お客様の声とは?
製品やサービスを利用したお客様から寄せられる「お客様の声」は、企業にとって非常に貴重なものです。
お客様からのレビューは、市場のニーズを的確に反映しています。
そのため、企業はお客様の声を参考・活用することで、サービスの質やユーザー体験を向上させ、消費者行動の急速な変化に対応しやすくなります。
お客様の声を広く収集することは、サービス向上のきっかけとなるため、担当者だけに留めるのでなく、全従業員に情報共有することが大切です。
お客様の声を集めるメリット
お客様の声を集めるメリットは以下の通りです。
- サービス・マーケティングに活用
- 顧客満足度の向上
- 機会損失の防止
- 従業員満足度の向上
- 市場動向をつかみやすくなる
一つずつ解説します。
サービス・マーケティングに活用
お客様は従業員に不満を率直に言わないことがよくあります。
来店されなくなったお客様から理由を尋ねることができないと、お店側は改善がしにくいものです。
お客様の声を通し率直な意見を把握することで、自社だけでは気づかなかった改善点に気づくことができるでしょう。
顧客満足度の向上
顧客満足度を高めるための効果的なアプローチは、苦情やクレームに対して迅速に対応することです。
日本カスタマーロイヤルティ協会の創設者である佐藤友康は、この現象を「グッドマンの法則」と名付けています。佐藤氏は不満を持つお客様の中で、不満を口にし、解決に満足した人は、不満があっても黙っている人よりもその商品やサービスを再び利用する傾向が強いと述べています。
そのため、お客様の声に耳を傾け、問題があればすぐに対処することで、より前向きな顧客満足につながる可能性が高いのです。
機会損失の防止
お客様の声には「こんな体験がしたい」「こんなものを買いたい」とった、さまざまな要望が反映されています。
こうした声を集めることで、お客様が求めるサービスや商品を適切に提供することができます。
また、お客様の声を反映させたとしても、一定期間が経過すると、お客様のニーズは変わる可能性があります。
そのため、お客様の声を継続的に収集し、定期的に見直すことをおすすめします。
従業員満足度の向上
商品やサービスに対するお客様の反応は、企業努力の大きな原動力です。
その声を組織内で共有することで、生産や販売を担当する従業員の活力にもつながります。
市場動向をつかみやすくなる
インターネットの登場により、お客様の要望は以前よりずっと早いスピードで変化しています。
そのため、前年度の顧客データをもとに商品やサービスを作ることは、かえって失敗に終わる可能性が高いともいえます。
そのためお客様の声で商品・サービスの満足度・不満足度を把握し、最新の市場動向を掴むことが重要です。
お客様の声を集める方法
お客様の声を集める代表的な方法は以下のとおりです。
- SNS・口コミ
- プレゼント・割引
- アンケート
- インタビュー
- モニター・コンテスト
一つずつ解説していきます。
SNS・口コミ
多くのウェブサイトでは、体験談を投稿できるレビュー機能を備えています。
これらのサイトでは、レビューが優れているお店は評価が高くなります。
さらに、ソーシャルメディアやハッシュタグで店舗を検索し、お客様が自由にコメントを投稿することも可能です。
他にも企業側はソーシャルメディアで投票やアンケートを作成することで、より簡単にお客様の声を収集することができます。
プレゼント・割引
商品に関する感想を単純に聞いただけでは、ほとんど反応がないことが多いですが、回答と引き換えにプレゼントを渡せば、お客様の声をより集めやすくなります。
プレゼントの費用を考慮しても、お客様の声を集める事を考えるとコストパフォーマンスが良いでしょう。
そのためお客様からの意見は、無料で集めるものと考えず、多少費用をかけても集めることをおすすめします。
アンケート
アンケートで意見を集めるのも効果的です。
アンケートは簡単な質問が書かれた調査票を印刷し、回収箱を設置する必要があります。郵送でお客様に送りアンケートを依頼しても良いでしょう。
インタビュー
インタビューは、よりリアルなお客様の声が拾いやすい方法です。
インタビューの様子を音声やビデオ記録し、コンテンツ化につなげるのも良いでしょう。
モニター
新製品を発表したり、新しいサービスを提供したりするとき、一般的にはお客様の声を聞くことができません。この難問を解決するには、「モニター募集する」ことです。
商品やサービスを無料で提供し、その代わりに感想を聞きます。さらに、正式な発売前にこのキャンペーンを実施すれば、意見を得るだけでなく、改善もできるため、一度に2つの目的を達成することができます。
またコンテストも意見を集める有効な方法です。
せっかくお客様の声を集めるのであれば、サービスの良さや特徴を伝える適切なコメントを多く集めたいですよね。
最も簡単な方法は、「一番お客様の声を集めた人に賞品を与える」というコンテストを行うことです。
賞品が魅力的であればあるほど、モチベーションが上がり、お客様の声が集まりやすくなります。
お客様の声を活用できていない企業は多い
顧客の声を毎年蓄積している組織は増えており、2018年の調査では、調査対象企業の95.7%がそうであることが明らかになりました。
しかし、このフィードバックを活用していることを認めたのはわずか30%で、残りの70%の組織は活用していません。
意見を集めて終わりという企業が増えている企業が多いので、対応策が必要といえるでしょう。
お客様の声を集める際の注意点
お客様の声を集める際は、以下2つのポイントに注意しましょう。
- インセンティブを適切に設定する
- Web上にお客様の声を掲載する場合、事前に案内するい
報酬が高すぎると、お客様の意見が歪みやすく、正確な回答が得られにくくなります。逆に報酬が低いと、お客様の声がなかなか集まりにくいでしょう。
またWebサイトにお客様の声を掲載する場合は、公開する際の透明性を確保することが必要です。もし事前に案内を伝えず公開すると深刻な事態を招き、企業の信用に関わる恐れがあります。
魅力的な声を集めるポイント
ただやみくもに意見を求めても、期待するようなお客様の反応は得られないでしょう。より魅力的なお客様の声を得るためには、2つのポイントが重要です。
1つ目は、使用前と使用後の状態を明らかにしてもらうことです。
導入前と導入後の違いとともに、活用のプロセスを説明してもらうことは、声を集めるための有力な方法です。
この体験談は、その商品やサービスの有効性を裏付けるものとして実施することができ、信憑性を高められます。
2つ目は、顧客からの問い合わせや反論を想定しておくことです。
製品やサービスの利点や特性について読んでいるうちに、様々な疑問や異論を思うかもしれません。そんな時こそ、お客様の視点に立ち、意見を求めて改善点を聞いていきましょう。
お客様の声の集めるステップ
お客様の声を集めるステップは以下の3つです。
- 目的の設定
- 目的に合った集め方の選択
- 分析
一つずつ解説していきます。
1.目的の設定
最初はお客様の声を集める目的を設定します。
「否定的な意見を集めてサービスの改善や苦情の拡大を防ぐため」「肯定的な意見を集めて改善策や販促計画を打ち出すため」など、企業によって目的は違います。
お客様の声を集める目的によって、必要な施策は異なってきます。
目的が明確でない場合、適切な施策が見いだせず、成果に結びつかない可能性が高いため、必ず設定をしましょう。
2.目的に合った集め方の選択
目的を定めたら以下4つの主要な調査方法の中から、適した方法を選びお客様の声を集めていきます。
- アンケート
- テスターの募集
- コールセンター
- ソーシャルメディアプラットフォーム(Twitter、Instagramなど)
どの方法にもメリットとデメリットがあるため、目的に一番合った方法を選ぶことが大切です。
3.分析
2018年の調査では調査対象企業の95.7%が、毎年お客様の声を集めていることが明らかになりました。
しかし分析まで行えている企業はそのうちわずか30%で、残りの70%はお客様の声を活用できていないようです。
意見を集めて終わりという企業が増えているため、対応策が必要といえるでしょう。
お客様の声を上手に活用するコツ
お客様の声を上手に活用するコツは以下の通りです。
- 目的合った収集方法の選択
- 仮説・検証を行う
- 情報を数値化・分析
一つずつ解説していきます。
目的合った収集方法の選択
ユーザーの嗜好が多様化していることを考慮し、目的に応じて効果的に回収する方法を選択することが重要です。
仮説・検証を行う
目的に合った収集方法を選択したら、正確な仮説を立て、実験によって検証していきます。プロトタイピングを行い、結果を検証し、発見された問題を定義し、改良を加え、実施することで、必要な情報を迅速に得ることが可能です。
理論的な考察を行うためにも、仮説と検証のサイクルは絶えず回すようにしましょう。
情報を数値化・分析
収集したデータを数値化した後は、多数派の意見だけでなく、少数派の意見で示されたアイデアもデータに照らして精査することが必要不可欠です。
例えば、あるカスタマーサービスが、コンピューター機器のオーバーヒートに関するフィードバックを受け、他に同様の事例が報告されていないことから、その苦情を却下する傾向にある場合があります。
しかし、これは非常に深刻な問題であることが判明する可能性があります。
新製品を開発するため、あるいは既存のサービスを向上させるために、お客様の声だけを利用することは不適切です。
そのため、データを監査する際には、多数派の意見だけでなく、状況に応じて少数派の意見も考慮する必要があります。
「お客様の声」の活用事例5選
「お客様の声」の活用事例として次の5つが挙げられます。
- サッポロビール
- ディズニー
- コカ・コーラ
- ロート製薬
- ハウス食品
それぞれ詳しくみていきましょう。
サッポロビール
サッポロビール(株)では、ISO10002に基づき、お客様の声を「声」と「指摘」に分けて管理しています。
営業担当者はノート型の「お客様訪問時確認事項メモ」を持参し、指摘に即座に対応できるようにしています。
また、経営会議では「声」を配布し、定期的に「接客音声を聞く会」を全国で実施。「お客様起点の活動」を大切にすべく、組織全体でお客様の声が活用されています。
ディズニー
ディズニーリゾートをより良いものにするために、お客様の意見や満足度は非常に重要視しており、重要な意見は全社で共有しているようです。
また、批判的な意見には迅速に対応し、お客様の悩みを解決した結果、ディズニーは高く評価され、98%という驚異的なリピーター率を叩きだしています。
コカ・コーラ
日本コカ・コーラ株式会社では、お客様相談室に寄せられたお客様の声を社内データベースとして整備し、全従業員がイントラネットで閲覧できるようにしています。
また、お客様の声を毎月関連部署に報告し、改善点をホームページに反映させています。
ロート製薬
ロート製薬はお客様の声から隠れたニーズを探り出し、より適切な商品・サービスの設計につなげました。
ロート製薬はお客様の生の声を吸い上げるため、各種製品の相談窓口「お客様安心サポートデスク」を開設しました。得られたデータは、全社に回覧され、現在の商品・サービスの向上に役立てられました。
ハウス食品
ハウス食品株式会社では、お客様の声をFランクシステム(不快度の評価)で評価する品質向上プロジェクトをリードするため、全社横断的な問題解決クルー「QUIC」を開発しました。
F1(不快・不安が少ない)、F2(不快・不安がある)、F3(苦痛・不安が大きい)のFランクシステムで、お客様の声を評価する品質向上プロジェクトを主導しています。
また「製品のリニューアル時には新規アレルゲンを追加しない」といったルールを設け、お客様の苦痛や不安の軽減に努めています。
お客様の声 集め方のまとめ
お客様の声は集める量だけでなく、質にも気を配る必要があります。そのためには、適切な手法とインセンティブによって、自社に適したお客様の声を得る方法を発見することが重要です。
お客様の声を集めて、組織のサービス向上に努めましょう。