コーポレートアイデンティティデザインとは?
コーポレートアイデンティティデザインとは、経営者の哲学や思いを掘り下げて、ブランドを創り上げる活動のことです。コーポレートアイデンティティデザインを行うことによって、経営者の価値観を引き出し、企業方針に反映させられます。
企業方針に経営者の価値観を反映させることができれば、企業のブランド力向上や従業員満足度向上、離職率の低下などにつなげられます。
コーポレートアイデンティティデザインのステップ
コーポレートアイデンティティデザインのステップは次のとおりです。
- 思い・哲学の明確化
- コンセプトライティング
それぞれ詳しくみていきましょう。
1.思い・哲学の明確化
企業方針に経営者の価値観を反映させたり、企業ブランドを創り上げたりするためには、経営者自身が心の底で達成したいと思っていることを理解しなければなりません。
そのため、経営者の思い・哲学を掘り下げて、明確化していきます。
2.コンセプトライティング
経営者の思い・哲学を掘り下げて明確にしたら、コンセプトライティングを行っています。コンセプトライティングとは、言葉を作っていくライティングのことです。
明確化した思い・哲学を、社員や取引先など、自分以外の人間に対して、象徴となる言葉を作っていきます。ただし、言葉をただ作っただけでは、企業ブランドにはつながりません。
そのため、企業の象徴かつ経営者および社内外に対して、共通認識となるような強い力を持った言葉を作っていく必要があります。
コーポレートアイデンティティデザインを成功させるポイント
コーポレートアイデンティティデザインを成功させるポイントは次の2つです。
- 経営者の価値観と企業方針を統一する
- 事業の立ち上げ段階に行う
それぞれ詳しくみていきましょう。
1.経営者の価値観と企業方針を統一する
経営者の価値観と企業方針が合致していない場合、事業は絶対に成功しません。
企業ブランドを創り上げて、事業を成功に導くためには、経営者の価値観をしっかりと掘り下げた後、それをもとに事業を組み立てて、価値観と企業方針を統一することが大切です。
2.事業を立ち上げた直後に行う
事業規模が大きい場合、経営者の意思が事業に反映されにくいため、コーポレートアイデンティティデザインの効果を最大化できません。
コーポレートアイデンティティデザインの効果を最大化するためには、事業規模が小さい立ち上げ段階で行う必要があります。
コーポレートアイデンティティとは?
コーポレートアイデンティティデザインに似た言葉として、コーポレートアイデンティティがあります。コーポレートアイデンティティとは、商品・サービスなどが自社の存在を認識させて、社会的な信頼を確立し、視覚的に訴求するイメージ戦略のことです。
企業理念などを明確化し、ロゴや色などの要素を統一化して、一貫性を持たせることで、消費者の印象を創り上げて、企業ブランドの印象を醸成し、ブランド力を向上させられます。
コーポレートアイデンティティの構成要素
コーポレートアイデンティティの構成要素は次の3つです。
- マインドアイデンティティ
- ビジュアルアイデンティティ
- ビヘイビアアイデンティティ
それぞれ詳しく解説していきます。
1.マインドアイデンティティ
マインドアイデンティティ(MI)とは、「企業の存在意義やあり方を言語化したもの」、すなわち企業理念のことです。
企業理念は次の5つの要素で構成されています。
- ミッション:使命
- ビジョン:未来
- バリュー:価値・強み
- スピリット:精神
- スローガン:合言葉
マインドアイデンティティは、コーポレートアイデンティティの基盤となる部分であるため、上記5要素はしっかりと考えておく必要があります。
2.ビジュアルアイデンティティ
ビジュアルアイデンティティとは、マインドアイデンティティなどをデザインとして落とし込み、一貫性のある世界観で情報発信していくことです。
Webサイトやパンフレット、ユニフォームなどの世界観を統一することで、企業が目指すべき姿を社内外に認知・浸透させてブランドを確立できます。
3.ビヘイビアアイデンティティ
ビヘイビアアイデンティティとは、行動アイデンティティともいいます。マインドアイデンティティに基づき、従業員がその企業らしい一貫した行動を業務やマネジメントといったあらゆるところで行い続けることです。
ビヘイビアアイデンティティを実践させるためには、マインドアイデンティティが従業員1人ひとりにしっかりと浸透させる必要があります。
コーポレートアイデンティティのデザイン開発項目
コーポレートアイデンティティのデザイン開発項目は次のとおりです。
- ロゴマーク
- カラーパレット
- フォント
- 写真の印象
- アプリケーションデザイン開発
- ベーシックデザイン開発
コーポレートアイデンティティのデザインと聞くと、ロゴデザインを想像しがちですが、上記のとおり、デザイン開発は多岐にわたります。
コーポレートアイデンティティデザインとの違い
コーポレートアイデンティティデザインは経営者の哲学や思いを掘り下げて、経営者の価値観を引き出し、企業方針に反映したり、ブランドを創り上げたりする活動のことです。
一方、コーポレートアイデンティティは企業理念などを明確にすることで、世界観を統一して一貫性を持たせ、ブランド力向上を目指す活動のことをいいます。
したがって、コーポレートアイデンティティデザインはコーポレートアイデンティティの1つであり、ビジュアルアイデンティティの強化につなげられる活動となります。
コーポレートアイデンティティを実施すべき理由
コーポレートアイデンティティを実施すべき理由は次の5つです。
- 企業イメージの統一
- ファンの増加
- 企業の長寿化
- ブランドの差積化
- 共通理念により企業のステップアップ
それぞれ詳しくみていきましょう。
1.企業イメージの統一
インターネットの普及やSNSの登場により、企業はあらゆる角度から見られる時代となりました。そのため、1部分に力を入れて良くみせても、その他の部分が悪ければ信頼度は高められません。
コーポレートアイデンティティを実施すれば、企業のイメージを統一化できます。企業イメージが統一化できれば、どこから見ても一貫性があると認識してもらえます。
2.ファンの増加
ゴールデンサークル理論とは、人に情報を伝えて行動を促す際、構成要素である「Why・How・What」のうち、「Why」から伝えはじめるのが重要だという理論です。自社のことを話す際、提供している商品・サービスつまり「what」の部分から語りがちです。
しかし、ゴールデンサークル理論では、企業の存在理由や、どういった世界を消費者に見せるかという「why」から伝えるべきだといっています。
コーポレートアイデンティティを実施すれば、企業の存在理由や消費者に見せたい世界が明確になるため、ファンや取引先の増加につなげやすくなります。
3.企業の長寿化
コーポレートアイデンティティを実施すれば、「世の中の課題解決」や「消費者の生活を豊かにする」といった企業が世の中に提供する価値を明確にできます。これらを明確にしておけば、企業が何のために事業を行っているかという軸ができるため、時代が変化しても消費者が求めているものを提供しつづけることが可能です。
これにより、企業を長寿化させられます。
4.ブランドの差積化
ブランドの差積化もコーポレートアイデンティティがあってはじめて行えます。ブランドの差積化とは、ブランドの価値提供を継続的に行っていくことで、中長期的に付加価値を積み上げていくことです。
多くの企業はブランドの差別化に注力していますが、立ち上げ期を過ぎれば、認知・真似されてしまうため、一般化していきます。つまり、差別化だけでは継続した独自価値の提供が難しいというわけです。
そこで必要となるのが「差積化」です。差積化できれば、別企業では替えが効かない優良顧客が増加するため、競合他社も真似をするのが難しくなり、多くの消費者に長く愛されるブランドにできます。
5.共通理念により企業のステップアップ
企業活動は、様々な従業員が日々、様々な業務を行っています。しかし、日々やっている業務がどこに辿りつくのかがイメージできていないと、大きな成果は生み出せません。
コーポレートアイデンティティを実施すれば、どこがゴールなのか共通理念として共有できるようになるため、時代が変化してもその理念のもと、柔軟に変化できるようになります。また、理念が明確となれば、行き方は違っても、従業員全員が必ずそのゴールに辿りつくことができるため、企業のステップアップにつなげられます。
コーポレートアイデンティティの3つの役割
コーポレートアイデンティティの役割は次の3つです。
- ビジョンの明確化
- 認知度・信頼度の向上
- 社内の意識改革
それぞれ詳しくみていきましょう。
1.ビジョンの明確化
コーポレートアイデンティティの役割として「ビジョンの明確化」が挙げられます。コーポレートアイデンティティとは、企業理念や社会的責任などを体系的に整理することで、改めて理念や行動指針を社内外に発信する活動のことです。
コーポレートアイデンティティを実施することで、企業のビジョンを見つめ直すとともに、新しいビジョンを生み出せる可能性があります。全く新しいビジョンであってもコーポレートアイデンティティを通じて定義付けすれば、社内外に広く浸透させられるでしょう。
2.認知度・信頼度の向上
コーポレートアイデンティティを実施すれば、消費者に企業の存在を認識してもらいやすくなる他、信頼度の向上にも寄与できます。
消費者の認知度・信頼度が向上すれば、新規顧客の獲得や優良顧客化につながり、売上向上にもつなげられるでしょう。
3.社内の意識改革
コーポレートアイデンティティを実施すれば、社内の意識改革も行えます。コーポレートアイデンティティによって、企業ビジョンなどが明確になれば、企業理解を促進できるため、事業参画意識の向上や企業への愛着を創出できます。
従業員が企業への愛着を持てば、働き続けたいという意識を芽生えさせることができるため、離職率の低下などにつなげられる他、業務に取り組む姿勢も変化させられます。
コーポレートアイデンティティを実施する際の2つの注意点
コーポレートアイデンティティを実施する際の注意点は次の2つです。
- デザイナーにすべてを任せない
- マインドアイデンティティから行う
それぞれ詳しく解説します。
1.デザイナーにすべてを任せない
ロゴなどを作成する場合、デザイナーに依頼することも少なくありません。しかし、デザイナーにすべてを任せるのはおすすめしません。
あくまでもデザイナーは自社の思いを形にしてくれる存在であるため、自社の思いをしっかりとデザイナーに伝えることが大切です。
2.マインドアイデンティティから行う
コーポレートアイデンティティの基盤となるのがマインドアイデンティティです。何も分からない状態から、ロゴ作成などを行ってしまうと、自社のビジョンと統一できません。
そのため、コーポレートアイデンティティを実施する際は、マインドアイデンティティから行い、コーポレートアイデンティティの基盤をつくる必要があります。
マインドアイデンティティをつくったら、それをもとにビヘイビアアイデンティティを作成、行動様式を構築していきましょう。ビヘイビアアイデンティティは、社員の今後の行動に大きな影響を与えるものです。
企業イメージにも大きく関わるため、浸透できる内容にしていく必要があります。
コーポレートアイデンティティの手順
コーポレートアイデンティティの手順は次のとおりです。
- 現状の調査・分析
- ブランド戦略の立案
- ブランディングデザインの開発・展開・運用
ブランディングデザインの開発では、ロゴはもちろん、ネーミングやブランドカラー、名刺、Webサイトなどあらゆる視覚的情報をコーポレートアイデンティティに沿って開発していきます。
コーポレートアイデンティティデザインのまとめ
コーポレートアイデンティティデザインを行えば、経営者の価値観を引き出して、ブランドの創出や企業方針の確立が行えます。ただ、コーポレートアイデンティティデザインを実施しただけでは、認知度や信頼度、ブランド力は向上させられません。
企業理念や方針を明確にしても、ロゴやWebサイトなどのデザインに落とし込んでいなければ、一貫性のある世界観で訴求できないからです。したがって、コーポレートアイデンティティデザインを実施する際は、コーポレートアイデンティティの視点を持って、取り組むことが重要です。