変化というものは労力とコストがかかります。
DX化を考えているけれどその労力とコストに見合ったものは得られるだろうか…
そんな不安を抱えている方も多いと思います。
この記事ではそんなDXとメリット・デメリットを紹介。
認定制度の説明やメリットを最大化させるポイントも解説いたします。
目次
DXの5つのメリット
DXのメリットは次の5つです。
- 新規事業の開発
- リスクの低減
- 業務の効率化
- コストの削減
- 組織力の向上
それぞれ詳しく解説します。
1.新規事業の開発
DXを実現できれば、様々なデータを収集・蓄積できます。
蓄積したデータを活用すれば、市場動向や顧客ニーズを的確に把握できるため、新規事業の開発機会を広げることが可能です。
また、急激な市場変化にも対応できるビジネスモデルを開発できるため、市場優位性の維持にも寄与できます。
2.リスクの低減
DXを推進する過程で事業継続計画(BCP)を実施すれば、災害やシステム障害などのリスク低減が可能です。
事業継続計画とは、災害やシステム障害などの危機的状況に陥った際、被害を最小限に抑え業務を継続できるようにする対策のことです。
DX推進によってクラウド化やリモートワークなどの環境が整備されていれば、事業継続計画を最適な形で実施できるため、災害などのリスクを低減できます。
また、レガシーシステムによる経済損失のリスク低減もできます。
レガシーシステムとは、過去の仕組みや技術で構築され、複雑化・ブラックボックス化・最新技術を適用しにくいなどの課題を抱えたシステムのことです。
経済産業省が公表した「DXレポート」では、レガシーシステムをそのまま使用し続けた場合、2025年以降には年間で最大12兆円の経済損失が生じることも示唆されています。
DX推進によって、システムを刷新できれば、レガシーシステムによって引き起こされる様々な問題を解決できるため、2025年以降の経済損失リスクを低減できます。
3.業務の効率化
DX推進によるデジタル化によって、業務時間の短縮や優先度の可視化ができれば、業務効率化や生産性の向上が可能です。
また、単純作業や管理業務をデジタル化・自動化すれば、人の手が必要な重要度の高い業務に人的リソースを集中できるため、業務の質を向上させられます。
4.コストの削減
業務のデジタル化や、単純作業の自動化を実現できれば、必要な作業人数を減らせるため、人件費を削減できます。
業務工程の可視化・分析も容易となるため、全体的な視点で、プロジェクトの把握が可能です。
プロジェクト全体を把握できれば、工程や経費の見直しにつながるため、DX推進前と比べてコスト削減しやすくなります。
5.組織力の向上
DXを推進すれば、データを活用して施策決定する組織体制の構築が可能です。
施策の良否結果もデータとして蓄積すれば、次回の意思決定時の判断材料として役立てられます。
また、社員が退職しても社内にノウハウ・知見を残せるため、組織力の向上にも寄与できます。
DXの5つのデメリット
DXのデメリットは次の5つです。
- 初期費用やランニングコストがかかる
- 短期間で成果が出ない
- 既存システムからの切り替えが大変
- 組織風土が変わる
- DX人材を確保する必要がある
それぞれ詳しく解説します。
1.初期費用やランニングコストがかかる
初期費用やランニングコストがかかる点が、DX推進の大きなデメリットです。
レガシーシステムを再構築したり、新システムの構築・移行したりする場合、エンジニアへの人件費やシステムの導入費用がかかります。
また、システム導入後は運用し続ける必要があることから、ランニングコストも加味しなければなりません。
ただし、短期的にはコストはかかりますが、DXを実現すれば人件費や無駄なシステムコストを省けるため、長期的に見ればコスト削減が見込めます。
DX推進から数年後にコスト削減を実現するためには、DXにかかるコストとコスト削減の割合を算出し、自社に最適な形はなにか十分に検討する必要があります。
2.短期間で成果が出ない
DXは短期間で成果が出ることはほとんどありません。
そのため、すぐに成果が出ないからといって焦ると、社内で食い違いや混乱が生じてしまうリスクがあります。
DXを推進する際は、試行錯誤を繰り返しながら長期的な視点で取り組む必要があるという点を認識しておかなければなりません。
3.既存システムからの切り替えが大変
DX推進は、既存システムを刷新するため、導入の手間がかかります。
既存システムの切り替え作業が大変であることはもちろん、社員が新システムでの業務に慣れる移行時間も想定しなければなりません。
例えば、紙の書類での業務に慣れている従業員が多い場合、業務のデジタル化に反発されるリスクもあります。
現場からの反発が強い場合、DX推進が頓挫してしまう事態にもなりかねません。
このような事態を避けるためには、移行期間中は業務効率の低下や反発の声が出る可能性も念頭に置きながら、DX推進の必要性を社内全体で共有し、理解を得ていく必要があります。
4.組織風土が変わる
DXを推進すれば、組織風土も大きく変わります。
そのため、今までの組織文化に慣れている従業員からは、DX推進に反発される可能性も少なくありません。
DXをしっかりと推進していくためには、説明責任をしっかりと果たし、社内全体でDXを目指す雰囲気を醸成していくことが重要です。
5.DX人材を確保する必要がある
DXの効果を最大化するためには、ITに精通した人材を確保する必要があります。
しかし、多くの日本企業がDXに取り組んでいる現在、IT人材は不足しており、DX人材を確保できていないという企業は少なくありません。
DXを推進し競合他社に遅れをとらないようにするためには、DX人材の確保・育成に早急に取り組む必要があります。
そもそもDXとは?
DX(Digital Transformation)とは、企業が市場の激しい変化に対応できるように、デジタル技術を活用して業務・企業風土・プロセスなどを変革させる取り組みです。
DXによって企業を変革できれば、変化の激しいデジタル時代でも勝ち続けられる競争力を高められます。
DXの定義
DXはスウェーデンにあるウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が2004年に提唱した概念です。
元々は「進化し続けるテクノロジーが人々の生活を豊かにする」という内容でした。
しかし、時代の変化とともにその意味も狭義的なものとなり、既存の枠組みなどを覆す革新的なイノベーションをもたらすものと定義されるようになっていきます。
現在、経済産業省が提唱しているDXの定義は次のとおりです。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
引用:経済産業省-「デジタルガバナンス・コード2.0」
DXが重要視されている理由
DXが重要視されている理由は次の3つです。
- レガシーシステム・属人化の問題
- 古い企業だと認知されるリスク
- 競争力の低下
それぞれ詳しく解説します。
レガシーシステム・属人化の問題
古い技術や仕組みで構築されているレガシーシステムは、一部担当者しか状態が分からず属人化していることも少なくありません。
万が一、担当者が退職・異動してしまうとそのシステムを扱える人材がいなくなるため、トラブルが発生すると対応ができなくなります。
このような事態を回避するためには、DXによってレガシーシステムを刷新し、属人化の問題を解消していく必要があります。
古い企業だと認知されるリスク
DXを推進し業務効率化や働き方改革を実現している企業は多いです。
このような中でDX推進に消極的だと従業員などから時代の変化に対応できていない古い企業だと認知されるリスクがあります。
そのため、時代の変化に対応した働きやすい企業というイメージを醸成していくためにはDX推進への積極性が欠かせません。
競争力の低下
国際的な競争力が低下していることも、DXが重要視されている理由です。
総務省が公表した「令和3年 情報通信白書」によると、日本のデジタル競争力ランキングは63カ国中27位で、1位のアメリカ、2位のシンガポールと比べて大きく遅れをとっています。
DXによってシステム化やデータ活用が当たり前となった国際社会において、DX化が遅れている日本企業の競争力は低下し続けている状態です。
市場がグローバル化し海外企業とも競争しなければならない現代で競争力を維持・向上させていくためには、DXの推進が欠かせません。
費用対効果を高めてDXのメリットを最大化させるための3つのポイント
費用対効果を高めてDXのメリットを最大化させるためのポイントは次の3つです。
- 経営者が積極的に参加しビジョンを明確化する
- スキル・ナレッジを管理・共有する
- スモールスタートを意識する
それぞれ詳しく解説します。
1.経営者が積極的に参加しビジョンを明確化する
DXによって業務プロセスや組織風土などを変化させる場合、従業員が抵抗感を覚えるリスクが高いです。
本当の意味でDXを実現させるためには、社内全体で協力体制を構築し、ビジョンや目標を明確化して社内で共有・浸透させる必要があります。
また、経営者がDXを正しく理解し、プロジェクトに積極的に参加することも重要です。
従業員から反発されるリスクがあるDX推進を責任者やチームに丸投げしてしまうと、社内の協力体制を構築できず、DXを上手く推進できない可能性があります。
DXを推進する際は、経営者も積極的にプロジェクトに参加し、社内の理解を得られるように尽力していかなければなりません。
2.スキル・ナレッジを管理・共有する
DXのメリットを最大化させるためには、DX関連のスキル・ナレッジを管理・共有する仕組みを構築する必要があります。
新システムを導入しても、操作方法や仕組みを理解しているのがITスキルの高い従業員やDX人材だけでは十分な効果を得られません。
そのため、ITスキルが低い従業員でも使用できる仕組みづくりや、進化する技術に対応できるよう継続的にシステム管理する体制の構築が重要です。
3.スモールスタートを意識する
社内全体の混乱を避け、DXを効率的に推進するためには、スモールスタートを意識する必要があります。
スモールスタートとは、部分的に新しいシステム・仕組みを導入し、効果や状態をみながら徐々に導入範囲を広げていく手法のことです。
新しいシステム・仕組みをいきなり全社的に導入してしまうと、業務効率の低下やシステムエラーなどを招き、大きなトラブルに発展するリスクがあります。
一方、スモールスタートであればシステムなどを部分的に導入するため、自社業務と相性が良いか検証が可能です。
そのため、相性が悪かった際にシステムの切り替えなどが容易となる他、システム刷新による社内全体の業務効率の低下や、システムエラーによるトラブルのリスクを低減できます。
DX メリット デメリットでよくある質問
DX メリット デメリットでよくある質問は次の2つです。
- DX認定制度とはなんですか?
- DXを推進する手順を教えてください
それぞれ詳しく解説します。
1.DX認定制度とはなんですか?
DX認定制度とは、国が策定したデジタルガバナンス・コードと呼ばれる指針に対応し、DX推進において質の高い取り組みを実施している企業だと認定する制度のことです。
DX認定制度で得られるメリットは次のとおりです。
- DX投資促進税制や中小企業対象の金融による支援措置を受けられる
- DXを積極的に取り組んでいる企業だとアピールできるDX認定制度ロゴマークを利用できる
2.DXを推進する手順を教えてください
DXを推進する手順は次の5ステップです。
- 目的の明確化・現状分析による課題の洗い出し
- 目標の設定
- 社内体制の整備
- DX化に向けて施策の優先順位をつける
- PDCAサイクルを回し適宜戦略や目標の見直しをする
短期的には成果が出ないことを前提に、中長期的な視点でPDCAサイクルを回し続けることがDXを成功させる秘訣となります。
DX メリット デメリット まとめ
DXには「短期間で成果が出ない」「組織風土が変わる」「DX人材を確保する必要がある」などのデメリットが多いため、二の足を踏む企業が少なくありません。
しかし、DXを成功できれば、「新規事業の開発」「業務効率化」「組織力の向上」「コスト削減」などのメリットを享受できます。
企業全体の変革となると1部の従業員から反発される可能性がありますが、長期的にみればDXの実現によって得られる効果は決して小さなものではありません。
変化の激しい市場で今後も生き残っていくためには、社員の理解を得ていくとともに、デメリットを恐れずDXを推進していくことが大切です。