BtoB マーケティングファネル設計が必要になる背景
BtoBは購買の意思決定に関与する人数が多く、比較検討に時間がかかります。購買委員会=導入判断に関与する複数部門と役職のまとまりです。購買委員会が存在する商材ほど、営業担当者が1人の熱量だけで押し切るのが難しく、判断材料が“組織として”求められます。
その結果、Webで流入しても「その場で問い合わせ」には直結しにくく、情報収集の途中で離脱します。さらに近年は、問い合わせ前に検索・比較・社内共有が進むため、サイトに載っていない情報は検討から外されやすくなります。
この状況で起きやすいのは、次のような症状です。
- 記事や広告で流入は増えるが、営業につながらない
- 問い合わせは来るが、条件に合わない案件が多い
- 営業が忙しくなるほど、フォローが遅れ機会損失が増える
リード=将来顧客になり得る見込み客情報です、が増えても商談が増えない原因は、集客の量ではなく“段階ごとに必要な情報と導線がそろっていない”ことが多いからです。SEO=検索エンジンで見つけてもらうために情報設計と改善を行い、検索流入を増やす施策です。SEOで集客できても、比較検討や稟議の材料が不足していると、先に進みません。
ファネル設計は、部署ごとの取り組みを増やす話ではなく、「顧客が前に進む条件を満たす情報と体験を、社内の運用まで含めて整える」話になります。
みやあじよでは、デザインを「問題解決」と捉え、サイトの目的達成を最優先に設計します。表現や流入施策は手段であり、目的に対して何が最善かを基準に組み立てます。
この前提に立つと、ファネル設計は「投資のムダを減らし、再現性のある相談獲得の仕組みにするための設計図」として位置づけられます。
まず決めるべきゴールと前提条件
KPI=目標達成の進捗を測る指標です。KPIを置く前に、経営としてのゴールと前提条件を確定させます。ここが曖昧だと、途中の数値が良く見えても投資判断ができません。
ファネル設計で最初にそろえるのは「成果の定義」「評価期間」「勝ち筋の仮説」の3点です。
受注と商談の定義をそろえる
「受注」といっても、契約締結・発注書受領・初回入金など社内の定義が分かれることがあります。さらに商談も、日程確定なのか、提案済みなのかで価値が変わります。
最初に「何を成果として数えるか」を揃えると、マーケと営業が同じゴールを見られます。営業の現場で管理している進捗区分がある場合は、その区分を前提にファネル側を合わせると運用が崩れにくくなります。
検討期間を時間軸として置く
検討期間が長い商材では、今月の流入が来月の受注に直結しないのが普通です。リードタイム=初回接触から受注までにかかる期間です。したがって、短期は“前進指標”、中期は“商談指標”、長期は“受注指標”というように時間軸で評価を分けます。
この設計があると、途中段階の投資を止めるべきか、継続すべきかを説明しやすくなります。経営者の視点では「いつまでに何が見えれば、次の投資を判断できるか」を先に置くのがポイントです。
コンセプトとターゲットを言語化する
コンセプト=提供価値を一言で表す軸です。ターゲット=その制作物で最優先して動かしたい対象者像です。
言語化が甘いまま制作に入ると、ページごとの訴求がばらけ、比較検討の場で選ばれにくくなります。みやあじよはコンセプト設計と言葉の整理を重視し、言葉にできない状態を残さない方針です。
ファネル設計でも同じで、段階ごとの情報を置くだけでなく、全体として“何を信じて前に進めば良いか”が伝わる流れが必要です。
ファネルを分解する方法
分解のコツは、社内の部署や施策で区切らず、顧客の行動で区切ることです。さらに各段階に「次に進む条件」を置くと、どこで詰まっているかが見えるようになります。
ここで大事なのは、段階を細かくしすぎないことです。段階が増えすぎると、計測や運用が追いつかず、結局“見たい数字だけ見る”状態に戻ります。目安は6段階前後で骨組みを作り、必要に応じて増やす方が現実的です。
段階は行動と意思決定で切る
認知→情報収集→比較検討→社内稟議→商談→受注のように、意思決定が一段階進む点で区切ります。役職者ほど“短い時間で判断材料を集めたい”ため、段階ごとに必要な情報の粒度も変わります。
例えば比較検討では「選定基準」「他社との違い」「導入後の運用」が重要になり、稟議では「費用の考え方」「リスク」「社内説明に使える根拠」が重要になります。
詰まりを見つけるための観測点を置く
コンバージョン=問い合わせや資料請求など、成果につながる行動です。各段階で「見られるべきページ」「取られるべき行動」「次に渡すべき情報」を決め、計測できる形にします。
FAQ=よくある質問と回答をまとめたコンテンツです。比較検討の段階では、事例やFAQのように「不安を潰す情報」が不足すると、検討が止まります。
UI/UX設計=ユーザーが迷わず目的の行動に進めるよう、画面の見た目と体験を設計することです。導線と情報設計が弱いと、良いコンテンツでも“読まれて終わり”になります。
逆に言えば、ファネル設計は「コンテンツの量」を増やす前に、「必要なページに到達し、必要な次アクションが取れる」状態を作ることで成果が出やすくなります。
ファネル段階別の目的の施策と指標
| 段階 | 主目的 | 代表施策 | 見る指標 |
|---|---|---|---|
| 認知 | 存在と課題の接点を作る | SEO記事、課題解決ページ | 検索表示、検索流入、回遊 |
| 情報収集 | 解決策の選択肢に入る | お役立ち資料、用語解説、比較観点 | 資料閲覧、滞在、再訪 |
| 比較検討 | 自社が選ばれる理由を補強 | 事例、機能・価格の考え方、FAQ | 事例閲覧、指名検索、問い合わせ率 |
| 稟議準備 | 社内説明の材料を渡す | 提案資料、導入手順、セキュリティ情報 | 資料ダウンロード、入力画面到達、相談件数 |
| 商談 | 課題の具体化と合意形成 | 相談導線、ヒアリング設計、提案 | 商談化率、失注理由の分類 |
| 受注 | 決裁を後押しする | 見積提示、条件整理、導入計画 | 受注率、リードタイム |
この表はテンプレートであり、商材と販売モデルに合わせて調整します。例えば単価が高く導入後の運用負荷が大きい商材では、稟議準備の段階で「運用体制」「移行手順」「サポート範囲」を厚くする方が商談が進みやすくなります。
Web導線設計でページ構成と行動導線
導線設計とは読者が迷わず次の行動に進めるよう、ページの順番とリンクの置き方を整えることです。BtoBでは「今すぐ相談したい人」より「まず社内で検討したい人」の比率が高く、導線が1本しかないと機会損失になります。そこで、主導線(相談)と副導線(資料)を分け、段階に合わせて出し分けます。
相談導線を“最後”に置かない
問い合わせフォーム=連絡先や要件を入力するページです。フォームを最後に隠すほど離脱は増えます。とはいえ、初回接触でいきなり詳細入力はハードルが高いので、サービスページや事例ページの文脈に「相談して良い理由」を添えて配置します。例としては「要件未確定でも可」「概算の相談可」「比較検討中の相談可」といった不安の除去です。相談の入口は1つに固定すると迷いが減ります。
資料導線は“判断材料”として設計する
ホワイトペーパー=検討に役立つ資料をまとめた情報資産です。資料は単なる連絡先回収ではなく、稟議に使える判断材料として設計します。具体的には「選定基準チェックリスト」「導入ステップ」「失敗しない比較観点」など、社内共有されやすいテーマが有効です。資料ページでは、誰に向けた資料か(経営者向け/現場向け)を明記し、使い道が想像できる説明にします。
ページ構成の最低セット
検討期間が長い商材ほど、以下が揃うと商談化が安定します。
- 価値訴求ページ(何を解決できるか)
- 根拠ページ(事例、実績、プロセス、体制)
- 不安解消ページ(費用の考え方、よくある質問、セキュリティ)
- 行動ページ(相談、資料、セミナー等)
CTA=次の行動を促すボタンや文言です。CTAは「問い合わせ」だけでなく、「事例を見る」「資料で比較する」など段階別に用意し、同じページ内で競合させないのがコツです。
導線は3レイヤーで点検する
ナビゲーション=全体移動のメニューです。BtoBサイトの導線は、次の3レイヤーで崩れやすいです。
- ナビゲーション:上部メニューなど、全体の移動を担う導線
- ページ内導線:本文中のリンクやCTAなど、そのページで前に進める導線
- クロス導線:事例→料金→FAQのように、検討論点を渡り歩ける導線
パンくず=サイト内の現在地を階層で示す表示です。
フォームの設計は“営業プロセス”と合わせる
EFO=入力フォームの離脱を減らすために項目や入力画面を改善することです。BtoBのフォームは、短くしすぎると営業がヒアリングに時間がかかり、長くしすぎると入力で離脱します。そこで「必須で欲しい情報(会社名、連絡先、相談内容のカテゴリ)」と「任意で欲しい情報(検討時期、予算感など)」を分け、必須項目は最小に寄せます。個人情報の取り扱いは、目的と管理方法を明記し、安心して入力できる状態に整えます。
コンテンツ設計:検討段階別に用意すべき情報(SEO/提案資料/事例)
コンテンツ設計=誰のどんな疑問に答える情報を、どの順番で用意するか決めることです。BtoBは“課題→要件→比較→稟議”と論点が移るため、記事を増やす前に「段階別に不足している情報」を特定します。まず既存ページを棚卸しし、ファネル段階ごとに「足りない論点」を埋める順で着手すると、投資がムダになりにくいです。
認知〜情報収集:課題の言語化と選択肢提示
この段階は、まだ製品カテゴリが決まっていないこともあります。用語解説、課題別の解決アプローチ、社内で起こりがちな症状など、検索されやすい問いに答えます。SEO記事は入口として有効ですが、記事単体で完結させず「次に読むべきページ」へつなげます。たとえば課題記事→解決策の全体像→自社サービスの立ち位置、の順で回遊を作るイメージです。
比較検討:選定基準と違いが一目で分かる情報
比較表=複数案を同じ観点で整理した表です。BtoBの比較は価格だけではなく、体制、運用負荷、移行、サポート範囲が意思決定要因になります。サービスページでは、機能羅列より「選定基準→自社の立ち位置→導入プロセス」の順で構成すると、納得が生まれやすくなります。競合名を出さずとも、選定基準を提示するだけで比較の土俵に上がれます。
事例は“成果の数字”がなくても作れる
事例=導入前の課題、実施内容、導入後の変化を整理したコンテンツです。数値が出せない場合でも、「課題の背景」「判断の決め手」「導入までのステップ」「運用で工夫した点」を書けると、同業の検討者に刺さります。事例の目的は誇張ではなく、購買委員会に説明できる具体像を渡すことです。
稟議準備:社内説明の“素材”を渡す
稟議=社内で承認を得るための手続きです。稟議が通らない原因の多くは、担当者の熱量ではなく「説明材料の不足」です。導入までのスケジュール例、体制の前提、セキュリティの考え方、よくある懸念への回答をまとめ、担当者が社内共有しやすい形にします。提案資料とサイトの言い回しがズレると不信感につながるため、サイト上の表現は営業資料と整合させます。
成果指標と計測:KPI設計とアクセス解析の見方
アクセス解析=Web上の行動データを計測し、改善に活かすことです。BtoBファネルのKPIは「数が増えること」より「前に進むこと」を測る必要があります。KGI=最終的に達成したい目標指標です。KGI(例:相談件数や受注件数)を定めた上で、段階別にKPIを置きます。
段階別KPIの置き方
- 認知:検索流入、指名検索(社名やサービス名での検索)など
- 情報収集:資料閲覧、再訪、特定ページの到達
- 比較検討:事例閲覧、料金ページ到達、FAQ閲覧
- 稟議準備:資料ダウンロード、相談ページ到達
- 商談:商談化率、失注理由の分類
マイクロコンバージョン=最終成果の手前にある中間成果(例:事例閲覧、料金ページ到達)です。検討期間が長い商材では、マイクロコンバージョンを追うことで「今やっている改善が前進しているか」を判断しやすくなります。
計測は“イベント”で揃える
イベント計測=ボタンのクリックや資料ダウンロードなど、行動をデータとして記録することです。どのページで、どの行動が起きたかが揃うと、改善が属人化しません。GA4=Googleが提供するアクセス解析ツール(Google Analytics 4)です。Search Console=検索結果での表示やクリックを把握するツールです。まずは「どの流入が、どのページを経由して、どの行動に至ったか」を見える化し、改善の優先順位を決めます。
数字が動かないときの切り分け
同じ“問い合わせ減”でも、原因は複数あります。流入が減ったのか、導線で止まっているのか、フォームで離脱しているのか。切り分けの順番を固定し、毎月同じ観点で見れば、判断が早くなります。ヒートマップ=ページ上でどこが見られ、どこがクリックされたかを可視化する分析手法です。アクセス解析と併用すると、改善仮説が立てやすくなります。
施策カテゴリ別の費用観点まとめ
| 施策カテゴリ | 費用の決まり方 | 運用工数 | 期待効果の方向性 |
|---|---|---|---|
| Web戦略策定 | 調査範囲・設計範囲で変動 | 低〜中 | 施策の優先順位が明確に |
| サイト改善・導線改修 | 変更規模・ページ数で変動 | 中 | 相談率・回遊の底上げ |
| SEO・コンテンツ制作 | 本数・難易度・監修体制で変動 | 中〜高 | 中長期の流入と指名強化 |
| アクセス解析・改善運用 | 計測範囲・レポート頻度で変動 | 中 | 課題特定と継続改善が可能に |
体制設計:マーケ・営業・制作の役割分担と運用フロー
体制設計=施策を回し続けるための役割、意思決定、運用ルールを決めることです。BtoBは関係者が増えやすいので、会議を増やすより「誰が決めるか」「誰が作るか」「誰が直すか」を先に固定します。
RACI=業務ごとに責任者(実行)、最終責任者(決裁)、相談先、共有先を定義する整理法です。RACIで決めておくと、改善が止まる原因になりやすい“承認待ち”や“誰の仕事か不明”を減らせます。
運用が回りやすい最低構成の例は次の通りです。
- 意思決定者:KGI/KPIと優先順位の決定、予算の判断
- マーケ責任者:企画、編集、計測のレビュー、改善バックログ管理
- 営業責任者:リードの定義、フォロー期限、失注理由の整理
- 制作・解析担当(社内または外部):ページ改修、計測設定、レポート作成
バックログ=未対応の改善タスクを優先度順に並べた一覧です。バックログを共通化し、週次で「着手するタスク」を決め、月次で「数値と学び」を確認する運用にすると、施策が散らかりにくくなります。
体制パターン比較(内製・外注・ハイブリッド)
| 体制 | 向く状況 | 注意点 | 運用のポイント |
|---|---|---|---|
| 内製中心 | 発信ノウハウが社内にある | 人に依存しやすい | 編集ルールと指標レビューを固定 |
| 外注中心 | スピードと専門性が必要 | 意図のズレが起きやすい | 目的・ターゲットの言語化を先に |
| ハイブリッド | 継続運用と品質を両立したい | 役割が曖昧になりやすい | 企画と意思決定は社内、制作は分担 |
みやあじよは目的設定→コンセプト→集客方法とUI/UX設計を同列に設計し、目的達成の手段として組み立てることを重視しています。
この考え方に沿うと、体制の中心は「目的と優先順位を言語化できる人」を置くことです。経営者・マーケ責任者が、月1回のレビューでKPIと改善優先度を決め、週1回で実行タスクを回す形にすると、10〜500名規模でも運用が崩れにくくなります。
費用と投資判断:内製/外注の考え方、優先順位、段階投資
TCO=導入後の運用費も含めた総コストです。BtoBのファネル改善は一度作って終わりではなく、計測→改善→更新が前提なので、初期費用だけでなくTCOで判断します。
ROI=投資額に対して得られる利益の比率です。短期は相談や商談の増減、中期は商談化率、長期は受注やLTV(LTV=顧客が取引期間を通じてもたらす粗利の累計)で評価すると、投資判断がぶれにくくなります。
段階投資の考え方は、次の順が現実的です。
- フェーズ1:計測と導線の整備(現状把握と相談率の底上げ)
- フェーズ2:核ページの整備(サービス、事例、FAQ、費用の考え方)
- フェーズ3:コンテンツ拡張(SEO記事・資料・セミナー等で流入と育成を増やす)
外注見積を見るときは、成果の断定よりも「範囲」「納品物」「修正回数」「運用の関与範囲」が明記されているかを重視します。リニューアル=サイトを大きく作り直すことです。リニューアル一括で進める場合は、公開後の改善費が別枠になることがあるため、運用の責任分界も確認します。
リスクとトラブル回避:よくある失敗と設計上の対策
よくある失敗は、集客の問題と営業対応の問題が混ざって原因が見えなくなることです。対策は、問い合わせをMQL/SQL(MQL=条件を満たした見込み客、SQL=営業対応すべき見込み客)で分類し、失注理由もタグで残すことです。
また、検索流入に寄せすぎると、指名検索や比較検討の材料が弱くなりやすいです。指名検索=社名やサービス名での検索です。認知獲得と同時に「比較される前提のページ(事例・FAQ・費用の考え方)」を育て、購買委員会が社内共有できる情報を揃えます。
ほかにも、次の点は設計で先に潰せます。
- 事例や比較材料がなく稟議で止まる:社内説明に使えるページ・資料を用意
- 担当者が変わると運用が止まる:編集ルール、指標、承認フローを文書化
- フォーム入力が敬遠される:必須項目を絞り、個人情報の扱いを明記
実行ロードマップ:90日〜半年で回す改善サイクル
ロードマップ=期限ごとにやることを並べた計画です。例としては次の流れです。
- 1〜2週:現状棚卸し、KPIと計測設計、優先度決定
- 3〜6週:主要導線の改修、サービス・事例・FAQなど核ページ整備
- 7〜12週:SEO記事と資料導線を追加、営業連携ルールを運用開始
- 3〜6か月:改善サイクルを定着、勝ちパターンを拡張
改善サイクル=数値の確認→仮説→実行→検証を繰り返す運用です。ここで重要なのは、毎回ゼロから議論しないよう「見る指標」と「意思決定の型」を固定することです。
まとめ
BtoB マーケティングファネル 設計は、集客施策の寄せ集めではなく「段階別に必要な情報と導線をそろえ、運用まで含めて回す設計」です。計測を整え、導線と提案材料を先に固めると、検討期間が長い商材でも相談獲得が安定しやすくなります。
みやあじよでは、Web戦略策定、SEO、コンテンツマーケ、アクセス解析、サイト改善を一気通貫で支援し、目的達成から逆算した設計に落とし込みます。