代表的なECサイトの開発方法
代表的なECサイトの開発方法として次の4つが挙げられます。
- フルスクラッチ型
- パッケージ型
- オープンソース型
- ASP型
それぞれ詳しくみていきましょう。
1.フルスクラッチ型
フルスクラッチ型とは、システムをイチから設計・開発する方法です。開発効率の観点からフレームワークを使用する場合もありますが、一般的にはパッケージなどに頼らず開発していきます。
フルスクラッチ型はAmazonなどのECモールのようなECプラットフォームを開発する際に使用される方法です。そのため、個別ECサイトでの制作ではあまり使用されません。
2.パッケージ型
パッケージ型とは、ソフトベンダーが開発した有料アプリやソフトウェアを、自社システムにインストールして開発する方法です。代表的なパッケージ型ECとして、コマース21やEC-Orangeなどがあります。
イチからシステムを設計・開発するわけではないため、フルスクラッチ型の開発費用よりは安いです。しかし、オプション機能などを実装し、独自性を強化する場合はフルスクラッチ型と同様の費用がかかる可能性があります。
3.オープンソース型
オープンソース型とは、プログラムコードが無償公開されているソフトウェアを使用する開発方法です。すでに公開されているソフトコードを使用するため、工数を削減しながら、短期間でECサイト開発が可能であり、改修・再配布も自由です。
ECサイト開発で有名なオープンソースとしては、magentoやC-CUBEなどが挙げられます。上記2つの開発方法と比べると開発費用はかなり安く抑えられますが、大規模なECサイト開発を外注するなどした場合は、フルスクラッチ型と同等の費用がかかる可能性があります。
4.ASP型
ASP(Application Service Provider)型とは、ECサイト開発に必要な機能を入手できるクラウド型サービスです。クラウドであれば自社にサーバーを設置せず、インターネットを活用してシステムを使用できます。
災害によってサーバーが破壊されるリスクがないため、BCP対策としても有用です。ASP型の代表的なサービスとしては、カラーミーショップやBASEなどがあります。
ECサイトの開発費用相場
フルスクラッチ型はイチから設計・開発を行わなければならず、高度な開発スキルが求められます。そのため、費用相場は500万円以上するケースが多いです。
パッケージ型の場合、100万円からとなりますが、オプション機能を追加して独自性を高める場合は、500万円程度かかる可能性があります。
オープンソース型の場合、開発費用相場は10万円からとなります。ただし、開発を外注に依頼する場合は費用が高くなる傾向にあり、大規模なECサイト開発を外注してしまうと、500万円以上かかるケースもあるため、注意が必要です。
ASP型での開発費用相場は100万円程度となります。
このようにECサイトの開発費用相場は、開発方法や実装する機能などによって大きく異なります。ECサイトを開発する際は制作目的を明確にし、依頼前に必要な機能と不要な機能を線引きしておかなければなりません。
【開発方法別】ECサイトを外注・自社開発するメリット・デメリット
ECサイトの開発方法は大きく分けて次の2つです。
- 外注
- 自社開発
ここでは各開発方法の概要やメリット・デメリットについて詳しく解説します。
外注
外注依頼とは、ECサイト制作を外部の制作会社に依頼することです。サイト制作技術を持たない企業がECサイトを制作する方法は、外注もしくは、サイト制作スキルのある人材を雇用するしかありません。
しかし、新規スタッフを雇用するのは時間がかかります。そのため、社内体制を整備士ながら長期的なプロジェクトとして行わない限りは外注する企業がほとんどです。
また、近年は働き方改革や新型コロナウイルスの流行をきっかけに、フリーランスとして活動するサイト制作者も増えてきました。企業に依頼するよりもコストを抑えられることから、フリーランスに外注する企業も多いです。
メリット
専門的な知識・ノウハウ・スキル・経験を持っていることから、質の高いECサイトを構築できるのが外注する最大のメリットです。外注費は外注する内容によって費用が変動することから、新しい人材を雇用するよりもコストを抑えられます。
また、専門的な人材を豊富に雇用していることから、質の高いECサイトを素早く構築することが可能です。従業員の1人が長期的に休んだり、退職したりしても、人材が豊富であれば、他の人材でカバーできるため、スケジュールどおりに納品してもらえるといったメリットもあります。
デメリット
外注のデメリットはコストがかかることです。自社開発の場合、人件費やその他費用ですみます。
しかし、外注の場合は制作するECサイトの規模・機能・開発方法などによって費用が大きく変動する他、リリース後の運用も依頼する場合、継続的なコストがかかります。予算が限られている場合、予算との兼ね合いを慎重に検討したうえで外注しなければなりません。
自社開発
サイト制作スキルのある人材が社内にいる場合、自社でECサイトを開発できます。自社開発であれば、デザイン・レイアウト変更や機能追加を自由に行うことができ、追加費用がかかりません。
頻繁に更新・修正を行う場合、自社にサイト制作者がいれば、すぐに依頼・対応できます。また、近年は業務効率化の観点から、企画・デザインは自社で行い、コーディングだけは外注するなど、作業内容によって自社開発・外注を使い分ける企業も増えてきました。
メリット
自社開発の最大のメリットは自社が思い描くECサイトを自由に構築できる点です。外注の場合、実装する機能によっては追加費用がかかる可能性があります。
しかし、自社開発であれば、追加費用を気にする必要がありません。そのため、自社の希望どおりかつ、スムーズにサイト構築することが可能です。運用の自由度も高いため、自社のビジネスに基づいた施策を迅速に反映させられる他、デザインにもこだわれるため、細かいブランディングも行えます。
デメリット
自社開発の場合、システムの要件定義からリリース後の運用に至るすべてを自社に対応しなければならないため、従業員の業務負担が大きくなります。サイト制作が行える人材が1人しかいなかったり、他業務を兼任したりしている場合、通常業務に支障が出てしまい、商品開発などに悪影響を及ぼす可能性もゼロではありません。
また、近年はサイト構築ツールの登場で、専門知識がない方でも簡単にECサイト制作ができるようになりました。しかし、サイト構築ツールはシステム連携やデザイン、カスタマイズに制限が生じる可能性が高く、クオリティが低くなりがちです。
そのため、開発費用は抑えられても、売上が向上しないなどのリスクもあります。
【開発方法別】ECサイトの開発手順
どのような流れでECサイトを開発するのか気になる方も多いでしょう。ECサイトは開発方法によって手順が異なります。
- 外注依頼した際のECサイト開発手順
- ASPを使用してECサイトを自社開発する手順
ここではECサイトの開発手順を上記2シーンに分けて解説します。
外注依頼した際のECサイト開発手順
外注依頼した際のECサイト開発手順は次の6ステップです。
- 依頼先の選定
- ECサイトの要件定義
- サイトの設計
- サイトの開発
- テストの実施
- ECサイトの公開・運用保守
それぞれ詳しくみていきましょう。
1.依頼先の選定
様々なECサイト制作会社があり、会社によって強みや特徴は異なります。そのため、外注する前には、どんなECサイトを開発したいのか明確にする必要があります。
依頼先選定時に明確にしておくべき項目は次のとおりです。
- 自社の現状・課題点
- ECサイトを開発する目的
- 必要なサイト機能
また、外注を検討している会社には、提案依頼書(RFP)の作成がおすすめです。提案依頼書を作成しておけば、依頼内容を整理できる他、相見積もりをした際に比較しやすい、社内の意見をまとめやすいといったメリットを享受できます。
2.ECサイトの要件定義
外注した開発会社は発注側のヒアリングを実施しながら、ECサイトの要件定義をしていきます。要件定義時に洗い出す項目は次のとおりです。
- カートや決済、各種システムとの連携といった必要機能
- 開発方法・工程
- 人員
- 予算
要件定義時に必要な機能や工程が不明瞭になると、大規模な修正によって出戻りが大きくなり、リリース予定日までに納品されなくなるリスクも生じます。そのため、この段階で要望を細かく伝えて、納得できるまで打ち合わせをすることが大切です。
3.サイトの設計
要件定義が終了したら、洗い出した項目をもとにサイトの設計を行います。サイトの設計には大きく分けて次の2フェーズがあります。
- 基本設計
- 詳細設計
基本設計は要件定義の内容をもとに、コンテンツやサイトの構築、デザインなど、サイト機能やレイアウトなどを決めるフェーズです。基本設計は発注側が関与できる最後のステップとなるため、ここでしっかりと関わっておきましょう。
基本設計が終了すると、詳細設計に移行します。詳細設計とは、基本設計をもとにプログラマーが実装するフェーズとなり、外注先主導で作業が進みます。
4.サイトの開発
サイトのコーディングが行われるのがこのステップです。サイトの骨格となるHTMLやデザインをつかさどるCSS、Webブラウザに動的な要素を加えるJavaScriptなどを駆使して実際にECサイトが開発されています。
詳細設計と同じく、外注先が主体となって実装していくため、発注側が関与することはほぼありません。
5.テストの実施
サイト開発が終了したら、エラーやバグがないかテストを行います。テストは「単体テスト」「結合テスト」「総合テスト」「受入テスト」の4フェーズがあり、単体テストと結合テストは外注主導で行うことが一般的です。
しかし、結合テストと受入テストは発注側も積極的に参加することをおすすめします。総合テストを早めにクリアできれば、余裕をもってサイトリリースまで準備を進められます。
6.ECサイトの公開・運用保守
ECサイトを公開し、実際に商品を販売していきます。しかし、ECサイトは運用してからが本番です。
システム運用やサイトの監視、メンテナンス、システム保守、効果検証をしてサイトの改修などを行っていきます。また、システム障害が頻繁に起こったり、システムが止まる時間が長かったりするほどユーザー評価は低下します。
そのため、システムダウンしないよう常に気を配り、障害発生した場合でも迅速に復旧できるよう対応フロー図を準備しておくとよいでしょう。
ASPを使用してECサイトを自社開発する手順
ASPを使用してECサイトを自社開発する際の手順は次の3ステップです。
- ASPの選定・アカウントの作成
- サイトの構築
- ECサイトの公開・運用保守
それぞれ詳しくみていきましょう。
1.ASPの選定・アカウントの作成
まずは自社の課題・目的・予算に適したASPを選定します。選定する際のポイントは次のとおりです。
- ASPにかかる初期費用・月額費用・決済手数料などのコスト
- 操作のしやすさ
- カートのカスタマイズ性
- 外部システムとの連携有無
- 取り扱い可能商品数
- サポート内容の充実性
- レスポンシブデザインへの対応有無
上記ポイントをもとに使用するASPが決まったら、ASPのアカウント作成を行いましょう。
2.サイトの構築
ASPのアカウント作成が終了したら、ECサイトの構築を行います。サイトデザインやロゴ、お問い合わせフォーム、必要なページなどを作成して、ECサイトの骨格をつくります。
サイト構築時にはECサイトで販売する商品情報、在庫情報、関連商品といった各種項目も入力していくとよいでしょう。
3.ECサイトの公開・運用保守
ECサイトの構築が終わったらサイトを公開して、商品販売を行います。ただし、ECサイトを公開したら終わりというわけではありません。
効果検証を行いながらサイトを改修したり、SEO対策やリスティング広告などのマーケティング施策を行ったりして集客力を高めていく必要があります。また、利便性の高いECサイトにするためには、サイトの案内図であるサイトマップをしっかりと作りこまなければなりません。
ECサイト開発 まとめ
WordPressといったサイト構築ツールの登場で専門知識がない方でも簡単にECサイトを構築できるようになりました。しかし、この方法だと機能やデザインなどに制限が生じる他、クオリティも低くなりがちで、開発費用は格安にできても、売上が向上しないなどのリスクがあります。
そのため、思い描いたとおりのECサイトを構築し、売上向上に寄与したいのであれば、ECサイトを外注することをおすすめします。ただ、ECサイトの開発方法は様々ありますし、同じ開発方法であってもサイトの規模や機能などによって費用はピンキリです。
費用対効果の高いECサイトを開発するためには、必要な機能は何かを明確にし、予算との兼ね合いを慎重に検討する必要があります。