そもそもIT導入補助金とは?
「IT導入補助金」とは、「サービス等生産性向上IT導入支援事業費補助金」の略称で、独立行政法人中小企業基盤整備機構と産業省が監修している事業です。業務効率化や生産向上などの促進を目的に、平成28年度(2016年度)より開始されました。
IT導入補助金はルールや補助対象となるITツールの定義が、毎年変更される補助金です。そのため、申請者は毎年度、変更点を確認しなければならないため、導入方法が複雑で分かりにくいといった声も少なくありません。
IT導入補助金の対象者
IT導入補助金の対象者は次のとおりです。
- 中小企業
- 小規模事業者
中小企業の場合、飲食と宿泊、卸・小売、運輸、医療、介護、保育などのサービス業の他、製造業や建設業などが対象です。ただし、上記業種だからといって一律に対象というわけではありません。
業種・組織形態別に対象となる資本金・従業員数が決められるため、これらをしっかりと確認するようにしましょう。
小規模事業者の場合、商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く)とサービス業のうち宿泊業・娯楽業、製造業その他が対象です。小規模事業者だと従業員数で対象有無が設定されています。
IT導入補助金の種類・事業目的
IT導入補助金の種類は次の3つです。
- 通常枠(A・B類型)
- セキュリティ対策推進枠
- デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)
各種類の概要および事業目的について詳しくみていきましょう。
通常枠(A・B類型)
「通常枠(A・B類型)」は、中小企業や小規模事業者が自社の課題を解決するために導入するITツールの経費の1部を補助するものです。
自社の現状を把握・分析し、経営課題や需要に適したITツールの導入を促し、業務効率化や売上アップを図って経営力の向上・強化を図ることを目的としています。
セキュリティ対策推進枠
「セキュリティ対策推進枠」は、中小企業や小規模事業者がサイバーセキュリティ対策に関する経費の1部を補助するものです。
サイバーインシデントによる事業停止を回避し、サイバー攻撃被害による価格高騰・供給制約リスクや生産力低下のリスク低減を目的としています。
デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)
「デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)」は、中小企業屋小規模事業者の会計ソフトや受発注ソフト、決済ソフト、ECソフトの1部を補助するものです。
インボイス対応を見据えた企業間取引のデジタル化推進を目的に、補助による各種ソフトの導入を促しています。
補助対象となる経費
IT導入補助金の種類によって補助対象となる経費は異なります。そのため、IT導入補助金を活用する場合は補助対象をしっかりと確認しておかなければなりません。
ここでは次の2項目に分けて、補助対象経費・ツールについて解説します。
- 通常枠・デジタル化基盤導入類型
- セキュリティ対策推進枠
それぞれ詳しくみていきましょう。
通常枠・デジタル化基盤導入類型
通常枠・デジタル化基盤導入類型の補助対象となる経費は次のとおりです。
通常枠 | デジタル化基盤導入類型 | |
ソフトウェア購入費 | 〇 | 〇 |
クラウド利用料 | 〇 | 〇 |
導入関連費 | 〇 | 〇 |
ハードウェア購入費 | × | 〇 |
上記のとおり、両者の補助対象は概ね同じですが、デジタル化基盤導入類型の場合は、ハードウェア購入費も補助対象に含まれています。
セキュリティ対策推進枠
セキュリティ対策推進枠の補助対象となるのは、独立行政法人情報処理推進機構が公表している「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているサービスです。「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載外のものだと、補助を受けることができません。
また、掲載されているサービスであっても地域によっては補助対象とならない場合もあるため、対象サービスかどうか利用前にはしっかりと確認するようにしましょう。
IT導入補助金額・補助率
IT導入補助金額・補助率を次の3項目に分けて解説します。
- 通常枠
- セキュリティ対策推進枠
- デジタル化基盤導入枠
それぞれ詳しくみていきましょう。
通常枠
通常枠の補助額・補助率は次のとおりです。
A類型 | B類型 | |
補助対象経費区分 | ソフトウェア購入費クラウド利用料(最大2年分)導入関連費 | |
補助率 | 1/2以内 | |
上限額・下限額 | 5万円~150万円未満 | 150万円~450万円以下 |
セキュリティ対策推進枠
セキュリティ対策推進枠の補助額・補助率は次のとおりです。
補助対象経費区分 | サービス利用料(最大2年分) |
補助率 | 1/2以内 |
上限額・下限額 | 5万円~100万円 |
デジタル化基盤導入枠
デジタル化基盤導入枠の補助額・補助率は次のとおりです。
デジタル化基盤導入類型 | ||
補助対象経費区分 | ソフトウェア購入費クラウド利用料(最大2年分)導入関連費 | |
補助率 | 3/4以内 | 2/3以内 |
上限額・下限額 | 下限なし~50万円以下 | 50万円超~350万円 |
ハードウェア購入費用
デジタル化基盤導入枠のハードウェア購入費用における補助額・補助率は次のとおりです。
補助対象経費区分 | PCタブレットプリンタースキャナ複合機 | レジ・券売機など |
補助率 | 1/2以内 | |
補助上限額 | 10万円 | 20万円 |
ホームページ制作でIT導入補助金対象となるのか?
ホームページ制作はIT導入補助金対象です。ただし、ホームページを補助対象とするためには、業務効率化や生産性向上に役立つ仕組みがなければなりません。
例えば、自動チャット対応機能や決済システム、顧客管理システムといったITツールを導入・実装させたホームページ、ECサイトであれば、補助の対象となります。一方、企業紹介やブログなど、運営側がただ情報発信をしているホームページの場合は、補助の対象となりません。
つまり、単にホームページを制作しただけでは、補助金の対象とはならないということです。
対象となるホームページ
補助対象となるホームページを次の2項目に分けて解説します。
- 通常枠
- デジタル化基盤導入枠
それぞれ詳しくみていきましょう。
通常枠
通常枠の場合、ホームページ上に決済システムや顧客対応ツールが導入されているホームページであれば、補助対象となります。
物件情報サイトで物件の問い合わせ・商談から受注までできるページを制作する場合や、オンライン上でサービス契約とクレジットカード決済を行えるページを制作するような場合には通常枠での申請がおすすめです。
デジタル化基盤導入枠
デジタル化基盤導入枠の場合、会計・受発注・決済・ECのいずれかが含まれるホームページであれば、補助対象となります。デジタル化基盤導入枠であれば、通常枠では補助対象とならなかったECサイトも対象です。
補助金を活用してECサイトの制作を検討している方は、デジタル化基盤導入枠で補助申請するとよいでしょう。
ホームページ制作でIT導入補助金を活用する際の2つの注意点
ホームページ制作でIT導入補助金を活用する際の注意点として次の2つが挙げられます。
- 自社で申請できない
- ホームページの制作・リニューアルのみでは補助対象とならない
それぞれ詳しくみていきましょう。
1.自社で申請できない
IT導入支援事業者とは、事務局や外部調査委員会の審査を受けて登録されている事業者のことです。IT導入補助金の申請をはじめ、ITツールの導入・提案や事業計画の策定といった各種手続きのサポートを行ってくれます。
IT導入補助金を申請できるのは、IT導入支援事業者のみです。見出しのとおり、企業自らIT導入補助金を申請することはできません。
2.ホームページの制作・リニューアルのみでは補助対象とならない
前述のとおり、単にホームページを制作しただけでは、補助対象として認められません。補助対象とするためには、顧客対応や決済機能を実装して、業務効率化や売上アップに役立つ仕組みがあるホームページを制作する必要があります。
また、上記と同様に、単にホームページのリニューアルをしただけでは、補助対象として認められません。しかし、既存のホームページにオンラインショップや顧客対応、決済といった機能を追加してリニューアルすれば、機能追加分の費用は補助対象となります。
例えば、既存ホームページのデザインを刷新して、EC機能を追加したとしましょう。この場合、リニューアル費用のうちデザイン費などには補助が適用されず、EC機能の導入費のみに補助が適用されるということです。
ただし、既存ECサイトをリニューアルする場合は、顧客対応や決済といった機能を追加しても、IT導入補助金の補助対象とはなりません。
IT導入補助金を申請する際の5つのポイント
IT導入補助金を申請する際のポイントとして次の5つが挙げられます
- 補助金についてしっかりと理解する
- しっかりと事前準備を行う
- 補助金対象のツールを導入する
- 交付決定の通知が届いてから補助事業を実施する
- 確実に採択されるわけではない
それぞれ詳しくみていきましょう。
1.補助金についてしっかりと理解する
IT導入補助金を利用するのであれば、目的や補助対象となる事業者・ツールなど、補助金内容をしっかりと理解しておきましょう。また、IT導入補助金は募集期間や申請時に必要な書類が定められている他、ルールや補助対象となるITツールの定義が毎年変更されます。
そのため、募集期間が過ぎていた、書類の準備不足や昨年度との変更点を正しく認識していなかったという理由で申請が却下されてしまうリスクも少なくありません。このような事態を避けるためには、常に情報収集していくことも重要です。
2.しっかりと準備する
補助を受けられるなら、ITツールを導入しようという考えでは採択は難しく、仮に採択されたとしても自社の課題解決にはつながりません。自社の課題を明確にし、その課題を解決するITツールが補助対象であれば、IT導入補助金を利用するという意識を持つことが大切です。
また、IT導入支援事業者もしっかりと選定しなければなりません。近年、IT導入支援事業者を名乗る悪質な事業者も増えています。
そのため、依頼予定の事業者が支援事業者登録されているかどうか、公式サイトで確認するようにしましょう。
3.補助金対象のツールを導入する
IT導入補助金と聞くとすべてのITツールで補助を受けられると勘違いしがちですが、補助金の対象となるツールは限られています。
そのため、補助金の対象外のツールを導入しないよう注意しなければなりません。
4.交付決定の通知が届いてから補助事業を実施する
IT導入補助金の交付決定通知が届いてから、補助事業を実施しましょう。交付が決定する前に発生したITツールの経費は補助対象となりません。
したがって、補助を受けるためには必ず交付決定通知が届いてから、ITツールを契約・導入するようにしましょう。
5.確実に採択されるわけではない
2021年度のIT導入補助金の採択率は全体の60%程度でした。
申請をすれば確実に採択されるわけではないため、採択されなかったケースも想定しておきましょう。
ホームページ制作に利用できるその他の補助金
ホームページ制作に利用できるその他の補助金として次の3つが挙げられます。
- ものづくり補助金
- 小規模事業者持続化補助金
- 事業再構築補助金
それぞれ詳しくみていきましょう。
ものづくり補助金
「ものづくり補助金」は全国の小規模事業者・個人事業主を対象としている補助金です。
働き方改革などに対応するためのサービス開発や設備投資などの経費に対して補助が受けられます。
小規模事業者持続化補助金
「小規模事業者持続化補助金」は全国の小規模事業者を対象としている補助金です。
業務効率化や販路開拓を行い、事業の継続・発展させるための取り組みに対して補助が受けられます。
事業再構築補助金
「事業再構築補助金」はポストコロナ時代の社会変化に対応するために、中小企業などの事業再構築をサポートする補助金です。
新分野・業種の転換や事業再編など思い切った事業再構築を目指す中小企業のサポートを目的としています。
IT補助金ホームページ制作のまとめ
ホームページ制作でもIT導入補助金を活用できます。ただし、IT導入補助金は業務効率や生産性向上などの促進を目的とした補助金です。
そのため、業務効率化や生産性向上に役立つ仕組みが備わっているホームページが補助対象であり、単にホームページを制作しただけでは補助対象とはなりません。また、通常枠とデジタル化基盤導入枠で多少補助対象となるホームページが異なる他、ECサイトをリニューアルする際は補助対象外となります。
対象外で補助が受けられないという事態を避けるためには、制作予定のホームページが補助金対象かどうかしっかりと確認しておくことが大切です。