補助金とは?
「補助金」とは、国・地方自治体が政策を推進するため、企業・団体に交付して事業支援するものです。年数回公募が行われ、採択された事業に対して補助金が給付されます。
経済産業省や地方自治体が管轄しており、補助金の財源としては税金が用いられます。
補助金と似た制度として挙げられるのが「助成金」です。助成金も企業・団体に交付されるものですが、交付目的は労働環境・雇用の改善となります。また、管轄が厚生労働省、財源が厚生労働省であり、申請要件を満たしていれば支給を受けられることから、両者は似て非なるものです。
補助金を調べる5つの方法
補助金を調べる代表的な方法として次の5つが挙げられます。
- J-Net 21
- ミラサポplus
- 商工会議所・産業振興センター
- みんなの助成金
- 自治体ホームページ
それぞれ詳しくみていきましょう。
1.J-Net 21
「J-Net 21」は独立行政法人・中小企業基盤整備機構が運営しているホームページです。
ホームページ内にある支援情報ヘッドラインという機能を使用すれば、国・全国都道府県市区町村が提供している補助金・助成金を探すことができます。
2.ミラサポplus
「ミラサポplus」は中小企業庁と経済産業省が共同運営しているホームページです。中小企業・小規模事業者を対象に地方自治体の補助金・助成金を探すことができます。
検索機能も充実しているため、簡単に補助金・助成金を探せるのが特長です。
3.みんなの助成金
「みんなの助成金」は社労士や税理士、行政書士といった士業の専門家が本当に使える助成金・補助金を厳選して掲載しているホームページです。
地方自治体の補助金・助成金が対象ですが、助成金の診断から受給までサポートしてくれます。
4.自治体ホームページ
ここまで補助金を調べる方法を解説してきましたが、現行の補助金が掲載されているとは限りません。国・都道府県が主体の補助金と比べて、区市町村関係の補助金情報は少なく、掲載されていない可能性もあるからです。
漏れなく補助金情報を確認したい方は、自治体ホームページで直接調べることをおすすめします。
5.商工会議所・産業振興センター
商工会議所や産業振興センターは、管轄エリアの事業者を対象に様々な経営情報を発信しています。補助金・助成金事情にも精通しているため、企業状況や業種、目的に応じて、利用できる制度がないかアドバイスしてくれます。
J-Net 21などで探しても分からないという方は、商工会議所・産業振興センターに相談した方がよいでしょう。
WEBサイト制作で活用できる補助金
WEBサイト制作で活用できる補助金としては以下が挙げられます。
- IT導入補助金
- 小規模事業者持続化補助金
- 事業再構築補助金
- 地方自治体が給付する補助金
WEBサイト制作で活用できる代表的な補助金は、やはり「IT導入補助金」「小規模事業者持続化補助金」「事業再構築補助金」の3つです。ただし、東京都練馬区の「令和4年度ホームページ作成費補助金」、江東区の「ホームページ作成費補助」などのように、自治体が独自に監修している補助金もあります。
公募要件によっては国の補助金に上乗せするかたちで給付される補助金もあるため、WEB制作に補助金を活用する際は、地方自治体の補助金の有無も確認するとよいでしょう。
当記事では代表的な補助金である「IT導入補助金」と「小規模事業者持続化補助金」の2つを解説していきます。
IT導入補助金
「IT導入補助金」とは、業務効率化や生産性向上などの促進を目的に、平成28年度(2016年度)より開始された補助金です。産業省と独立行政法人中小企業基盤整備機構が監修しており、ルールや補助対象の定義が毎年変更される補助金としても有名です。
IT導入補助金は目的別に次の3枠が用意されています。
- 通常枠(A類型・B類型)
- デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型・複数社連携IT導入類型)
- セキュリティ対策推進枠
補助対象事業者
IT導入補助金の対象となる事業者は、中小企業と小規模事業者です。
中小企業の場合、飲食店や運輸、医療、製造業、建設業などの業種が対象となりますが、業種・組織形態別に対象となる資本金・従業員数が決められています。したがって、中小企業だからといって一律にIT導入補助金の補助対象というわけではありません。
また、小規模事業者の場合、対象となる業種は商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く)とサービス業のうち宿泊業・娯楽業、製造業その他です。補助対象かどうかは従業員数の規模で決まります。
業種によって対象となる従業員数は違うため、忘れずに確認するようにしましょう。
補助対象の経費
IT導入補助金の補助対象経費は次のとおりです。
通常枠 | ソフトウェア購入費クラウド利用料導入関連費 |
デジタル化基盤導入枠 | 上記3つの経費+ハードウェア購入費 |
セキュリティ対策推進枠 | 独立行政法人情報処理推進機構が公表した「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているサービス |
デジタル化基盤導入枠におけるハードウェア購入費の対象となるのは、IT導入補助金の公式ホームページで公開しているITツールです。公式ホームページに該当しないものだと補助対象とならないため、注意しましょう。
補助金額
IT導入補助金の補助金額は次のとおりです。
【補助額の下限・上限と補助率】
通常枠 | セキュリティ対策推進枠 | デジタル化基盤導入枠 | |||
A類型 | B類型 | デジタル化基盤導入類型 | |||
補助対象経費区分 | ソフトウェア購入費・クラウド利用料(最大2年分)・導入関連費 | サービス利用料(最大2年分) | ソフトウェア購入費・クラウド利用料(最大2年分)・導入関連費 | ||
補助率 | 1/2以内 | 3/4以内 | 2/3以内 | ||
上限額・下限額 | 5万円~150万円未満 | 150万円~450万円以下 | 5万円~100万円 | (下限なし)~50万円以下 | 50万円超~350万円 |
【ハードウェア購入費用(デジタル化基盤導入類型)】
補助対象経費区分 | PC・タブレット・プリンター・スキャナー・複合機 | レジ・券売機等 |
補助率 | 補助率1/2以内 | 補助率1/2以内 |
上限額 | 10万円 | 20万円 |
小規模事業者持続化補助金
「小規模事業者持続化補助金」とは、業務効率化や販路開拓の取り組みを支援する補助金のことです。小規模事業者持続化補助金の活用にあたっては、自社経営を見直して、持続的な経営に向けた経営計画を策定する必要があります。
小規模事業者持続化補助金には次の5枠が用意されています。
- 通常枠
- 賃金引上げ枠
- 卒業枠
- 後継者支援枠
- 創業枠
補助対象事業者
補助の対象となる事業者は次の業種・従業員規模に該当する法人・個人事業・特定非営利活動法人です。
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) | 常時使用する従業員の数が5人以下 |
宿泊業・娯楽業 | 常時使用する従業員の数が20人以下 |
製造業その他 | 常時使用する従業員の数が20人以下 |
常時使用する従業員や資本金・出資金額などに細かい定義・要件があり、これらをすべて満たしていない場合は補助対象となりません。そのため、公式ホームページなどで、定義・要件をしっかりと確認することが大切です。
補助対象の経費
小規模事業者持続化補助金で補助対象となる経費は次のとおりです。
機械装置等費 | 補助事業の遂行に必要な製造装置の購入等 |
広報費 | 新サービスを紹介するチラシ作成・配布、看板の設置等 |
WEBサイト関連費 | ウェブサイトやECサイト等の構築、更新、改修、開発、運用に係る経費 |
展示会等出展費 | 展示会・商談会の出展料等 |
旅費 | 販路開拓(展示会等の会場との往復を含む)等を行うための旅費 |
開発費 | 新商品の試作品開発等に伴う経費 |
資料購入費 | 補助事業に関連する資料・図書等 |
雑役務費 | 補助事業のために臨時的に雇用したアルバイト・派遣社員費用 |
借料 | 機器・設備のリース・レンタル料(所有権移転を伴わないもの) |
設備処分費 | 新サービスを行うためのスペース確保を目的とした設備処分等 |
委託・外注費 | 店舗改装など自社では実施困難な業務を第三者に依頼(契約必須) |
上記のとおり、WEBサイト制作費も小規模事業者持続化補助金の補助対象となります。ただし、補助上限・補助率は認められる補助金総額の1/4(最大50万円)となります。
また、WEBサイト関連費のみでは申請できないため、WEBサイト制作で小規模事業者持続化補助金を活用する場合は注意が必要です。
補助金額
小規模事業者持続化補助金の補助金額は次のとおりです。
通常枠 | 賃金引上げ枠 | 卒業枠 | 後継者支援枠 | 創業枠 | |
補助率 | 2/3 | 2/3(赤字事業者は3/4) | 2/3 | ||
補助上限 | 50万円 | 200万円 | |||
インボイス特例 | 50万円 |
インボイス特例に要件を満たしている場合、補助上限額に50万円が上乗せされます。例えば、通常枠で50万円の補助を受ける場合、インボイス特例の要件を満たしていれば、50万円が上乗せされて、100万円の補助を受けられるということです。
WEBサイト制作で補助金を使用する際の5つの注意点
WEBサイト制作で補助金を使用する際の注意点として次の5つが挙げられます。
- 補助対象外となる場合がある
- リニューアルのみでは補助対象にならない
- 必ず採択されるわけではない
- 補助金は後払い・返還請求のリスクもある
- 内容を理解ししっかりと準備する
それぞれ詳しくみていきましょう。
1.補助対象外となる場合がある
WEB制作をしたからといってすべてが補助対象となるわけではありません。例えば、IT導入補助金は、顧客対応や決済といった機能を実装し業務効率化や生産性向上の仕組みに役立つ仕組みが備わっているWEBサイトが補助対象となります。
つまり、単にWEB制作をしただけでは、補助対象外となる可能性が高いということです。補助金を使用する際は、制作しようとしているWEBサイトが補助対象になるかどうかしっかりと確認しなければなりません。
2.リニューアルのみでは補助対象にならないことが多い
当記事はWEB制作で活用できる補助金を解説しましたが、これらが補助対象としているのはあくまでも「WEBの新規制作」です。そのため、WEBのリニューアルでは補助対象とならないケースが多いです。
また、同じ新規制作でも、記事コンテンツ制作費なども補助対象にはならないため、注意しましょう。
3.必ず採択されるわけではない
補助金は必ず採択されるわけではありません。当記事で解説したIT導入補助金と小規模事業者持続化補助金の採択率は60%程度、事業構築補助金の採択率は50%程度です。
このように補助金の活用は決して易しいものではありません。しっかりと準備をして申請しなければならない他、採択されなかった時のことも想定しておく必要があります。
4.補助金は後払い・返還請求のリスクもある
補助金は後払いであるため、WEBサイト制作費用は補助金が交付される前に行わなければならないため、予算をしっかりと確保しておきましょう。
また、補助金は不正支給を回避するために、交付された後も事業計画書に基づいた報告義務が課せられる他、場合によっては事務局担当が交付企業に出向いて実態を調査することもあります。
補助金の使用用途が事業計画書と違う、事業発展が見込めない、停止業者にWEBサイト制作を依頼したという場合は、補助金の返還請求もあり得ます。
5.内容をしっかり理解する
補助対象や補助対象事業者を確認しただけでは、補助金の内容を理解しているとはいえません。補助金の申請は必要な書類や手続き方法、交付までのステップが想定以上に複雑だからです。
また、公募開始から申請開始までの準備期間は1か月程度、申請の開始から締め切りまでは1ヶ月~3ヶ月程度と非常に短い期間です。そのため、内容をしっかりと確認していないと、公募に気付くのが遅れたり、書類の準備が間に合わなかったりして、申請できなかったという事態にもなりかねません。
そのため、内容を理解したうえで、申請に間に合うよう準備を進めていく必要があります。
補助金 WEBサイト制作のまとめ
IT導入補助金や小規模事業者持続化補助金など、WEBサイト制作で活用できる補助金は多いです。ただし、単にWEBサイトを制作しただけでは補助対象とならない、WEBサイト関連費のみでは補助金申請できない、リニューアルは対象外といった制約も少なくありません。
そのため、補助金がもらえるといった安易な考えでWEBサイト制作を検討してしまうと採択されないリスクが高くなります。また、仮に採択されたとしても、自社の課題解決につながらず、結果として返還請求される可能性もゼロではありません。
したがって、まずは自社課題をしっかりと洗い出したうえで、課題解決につながるWEBサイト制作を検討し補助対象となる可能性があれば、補助金の活用を検討するようにしましょう。