DXってよく聞くけど具体的には何のことなんだろう?
この記事ではDXが何かと、DXが必要な背景を簡単に説明いたします。
目次
DXとは?
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、企業がビッグデータやAIなどのデジタル技術を活用して、業務効率や新規事業の創出、組織風土の変革などを実現させることです。
レガシーシステム問題やデジタル技術の進歩、市場のグローバル化などによって市場変化が激しい中で競争優位性を維持し続けるためにはDX推進が欠かせません。
DXの意味・定義
DXはスウェーデンにあるウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって提唱された概念です。
元々は「進化し続けるテクノロジーが人々の生活を豊かにしていく」という広義的な内容でした。
しかし、徐々にビジネス領域への意味と変革し、現在は「既存の枠組みや価値観をすべて破壊し革新的なイノベーションをもたらす概念」と定義されています。
DXの変遷
経済産業省が発表した「DXレポート」を見ると、時期の変化とともに、DX推進における課題やトレンドは変遷しています。
そのため、DXを推進する際は、トレンドの変遷を理解しながら取り組んでいかなければなりません。
DXの変遷は具体的に次のとおりです。
- 2018年:技術進化によるIT人材不足・レガシーシステムの老朽化などを発端として2025年の崖問題への警鐘
- 2020年:企業文化変革による古い企業文化からの脱却の重要性を指摘
- 2021年:ユーザー企業とベンダーの相互依存関係によるデジタル変革を阻むリスク
- 2022年:デジタル産業の変革に向けた具体的な3つの行動の指摘
DX化とIT化の違い
IT(Information Technolog)とは、ネットワーク技術・コンピューターの総称です。
DX化が組織全体の風土や仕組みそのものを変化させることに対して、IT化は業務効率化や生産性向上を目的に既存業務をデジタル化させるという意味となります。
したがって、IT化はDX化と比べると限定的な意味であり、DX推進に向けた手段の1つとなります。
DXが必要とされている4つの背景
DXが必要とされている背景は次の4つです。
- レガシーシステム問題と経済損失
- 世界市場での競争力確保
- 新型コロナウイルス流行による働き方改革
- デジタル技術の高度化
それぞれ詳しく解説します。
1.レガシーシステム問題と経済損失
レガシーシステムとは、システムの肥大化による複雑化や、ブラックボックス化などによって柔軟性がなくなり、最新技術の適用が困難なシステムのことです。
メインシステムに構築から20年以上経過したレガシーシステムを使用している企業は少なくありません。
このままレガシーシステムを使用し続けると最新のデジタル技術への刷新が遅れてしまい、2025年以降には年間最大12兆円の経済損失が生じるリスクが報告されています。
レガシーシステムから脱却し、経済損失を抑えるためにDXの重要性は高まりつつあります。
2.世界市場での競争力確保
グローバル市場において日本の競争力が低下した大きな要因の1つがIT化の遅れです。
インターネットの発達やスマホの普及で市場がグローバル化しているなかで、競争力を維持・向上させていくためには、商品・サービスの開発だけでなく、DXも推進していく必要があります。
3.新型コロナウイルス流行による働き方改革
2020年の新型コロナウイルス流行をきっかけにリモートワークへの切り替えを実施する企業が増えました。
切り替えに向けてリモートワーク環境を整備する中で、DXが必要不可欠である状況に直面した企業も少なくありません。
リモートワークの推進や働き方改革にも企業がDX推進する大きな理由の1つとなっています。
4.デジタル技術の高度化
新型コロナウイルスの流行をきっかけにデジタル化への対応は企業の最重要課題となりました。
また、デジタル技術の急速な進歩によって、AIや5G、IoTなどの最新技術が次々と登場している他、顧客ニーズが複雑化してトレンドの変化も早いです。
競争が激化する市場で顧客を惹きつけ続け、今後も生き残っていくためこれら最新技術を上手く活用するとともに、収集したデータを活用し続ける仕組みの構築が欠かせません。
このように現代のビジネスではICTが必要不可欠となっており、DXの重要性は年々増しています。
DXの実現で解決できるとされる社会課題
DXを実現できれば、事業の継続・拡大だけでなく、現在抱えている様々な社会問題を解決できるといわれています。
DX実現によって解決が期待されている社会問題は次のとおりです。
- 2025年の崖問題
- 物流の2024年問題
- グリーントランスフォーメーション(GX)の実現
- 医療DX
- 人口減少・高齢化による労働不足(2040年問題)
- 気候変動・エネルギー問題(2050年カーボンニュートラル)
DX推進のステップ
DX推進の手順は次の4ステップです。
- 現状・課題の把握
- 体制の構築・整備
- デジタル化による業務効率化
- データの蓄積・分析・活用
それぞれ詳しく解説します。
1.現状・課題の把握
DX推進をはじめる際は、まず自社の現状を把握していくことが大切です。
人材の能力・適性はもちろん、既存システムや情報資産など、会社のあらゆるものを可視化し把握していきます。
現状を把握したら洗い出した情報をもとに、自社の強み・弱みを明確にしてDXの方向性を定めていきます。
この際、洗い出した情報をまったく更新しないというのはおすすめしません。
DXを効率的に推進し、競争力を向上させるためには、DX推進にともなって情報も随時更新し、常に企業の最新情報を把握できる状態にしておく必要があります。
2.体制の構築・整備
DXを推進するには、DX人材はもちろん、それら人材を支える体制の構築が必要不可欠です。
そのため、既存体制での対応有無を確認し、難しい場合は新しい専門部署やチームの立ち上げの検討も必要となります。
また、DX人材を確保する方法は、外部人材を確保する方法と、既存社員のリスキリングによって自社内でDX人材を育成する方法があります。
3.デジタル化による業務効率化
デジタル化によって業務を効率化すれば、会社全体の生産性を向上させるとともに、DX実現によって得られるメリットの社内周知が可能です。
このデジタル化はDXのきっかけをつくり、全社的な業務最適化や生産性向上につなげるために実施するものです。
そのため、部署ごとの短期的な視点ではなく、DX推進チームが主体となり全社的かつ長期的な視点を持って取り組まなければなりません。
4.データの蓄積・分析・活用
あらゆる業務をデジタル化すれば、売上動向や業務効率性、顧客の行動履歴など、様々な情報をデータとして収集し、蓄積できます。
蓄積したデータを適宜分析して活用すれば、自社のビジネスを深く理解できるため、新規事業の創出が可能です。
また、データに基づくことで精度の高い意思決定ができるため、組織変革の促進や、企業の競争力向上につながり、DX推進の成果が目に見えて分かるようになってきます。
DXを実現するために押さえておくべき5つのポイント
DXを実現するために押さえておくべきポイントは次の5つです。
- DX戦略
- 導入するデジタル技術
- DX人材の確保・育成
- アジャイル文化の形成
- 経営者が積極的に参加する
それぞれ詳しく解説します。
1.DX戦略
DXを推進する際に重要なのは、戦略的に進めていくことです。
DXは社内全体で取り組むべき課題であるため、担当者を決めて一任しているようでは、社内全体で協力を得られず、DXを実現させられません。
DXを推進したいのであれば、DXの担当者やチームを主体としつつも、社内全体で協力できる体制を構築し、費用・期間も加味しながらDX推進に向けて戦略を立てていく必要があります。
2.導入するデジタル技術
DX推進に役立つデジタル技術は様々なものがあります。
DX実現に役立つとされ、注目されているデジタル技術は次のとおりです。
- AI
- ビッグデータ
- 5G
- クラウドコンピューティング
- IoT
- RPA
どの技術もDXには欠かせませんが、それぞれ特徴があるため、むやみに導入していては費用対効果を最大化できません。
そのため、自社の課題を明確にしたうえで、課題解決につなげられる可能性の高い技術を導入・活用していく必要があります。
3.DX人材の確保・育成
DX推進では、人材の選定がとても重要です。
DXを実現するためには、各企業のやり方を見つける必要があるため、課題の明確化や戦略の立案などにおいて、企業の業務全般を把握しておく必要があります。
したがって、DX人材はデジタル技術やデータ活用のスキルだけでなく、企業の構造や業務内容全体の知識が豊富でなければなりません。
そのため、デジタル技術に精通している人材は外部から確保できますが、会社業務に精通している人材は社内から見つける必要があります。
また、企業全体で取り組むDXの性質上、各部署の管理者とコミュニケーションを取って連携する能力や、経営層にデジタルツールの必要性を解説し、承諾を得る効力も必要です。
そのため、DXを推進する際は、人材の確保だけでなく、育成も視野に入れながら、長期的な視点で取り組んでいく必要があります。
4.アジャイル文化の形成
アジャイルとはソフトウェア開発手法の1つとして浸透した用語で、優先順位の高い要件から順番に機能単位の細かいサイクルを繰り返す開発手法のことです。
これまで主流だったウォーターフォール型の開発手法と比べると、仕様変更への対応力が高く、製品価値の最大化に主眼を置いています。
DX推進では時代や顧客ニーズの変化に合わせて、開発要件やビジネスモデルを柔軟に変化させなければなりません。
そのため、これまでのようなプロジェクトの進め方や、システム・ツール導入による場当たり的な業務改善では、全社的なデータ連携やビジネス変化に柔軟に対応できないリスクが高いです。
アジャイルは急速に変化するビジネス環境に柔軟に対応し続けなければならないDX推進と相性が良い思考方法だといわれています。
DXを実現し、今後もDX企業として成長し続けるためには、アジャイル文化の形成も押さえておくべきポイントの1つです。
5.経営者が積極的に参加する
DX担当者に丸なげしている状態では、担当者ばかりに負担がかかる他、企業全体の意思統一も難しくなるため、DXを実現できません。
DXを実現するためには、経営者が明確な戦略の方向性を示し、DX推進を深く理解して積極的にプロジェクトへ参加することが大切です。
DXの成功事例
DXの成功事例として次の3事例を解説します。
- 大塚デジタルヘルス
- Amazon
- Netflix
それぞれ詳しくみていきましょう。
1.大塚デジタルヘルス
大塚デジタルヘルスは、大塚製薬と日本アイ・ビー・エムの合併会社で、精神科医療のデジタルソリューション事業を展開しています。
元々、精神科医療は病歴・症状など重要医療がほとんど数値化されていなかったため、電子カルテでは自由記述となっており、膨大なデータが活用されていない状態でした。
大塚デジタルヘルスは数値化しにくい病歴・症状などを自動的に統合・分析してデータベース化することで医業従事者が医療データを活用して、質の高い医療を提供できる支援技術を開発しました。
2.Amazon
ECサイトで有名なAmazonは、クラウドコンピューティングサービスのAWS(Amazon Web Service)を提供しています。
AWSはECサイトのインフラ技術革新から生まれたサービスで、現在では世界のクラウドサービスのシェアは1位となっています。
AWS提供開始時、クラウドコンピューティングはほとんど普及していませんでしたが、将来ニーズを捉え技術革新を進めた結果、Amazonは世界トップクラスの大企業へと成長しました。
3.Netflix
NetflixはDXを繰り返した結果、グローバルになった企業として有名です。
1997年の創業以降、無店舗ビデオレンタル、サブスクサービスへの展開、動画ストリーミング配信の転換、オリジナルコンテンツ配信と、約20年間で4度のDXを実施しています。
また、ゲーム事業への進出に向けて5回目のDXを実施しており、DX推進の見本となる企業です。
DXとは 簡単に まとめ
DXとは簡単にいえば、デジタル技術を活用して業務効率化や新規事業の創出、組織の風土・意識そのものを根本から変革することです。
言うのは簡単ですが、これまでの業務プロセスや醸成されてきた社員の意識を全く新しいものに作り替えることから、短期間で実現できるものではありません。
また、DXのトレンドは日々変遷している他、最新のデジタル技術も様々登場していることからDXは環境の変化に柔軟に対応していく力も求められています。
DXを実現するためには、企業の課題点をしっかりと理解したうえで、戦略を練り、アジャイル文化を形成しながら長期的な視点で全社的に取り組んでいくことが大切です。