。

テスト手順は「チェックリスト化」で継続する

デバッグビューとは、送信したイベントをほぼ即時に確認できるGA4の検証画面です。
テストは手順の有無で品質が決まります。次のように、いつでも同じ結果になる形にします。

  • テストケースを固定する(通常操作、戻る、連打、別ブラウザ)
  • 合格条件を明文化する(送信回数、イベント名、パラメータの値)
  • 記録を残す(実施日、対象ページ、変更点、結果)

この3点が揃うと、改修のたびに「どこでズレたか」を短時間で追えます。

体制と進め方:経営・マーケ・制作の役割分担と合意形成

計測が整わない要因は、責任分界と合意の不足です。役割を分け、成果物で合意します。

経営・事業責任者が決める範囲

  • 成果の定義(何を成果と見なすか)
  • 優先順位(今期は何を伸ばすか、何を捨てるか)
  • 投資の上限(どこまで整えるかの線引き)

経営がここを握ると、現場は迷わず設計できます。

マーケ側が担う範囲

  • 施策とKPIの対応付け(どの施策がどの指標を動かすか)
  • 命名規則と運用ルール(誰が見ても同じ解釈になる形)
  • レポート設計と定例の運用(見る頻度、見る人、アクション)

制作・開発側が担う範囲

  • 実装方式の統一(GTMの管理、直書きの排除方針)
  • 変更時の影響把握とテスト(改修前後の差分確認)
  • 例外処理(フォーム仕様や動的ページなどの特殊要件)

外部パートナーが関わる場合は、設計書とテスト結果を納品物に含めると、引き継ぎが成立します。

リスクとトラブル回避:変更管理・監視・権限設計

ステージング環境とは、本番前に動作確認を行う検証用サイトです。
計測は、変更とともに崩れます。崩れる前提で、変更管理・監視・権限設計をセットで用意します。

変更管理で「いつからズレたか」を追えるようにする

  • 変更ログを残す(いつ、誰が、何を変えたか)
  • リリース時のチェックを固定する(主要導線のテストを毎回実施)
  • 設計書の版管理をする(最新版がどれか迷わない状態)

監視は“異常を早く見つける”だけに絞る

アノマリーとは、通常と比べて異常な変化です。
細部を追うより、重要指標の急変だけを検知し、原因調査に時間を使う方が効果的です。

データ品質チェックリスト(切り分け用)

チェック項目起きがちな症状主な原因対処
成果が急増前週比で不自然に増える二重発火、完了判定の緩さ発火条件の見直し、連打・戻るのテスト追加
成果が急減ほぼゼロに落ちる改修で条件が外れた、計測コード停止変更点確認、タグ配信状態の確認、再テスト
フォーム到達はあるが送信がない到達率だけ高い送信イベント未設定、完了ページなし送信条件の実装、完了判定の方式を再設計
流入元が不明に偏る流入元が判別できない区分が過大UTMパラメータ運用不備、転送設定、参照元欠損UTMパラメータのルール整備、転送設定の確認、参照除外の見直し
特定ページの数値だけ変1ページだけページ表示数が急増計測の二重読み込み、計測対象外の想定漏れタグの重複確認、除外条件の追加
社内アクセスが混ざる平日日中だけ増える内部除外未設定内部トラフィックの定義と除外を設定
レポートに欠損が出る一部の項目が空欄パラメータ送信漏れ、表記ゆれパラメータ設計の固定、正規化の実施
数値が見えない行が表示されないしきい値、権限不足指標の粒度調整、権限の付与と管理

しきい値とは、プライバシー保護のために一部の集計が表示されない状態です。
権限と表示制限の可能性も含めて切り分けます。

権限設計は“触れる人”を減らす

権限設計とは、誰が何を変更できるかを役割で決める運用です。
GA4とGTMの両方で、管理者権限を最小化し、変更はレビューを通す形にします。

費用・投資判断:内製/外注の考え方と見積もりの論点

経営判断に必要なのは、金額そのものより「何にコストが乗るか」を把握することです。計測は“設定”より“運用”で差が出るため、見積もりは作業項目で分解して比較します。

費用が増えやすい論点は、主に次のとおりです。

  • 対象範囲:ドメイン(ドメイン=Webサイトの住所のうち、組織を表す部分です。)が複数、フォームが複数、会員エリアがある
  • 実装難易度:動的ページやSPA(SPA=ページ遷移を伴わず画面を書き換えるWebの作り方です。)で、標準計測だけでは判断に必要な情報が取れない
  • 同意管理:同意管理(同意管理=Cookie等の利用同意を取得し、計測可否を制御する仕組みです。)と計測を整合させる必要がある
  • 既存資産:過去のタグが散在し、どれが成果に関係するか不明で棚卸しが必要
  • 体制:制作・開発・広告運用が別で、調整コストが発生する

内製と外注は、優劣ではなく「社内に残すべき責任」と「社外に任せるべき作業」を分けて決めるのが現実的です。みやあじよが制作で重視する“問題解決”の観点では、判断材料を言語化し、合意できる形に落とすことが土台になります。

内製と外注の比較

観点内製外注判断の目安
スピード担当がいれば速い窓口・優先度で変動週次で改修が多いなら内製寄り
品質属人化しやすい設計書とテストで担保しやすい設計・検証を仕組みにしたいなら外注寄り
継続運用社内知見が残る運用設計を納品物に含めると残る引き継ぎ前提なら「成果物の残り方」を比較
リスク退職・異動で止まりやすい依存しすぎると判断が遅れる役割分担(誰が決め、誰が作るか)を明文化

成果の出し方:ダッシュボードと定例レビューで改善を回す

Looker Studioとは、複数のデータを可視化して共有できるレポート作成ツールです。
ダッシュボードは「作ったら終わり」になりがちなので、使い方まで設計します。

おすすめは、見る人と頻度で3層に分けることです。

  • 経営向け(月次):成果KPIと主要チャネル(チャネル=広告や検索など、流入経路の区分です。)の推移だけを確認する
  • マーケ向け(週次):導線KPI(到達率など)と施策別の学びを確認する
  • 調査用(随時):異常値の原因を掘るための詳細ビュー

定例レビュー(定例レビュー=決まった頻度で数字と打ち手を確認する会議運用です。)は、次の型にすると迷いにくくなります。

  1. 先月/先週のKPIの差分
  2. 差分の要因仮説(流入・導線・訴求のどこが動いたか)
  3. 次のアクション(担当者と期限まで決める)
  4. 次回の確認ポイント(どの指標で効いたか判定するか)

「ストーリーが初見で伝わる構成」を意識するというデザインの考え方は、レポートにもそのまま当てはまります。見る人が迷わない順番で並んでいるほど、意思決定が速くなります。

相談時に用意すると進みやすい情報

ランディングページとは、広告などから最初に到達させる目的特化ページです。

相談段階で揃っていると、初回の棚卸しと方向性の合意が短時間で進みます。

  • 目的・成果定義(営業問い合わせ、採用、資料請求など)
  • 現在のGA4とGTMの権限状況(誰が管理者か)
  • 計測している成果一覧(問い合わせ、電話、資料の閲覧など)
  • 主要導線(ランディングページ、フォーム、重要ページ)のURL一覧
  • 流入施策の全体像(広告、SEO、メール、ソーシャルメディアなど)
  • 同意管理ツールの有無と設定状況
  • 定例で見たい指標(経営会議用/マーケ定例用)

みやあじよでは、GA4設定・計測設計、タグ設計、アクセス解析、ダッシュボード構築までを一気通貫で整理し、判断に使える形に整えるご相談を受けています。

まとめ

GA4の課題は「設定ができていない」よりも、「数字の意味が揃っていない」ことにあります。目的→指標→イベント→検証の順で合意し、命名・重複・除外のルールを先に決めると、データ品質は安定します。
そのうえで、実装とテストを仕組みにし、役割分担と変更管理を整えると、改修が続いても数字が揺れにくくなります。
最後に、ダッシュボードは作るだけでなく、見る人と頻度に合わせて設計し、定例レビューで改善を回すところまでが投資回収(投資回収=投資したコストを成果で取り戻す考え方です。)の要点です。

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